TopPage思考の迷宮 (物理・数学・生物・歴史・哲学・宗教の未解決問題を扱います。貴方もアイデアをリリースして見ましょう。いざ思考の迷宮へ)

「光の絶対速度不変の原理」ではない

T.質問者さんの考える「相対性理論」の説明

 質問者さんの文章を、私が以下とおり翻訳しました。

 (質問者さんのご主張)
 『相対性理論は、「光速度不変の原理」に基づいている。
 まず、電車の中に「光時計」を置いて思考実験をする。速度vで移動する列車の中と外共に「光速度不変」と観測される。この為には、列車内の時間と距離は収縮しなければならない。この実験を説明する。

光時計の思考実験  列車の天上と床に鏡を付け、その間(c[m]とする)に光を往復させる。@静止時、光はI字形に2秒で往復する。Avで移動する時、光はW字形に往復する為光の移動距離が伸びる。この時、「三平方の定理」を使うと2/√(1-v2/c2)秒で往復することが分かる。

 【解説】列車がv[m/秒]で水平に動き、光はc[m/秒]でW字形に上下する。そのため、列車の乗客Bに、光は√(c2-v2)[m/秒]でI字形に上下して見える。上下の鏡の間はc[m]なので、
乗客Bが見た光の往復時間=2c[m]÷√(c2-v2)[m/秒]=2/√(1-v2/c2)秒
である。

 この光時計は、光が1往復する度に2秒を刻む。@静止時、光は2秒で1往復するので、光時計は2秒間に2秒を刻む。Avで移動すると、光は2/√(1-v2/c2)秒で1往復するので、光時計は2秒間に2√(1-v2/c2)秒を刻む。したがって、時間の変換式は
Bt'=t√(1-v2/c2)
となる。
 これが「時間のローレンツ収縮」である。列車外の静止者Aには、自分の持っている光時計がI字形上下して2秒を刻む間に、車内の乗客Bが持っている光時計はW字形上下して2√(1-v2/c2)秒刻むと見える。

 次に、「距離のローレンツ収縮」が起こる。列車外の静止者Aから見ると、列車内の距離は進行方向へ√(1-v2/c2)倍収縮して見える。
距離D'=V×t'=D√(1-v2/c2)
である。列車の中の時間はゆっくり進んで見えるので、速度vが一定なら距離は短縮しなければならない。故に、距離の変換式は
Hx'=x√(1-v2/c2)
である。

 まとめると、変換式は
Bt'=t√(1-v2/c2)「時間のローレンツ短縮」
Hx'=x√(1-v2/c2)「距離のローレンツ短縮」
Ey'=y
Fz'=z
となる。これを「質問者さん変換」と呼ぶ。

質問者さんの光速度不変の原理  ここで、列車の最後尾から先頭に光◎を発射する。静止者Aと乗客Bが1秒間でc[m]進んだ光◎を見る。
 静止者Aに光◎は、1秒間にc[m]進むと見える。
 一方乗客Bには、光の進んだ距離が「ローレンツ収縮」するので
乗客Bが見た光の進んだ距離=c[m]×√(1-v2/c2)倍=c√(1-v2/c2)[m]
となる。
 乗客Bの光時計は1秒間に√(1-v2/c2)秒を刻む。したがって
乗客Bが観測した光速度=c√(1-v2/c2)[m]÷√(1-v2/c2)秒=c[m/s](光速度不変の原理)
となる。』

 私の翻訳は以上です。

U.質問者さんのは「光の絶対速度不変の原理」である

乗客Bには(c-v)[[m/s]]  質問者さんは、「光の絶対速度」が不変であると勘違いされています。しかし、「光速度不変の原理」とは「光の相対速度」が不変であると言う意味です。

 質問者さんは上記のとおり、列車の乗客Bに光は末尾Rから現在の位置Qに進んだと見えるとされています。しかし、これは「光の絶対速度」です。

 一方「光の相対速度」とは、Bから光が離れて行く速度です。つまり、(乗客Bが列車末尾に居るとすると)乗客Bには、現在Bの居るPから現在の光の到達点Qに進んだ光◎の速度が、光速cと観測されるのです。

 また、相対性理論は絶対座標を否定するので、ものの絶対速度は分からないとします。
 Rが光◎の出発点であることがどうして分かるでしょうか。空間そのものに出発点と言う印を付けることは出来ません。また、ここが光の出発点だと指さしていても、指が動いているかも知れません。ですから、過去の光の出発点は誰にも分かりません。それに比べて、乗客Bの今の位置Pと光◎の到達点Qは、現在のものなので分かります。

