• CATBIRD日記 (物理・数学・歴史・哲学・宗教の未解決問題を扱ってます)
  • タイムマシンは作れるか

    原子時計の遅れ

     ここにクォーツ時計(水晶振動子時計)があります。水晶を構成する原子がn回振動すると、この時計は1秒進みます。この時計がv[m/s]で移動しする様になったとします。何ものも光速以上で移動することは出来ません。従って、v[m/s]で移動する物質は、静止時に比べて√(1-v2/c2)倍しか動けなくなります。加速度は質量に反比例するので、この現象を「v[m/s]で移動する物質は、質量が1/√(1-v2/c2)倍に増えた様に振舞う」と表現します。

     この時計の原子は√(1-v2/c2)倍しか動けないので、1秒間に振動する回数はn*√(1-v2/c2)回となります。この時計は、原子がn回振動すると1秒進むので、n÷n*√(1-v2/c2)=1/√(1-v2/c2)秒に1秒進む様になります。

     現実に、GPS衛星に搭載されている時計は、地上では√(1-v2/c2)秒に1秒進む様に設定されています。衛星が軌道に乗りv[m/s]で移動する様になると、√(1-v2/c2) /(1-v2/c2)=1秒となり、この時計は1秒間に1秒進む様になります。

     高速で移動する時計の遅れは、t'=t/√(1-v2/c2)と表されます。原子に強い重力が掛かった場合も、その原子は重くなり動き難くなり同じ現象が起ります。

     ※v[m/s]で移動する粒子の質量が実際に1/√(1-v2/c2)倍に増加するのではありません。静止時に比べて√(1-v2/c2)倍しか動けないのでその様に表現するのです。実際に質量が増加する訳ではないので、原子の振動の周期は1/√(1-v2/c2)倍となります。

    主観的な時間の遅れ

     しかし、実際に時の経過がゆっくりとなった訳ではありません。振動と言う物質変化のスピードが遅くなっただけです。この時間の変化は主観的なものです。次の様に考えるとそのことは分ります。

     高速で移動すると、私の肉体や持っているあらゆる時計は、ゆっくりと変化するようになります。私は、ゆっくりと思考し動き年を取る様になります。時計もゆっくりと時を刻みます。私が1秒と考える時間は、例えば実際には2秒となります。私が、静止している人や時計を見ると、そこでは時間は2倍の速さで経過している様に見えます。しかし、実際に時間の経過が変化した訳ではなく、物質の反応速度の方が変化したのです。この様に考えると、物質にはその移動速度に応じた時間の経過のあることが良く分かります。

     この上更に、時間の経過自体が1/√(1-v2/c2)倍に遅れると、時計の遅れはt'= t/(1-v2/c2)となってしまい、現実とは乖離します。

    過去には戻れない

     時間は変化しないのでタイムマシンを作ることは出来ません。しかし、私が高速移動したり、私に強い重力が掛かると、肉体の反応が極めてゆっくりとなるので、未来に行くことは出来ます。しかし、過去に戻ることは不可能です。