• CATBIRD日記 (物理・数学・歴史・哲学・宗教の未解決問題を扱ってます)
  • 何故、回転する独楽(こま)は倒れないのか

    独楽は倒れない

     コマは何故倒れないのか、子供の頃悩んだことを思い出した。
     小さい頃、独楽で遊んだ記憶がある。紐を独楽に巻き付け、投げて独楽を回すものであったが、なかなか上手く出来ずに、指先で軸を回して独楽を回して遊んでいた。
     独楽は回転している時は倒れない。回転が止まると倒れる。その頃、何故独楽は倒れないのか不思議に思ったが、結局分からなかった。 幾ら回転していても、傾くとそのまま倒れてしまうとしか思えなかった。

    遠心力による回転軸の固定

    遠心力による軸の固定

     今、黒のコマが円周aを回転している。このコマを、一瞬赤のコマの位置に傾けて見る。コマの円周の一部αは円周bの位置に来る。α部分は、慣性により今まで回っていた円周aと水平である円周bを回ろうとする。βの部分も円周cの位置に来て、円周aと水平である円周cを回ろうとする。コマの回転が遅い場合、軸は激しくくるくると回転する。これを歳差運動と言う。一方、コマの回転が速い場合、αとβは円周を回るので、双方に外側に向かって遠心力が掛かる。すると、αもβもより大きい円周を回ろうとする。円周a>円周b=円周cである。αとβが回れる最も大きい円周はaである。従って、コマは元の円周aの位置に戻る。

     つまり、指先でちょっと回転軸を黒から赤に傾けて見ても、直に回転軸は元の黒の位置に戻って来る。この様に、回転するコマには、遠心力により元の回転軸を保とうとする力が働く。

     黒の回転軸から赤の回転軸に完全に移動させる為には、赤の回転をする様になるまで、しばらくの間、赤の位置にコマを固定しておかなければならない。そうすると、αとβとは次第に、進行方向が変わって行き、最後には斜めになった赤のコマの通りに回る様になる。

    コマの軸の回転  この様に、回転するコマの軸を一瞬倒しても、すくに元に戻る。しかし、長時間一定方向へ力を掛け続ければ、次第にその方向に傾いて行く。コマは斜めに傾くと、重力がコマを倒す方向に掛かり続ける為、次第に傾いて行き、最後は倒れてしまう。遠心力のみでは、元の位置に戻るに止まる。このままでは、重力によりコマの傾きは次第に大きくなってしまう。

     しかし、コマは回転軸が一旦傾いても、そのまま次第に傾きが大きくなり倒れてしまうことはない。傾いたコマの回転軸は、コマの回転方向へ円を描くように少しずつゆっくりと移動し首を振る。その為に、コマは倒れない。これはどうしてであろうか。

    遊園地の遊具に例える

    遊園地の遊具

     その原因は、実際に傾いた独楽の上に乗ってみれば直ぐに分かる。上はそれを図で表わしたものであるが、これは遊園地にありそうな乗り物である。

     黄緑の私は、回転しながら上から下にaの様に降りている。この時、体がふわっと浮き上がった様に感じる。シートに掛かる体重は軽くなる。逆に、青の私は、回転しながら下から上にa’の様に上がって行く。この時、体にはGが掛り、体はシートに押し付けられ重くなった様に感じられる。

     つまり、独楽のP側の半円は軽くなり、Q側の半円は重くなる。すると、今度はQ側が下がり始め、軸は次第にQ側に傾いて行く。軸は、遠心力により容易には傾かないので、少しずつ傾いて行く。独楽がQ側に傾くと、次はR側が重くなり次第にR側に傾く。すると、次はP側が重くなり次第にP側に傾く。次はS側が重くなり次第にS側に傾く。
     この様に、傾いて回転する独楽は、回転軸が少しずつ円を描くように首を振って回る。コマの回転が十分であれば、独楽はそのまま倒れてしまうことがない。

    簡単なイメージ方法

    簡単なイメージ方法

     回転する独楽を簡単にイメージするには、独楽の円盤の周辺を錘が回っていると考えると良い。

     独楽は回転しておらず、錘aが独楽の円周上を回っている。これで、独楽が傾いて回転する時の重さの移動が再現出来る。

     独楽がS側に傾いて回転すると、錘aはQの位置にあり、独楽をQ側に少しずつ傾け続ける。遠心力によりコマの軸は容易には傾かないので、ゆっくりと軸はQ側に傾いて行く。Q側に傾くとaはRの位置にあり、独楽をR側に傾け続ける。R側に傾くとaはPにあり独楽をP側に傾け続ける。P側に傾くと、aはSにあり独楽をS側に傾け続ける。錘aは、常にコマが傾いた方向とは90度前方の位置にある。

    独楽の回転速度と首振運動

    回転速度と首振運動

     独楽の回転が遅くなると、遠心力が小さくなり、元の回転軸に戻す力が弱くなる。従って、左図の様に、コマは、それぞれの構成部分が元の回転と平行となる歳差運動をするようになる。この時、コマは不安定にくるくると速く首を振りながら回転する。この首振りは、コマの回転スピードが速い時の、安定したゆっくりとした小さな首振りとは明らかに異なる。低速回転時の首振り速度は、コマの回転速度と同一である。これに比べて、高速回転時の首振り速度は、コマの回転速度より遥かにゆっくりとしたものである。

     高速回転時は、コマがS側に倒れていても、その傾きは次第にQ側を経由してR側に移る。今度はR側に倒れているコマを、P側を経由してS側に傾ける。この様に、傾いたコマの回転軸はゆっくりと首振り運動をするので、一時傾いた方向に、重力により傾きが次第に大きくなり、倒れてしまうことはない。

     
     この様に、回転する独楽が倒れない原因は、独楽の重心が傾いた方向より、常に90度前方にあることにある。これをCATBIRDの首振理論と呼ぶ(2013/4/30AM11:59)。

    軸と床の摩擦によりコマは直立する

    軸の摩擦

     以上の仕組みにより、コマはゆっくりと首振り運動を行う。この仕組みに加えて、独楽の軸がaの様に床と摩擦して遠心力により起上がる力が働く。例えば、鉛筆の尖った方を摘んで指パッチンをする感じで鉛筆を床に放ると、上手にすれば下の図の様に、鉛筆の底の円周と床が摩擦して、鉛筆が起上がってくるくる回る現象が見られる。



    鉛筆の直立  もう少し詳しく考察する。鉛筆が床の上で直立して回転する時、鉛筆の底の丸いふちの部分と床とが触れ合う。鉛筆は傾いているので、鉛筆は床の上を円Oを描いて回転する。すると、円の外側に向かって遠心力が働く。この遠心力は鉛筆を立ち上がらせる様に働く。この倒れようとする力と遠心力とが釣り合って、鉛筆は倒れずに床の上をくるくる回る。

    コマの回転  回転が速い程、遠心力が強くなりコマは直立する。この様に、コマには傾いても直立する仕組みがある。

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