 この様に、質問者さんの「光の絶対速度不変の原理」は絶対座標を前提としたもので、「絶対座標はない」とする相対性理論を完全否定しています。

 更に「質問者さん変換」では「光の相対速度」は変化してしまいます。それを計算して見ます。

 乗客Bに光は、現在の列車の末尾PからQに1秒間に(c-v)[m]進んだと見える筈です。しかし、列車内では距離が短くなり光時計が遅れるので、距離と時間が「質問者さん変換」する。したがって
H乗客Bが見た光の進んだ距離x'=x√(1-v2/c2)=(c-v)[m]×√(1-v2/c2)倍=(c-v)√(1-v2/c2)[[m]]
B乗客Bが見た光の進んだ時間t'=t√(1-v2/c2)=1[秒]×√(1-v2/c2)倍=√(1-v2/c2)秒
となります。

 したがって
列車の乗客Bが見た光の速度=(c-v)√(1-v2/c2)[m]÷√(1-v2/c2)秒=(c-v)[m/s]
です。これでは、見る人によって光速度が変化します。この様に「質問者さん変換」では「光の相対速度不変」となりません。ですから、「質問者さん変換」はりです。

V.正しい変換式「ローレンツ変換」

 一方、ローレンツ変換は
Ct'=(t-vx/c2)/√(1-v2/c2)
Dx'=(x-vt)/√(1-v2/c2)
Ey'=y
Fz'=z
Gc'=c
です。v=列車の速度、x=速度を測る対象(ここでは光)の進んだ距離(1次元なのでここではct[m])、c=光速度です。vで移動する物質は進行方向へ√(1-v2/c2)倍収縮します。これを物質の「ローレンツ収縮」と言います。決して、空間そのものが収縮するのではありません。

 列車内の乗客Bが持っている定規が「ローレンツ収縮」するので、距離は逆に1/√(1-v2/c2)倍長く測定されます。その間、乗客Bはvt[m]移動しています。ですから、Bにとって進行方向の距離の変化は
Dx'=(x-vt)/√(1-v2/c2)
となります。上下左右方向に変化はありません。したがって
Ey'=y
Fz'=z
です。

光の座標  光の座標を便宜上平面で、P(x,y,z)=(ct*cosθ,ct*sinθ,0)とします。光は、原点Oを発してt秒後にPの位置に到達します。光が移動した時間はt秒です。光の移動した距離は、√(x2,y2,z2)=√{(ct*cosθ)2+(ct*sinθ)2+02}=ct[m]です。従って、静止者Aが見た光の速度は、ct[m]÷t[秒]=c[m/s]です。

 乗客Bには3次元がDEFのとおり「ローレンツ変換」します。その為
v慣性系で光の進んだ距離√(x'2+y'2+z'2)=√{((t-vx/c2) / √(1-v2/c2))2+( ct*sinθ)2+02}=(c-vcosθ)t/√(1-v2/c2)[m]
となります。
 そして、時間の変換式は
t'=(c-vcosθ)t/c√(1-v2/c2)
でなければなりません。これで
v慣性系における光の速度=(c-vcosθ)t/√(1-v2/c2)[m]÷(c-vcosθ)t/c√(1-v2/c2)=c[m/s]
と「光速度不変」になります。

 光のX軸の座標x=ct*cosθなので、cosθ=x/ctです。これを代入すると
Ct'=(c-vcosθ)t/c√(1-v2/c2)= (c-vx/ct)t/c√(1-v2/c2)=(t-vx/c2) / √(1-v2/c2
です。CDEFをまとめると「ローレンツ変換」になります。

W.「ローレンツ変換」で乗客Bにも光速度不変となる

乗客Bには(c-v)[[m/s]]  「ローレンツ変換」すると
乗客Bが測る光◎の進んだ距離x'=(x-vt)/√(1-v2/c2)=(ct-vt)/√(1-v2/c2)=(c-v)t/√(1-v2/c2)[m]
です。
乗客Bの計る光◎の進んだ時間t'=(t-vx/c2)/√(1-v2/c2)=(t-vct/c2)/√(1-v2/c2)=(1-v/c)t/√(1-v2/c2)=(c-v)t/c√(1-v2/c2)[秒]
です。故に
乗客Bが測る光速度c'=(c-v)t/√(1-v2/c2)[m]÷(c-v)t/c√(1-v2/c2)[秒]=c[m/s]
となります。
 これで、誰が同じ光の速度を測定しても、「光速度不変」となります。

X.「光の相対速度」が不変でなければならない理由

 「光速度不変の原理」は、移動する系でも磁石の力が変わらないことを説明する為に提唱されました。
 電磁気力は、電荷を帯びた粒子間をケージ粒子である電磁波(光)が往復することで生じます。生じる電磁気力は、距離の2乗に反比例します。つまり、電磁波が往復するのに要する時間の2乗に反比例します。

