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笑いとは何か

 笑う動物は、人間とゴリラの子供のみです。ゴリラも大人になると笑わなくなります。何故、人は笑うのでしょうか。
 友人から悩みを相談されたとします。これに対して、その人に同情し何とかしてやろうと言う気持ちが自然に沸き起こります。しかし、それは解決する必要のない悩みであったとします。もう、同情する必要も、何とかしてやろうとする気持ちも必要ありません。その気持ちは、友人の悩みを解決する行動を導くものですが、行動する必要がないからです。
 しかし、一旦沸き起こった気持ちを、消し去らなければなりません。どうしたら、その気持ちを、瞬時に消し去ることが出来るでしょうか。
 例えば、次の様な場面です。

 友人「僕には、暗い過去があるんだ。」
 私「そうか。・・・(真剣になる)」
 友人「実は、僕のおじいさんは、昔相撲取りだったんだ!」
 私「・・・(笑う)」

 また、友人が、してはならない振る舞いをしたとします。これに対して報復をしておかないと、その行為は何度も繰り返されます。従って、怒りの感情が起こります。
 しかし、その友人は悪意のない勘違いにより、その行為をしてしまったとします。それが分かったのなら、もう報復する必要はありません。例えば、この様な場面です。

   郵便貯金ホールでコンサートがあり、皆で待ち合わせをしていたが、友人の1人が来なかった。翌日
 私「何故、昨日来なかったの。せっかく皆で待ち合わせていたのに。」
 友人「そこの郵便局の前で待っていたのに、コンサートなんてなかったよ。」
 私「・・・(笑う)」

 今度は、尊敬の感情の沸き起こった場合を例にしてみます。
 ボクサーと女性アナウンサーが、一緒にジョギングをしながら、インタビューをしている。
 女性アナウンサー「○○さん、初恋は何時ですか。」
 ボクサー「・・・・・(黙ったまま走りながら考え続ける。)」
 女性アナウンサー「・・・(初恋は何時だったか、真剣に考えているんだ。適当に答えても良いのに、見掛けによらず真面目な人なんだ。)」
 ボクサー(急に甲高い声を出して)「初恋って好きな人のこと?」
 女性アナウンサー「・・・そうですよ。(早く言えよ・・・)。」
 ボクサー「好きな人っていっぱいいるからなー。昔もあるし、最近もあるし・・・。」
 女性アナウンサー (聞いてはいけないことを聞いてしまった!すぐに話題を変える。)
 この場合、初恋について真剣に考えていると勘違いし、尊敬の念が沸いたが、それは勘違いであり解消する必要があるので、その感情を笑いに変えて消し去っているのです。

 最初の例は、哀の感情、二番目の例は、怒の感情です。他にも勘違いによるぬか喜びであった場合、喜の感情を消し去る為に、それを笑いのエネルギーに変えてしまいます。
 友人「昨日のテストで、○が一つしかなかったよ。」
 私「でも、一つでもあって良かったじゃないか。苦手にしていた科目だろ。」
 友人「点数のところに○が一つあったんだ。」
 私「・・・(笑う)」

 人間の社会は複雑で、場面に適した感情が起こるとは限りません。必要のない喜怒哀楽や真善美の感情が沸き起こった時、それを瞬時に消し去る為に、笑いのスイッチが入るのです。 時間を掛けて理論的にその気持ちを解消すると、その間に不合理な行動に出る可能性が残るからです。動物の間では、関係は単純で、その様な必要がないのです。