 2つの粒子がv[m/s]で並走しながら電磁波を交換すると、電磁波の移動距離は縦1/√(1-v2/c2)倍、横1/(1-v2/c2)倍に伸びます。つまり、電磁波が往復する時間も同様に伸びます。ですから、移動する系では、生じる電磁気力の力が弱まりそうです。
 しかし、マックスウェルの方程式では、移動速度に関係なく生じる電磁気力の強さは一定であり、現実もそうです。地球は自転公転し太陽は銀河系を公転し銀河系同士遠ざかっています。この様に地球は、複雑な加速減速を繰り返していますが、その度に地上の磁石の強さが変わることはありません。

 ですから、移動する系でも電磁波往復に要する時間が不変でなくてはなりません。つまり、移動する粒子から見て電磁波の相対速度(自分から光が離れて行く、又は自分に光が近づく速度)が常に光速cである必要があるのです。
 時間と空間がローレンツ変換されると、移動するものから見た光の相対速度は不変になります。これで、移動する系でも、同じ時間で電磁波が往復するので、生じる電磁気力の強さが変わらないことを上手に説明出来ます。

 一方、「質問者さん変換」は、移動する系で電磁波の往復時間が変化するので、生じる電磁気力の強さが変化してしまいます。故に、「質問者さん変換」はりです。

Y. 質問

 では、質問者さんにお尋ねします。
 どの様にして、空間に光◎の出発点Rの印を付けるのですか。そのRは絶対に静止しているのですか。そのRを原点Oにすると、「絶対座標」を描くことが出来るのですか。ならば、貴方は「相対性理論」を否定されるのですか。是非、ご教示下さい。



 【私の解説】
 静止時「I字形」に上下していた光は、列車がv[m/秒]で移動すると「W字形」に上下するため光の進む距離が長くなり、光時計の光が上下する間隔が伸びたのです。決して、高速移動により列車の中の時間の経過が遅れたから、光時計の光が上下する間隔が伸びたのではありません

 それなのに、質問者さんは『列車の中の光時計が遅れたので、v[m/秒]で移動する列車内の時間の経過は遅れていると判断される』と主張されています。
 これは、ぜんまいが緩んで遅れた時計を見て、「この時計に流れる時間は遅れている」と考えるのと一緒です。時計が遅れる仕組みをよくよく考えなくてはなりません

 確かに、高速で移動する時計は遅れます。それは、v[m/s]で移動する物質は、静止時に比べて√(1-v2/c2)倍しか動かすことが出来ないからです。これは加速器の実験で実証済みです。
 これを相対性理論ではm=m0/√(1-v2/c2)と表します。物質に同じ力を加えても、質量が2倍になると速度は1/2倍になります。高速で移動する物質は動き難くなるので、「まるで質量が増えた様に振る舞う」と言います。
 ですから、v[m/s]で移動する時計は1秒間に√(1-v2/c2)秒を刻みます。これを相対論では「t'=t√(1-v2/c2)」と表します。

 こうして、光時計と物質時計は共に1秒間に√(1-v2/c2)秒刻む様になります。また、列車の乗客自身の肉体を構成する粒子も動き難くなるので、その動き・思考・年を取るスピードも√(1-v2/c2)倍となります。
 この様に、乗客自身と彼の持っているあらゆる時計も動きが√(1-v2/c2)倍になるので、乗客自身は自分や持っている時計が遅れたとは考えません。逆に、静止している者や静止している時計に流れる時間が速く流れていると考えます。でも、実際は乗客の動きが遅くなっただけです。

 また、「ローレンツ収縮」とは、v[m/s]で移動する物質が進行方向に√(1-v2/c2)倍収縮することです。空間自体が収縮するのではありません。定規が√(1-v2/c2)倍収縮するので、上記のとおり距離は逆に1/√(1-v2/c2)倍長く測定されます。
 原子が高速移動すると、電子は動き難くなり回転速度が落ち遠心力が弱まるので原子核の電磁気力に引かれてより小さい軌道を回る様になります。この仕組みにより、高速移動する物質は収縮します

 更に、元々光の絶対速度はc[m/s]としながら、『v[m/s]で移動すると時間と距離が√(1-v2/c2)倍ローレンツ短縮するので、光の絶対速度はc[m/s]×√(1-v2/c2)÷√(1-v2/c2)=c[m/s]となり光速度は不変である』とするのはナンセンスです。
 「時間と空間の座標の変化」は、光速度不変を導くためのものです。光速度とは観測者から見た光の相対速度のことで、観測者がv[m/s]で移動していると仮定すると、光の相対速度は(c-v)[m/s]又は(c+v)[m/s]と観測される筈です。しかし、上記のとおりローレンツ変換により観測者にこの光がc[m/s]と観測され「光速度不変」となるのです。

 質問者さんは、時間と距離が変化する仕組みは一切分からないとされています。分からないことを信じておられるのですね。しかし、それは科学ではありません。