ローレンツ変換の簡単な導き方

ローレンツ変換は、物質を動かす力の伝播速度の変化とローレンツ収縮より求められる

 私が高速で移動すると、一体何が起こるだろうか。常識からすれば、他のものの移動速度が変化するだけと思える。 時間も空間も特に変わるとは思えない。私にとって、時間も空間も絶対的な存在である。 それに比べて、他のものの移動速度は相対的な存在である。 しかしこれは、低速で移動した時の体験からそう思うのである。

 光速である299,792.5[m/s](以後c[m/s]と表わす)が、あらゆるものの速度の限界と考えられている。 それに近づくと、時間の経過は遅れ、空間は進行方向に伸びる。その時、光の速度を測定しても、その速度は変わらないと考えられている。  光と対面する形で、高速で移動しながらその速度を測っても、光と並走する形でその速度を測っても、光は常にc[m/s]としか測れない。 光速度は、移動速度に関係なく絶対的な存在である。これに対して、時間と空間は、移動速度に応じて変化する相対的な存在である。

 しかしこれは、常識に反するため大変理解しがたい。本ページでは、時間と空間が変化する仕組みを詳説すると共に、 現実には光速度は不変ではないことを証明する。そして同時に、光速度を不変と仮定して物理の計算をしなければならない理由を解説する。

 まず最初に、ローレンツ変換について触れておく。ローレンツ変換は、光速度不変を前提とし、 速度v[m/s]で移動する慣性系における時間と空間は、次の通り変化すると考える。 tは時間、xは進行方向、yとzは進行方向に向かって上下左右の方向、cは光速である。
@t'= (t-(vx/c2)) / √(1-v2/c2  (変換後の時間の経過=変換後の距離÷光速c[m/s])
Ax'=(x-vt)/√(1-v2/c2)        (慣性系がvt移動した分変化する。また、1/√(1-v2/c2)【=ローレンツ因子】伸びる)
By'= y                      (変化なし)
Cz'= z                      (変化なし)
Dc'=c                      (光速度不変の原理)

高速移動に伴い因果関係の伝播速度は、√(c2+v2-2cvcosθ)[m/s] と変化する。

 次に、ローレンツ変換の導き方を解説する。物質は、電磁力・重力・強い力・弱い力の4つの力により動く。ローレンツは、光と重力及び電磁力は速度c[m/s]で エーテルの中を伝わり、物質はエーテルの中を速度v[m/s]で動くと考えた。当時、強い力と弱い力は、また発見されてはいなかった。 また、重力と電磁力は直線的に光速で伝わると考えられていた。 従って、物質の変化のスピードは、物質を動かす力が隣の物質へ到達する時間に比例すると考えた。
 (現在では、ゲージ粒子が光速で物質間を往復することにより、4つの力は生じるとされている。 従って、物質の変化のスピードは、ケージ粒子の往復に要する時間に比例する。)

 物質を動かす力と光とが同じ速度で伝わる限り、観測される光の速度は不変である。 私が光と並走する時、光の速度がc/2となっても、その方向へ物質を動かす力が伝わる速度もc/2となる。 その結果、私の体を構成する物質の動きは1/2と遅くなる。私の持っているあらゆる時計も、その動きは1/2と遅くなる。 すると、私はゆっくりと動き考え年を取る様になる。私の持っている時計もゆっくりと時を刻む。 私にとって時間の経過は、2倍とゆっくりしたものとなる。私が1秒と考える時間の間隔は、実際の2秒となる。 その時、私の観測する光の速度は、c/2[m/s]×2秒=c[m/s]となる。

 ローレンツは、この宇宙には、光速より速く伝わる因果関係は無いと仮定した。静止系では、 物質を動かす力の伝播速度=c[m/s]である。 では移動系では、その速度はどう変化するであろうか

物質を動かす力の伝播速度  ある物質Oから発せられた物質を動かす力が、c[m]離れた隣の物質Pに到達するのに要する時間は、静止時では、c[m]÷c[m/s]=1秒である。
 速度v[m/s]で移動する慣性系では、第二余弦定理により
物質を動かす力の伝播速度 =G√(c2+v2-2cvcosθ)[m/s]
となる。
※第二余弦定理 PQ2=OP2+OQ2-2OP*OQcosθ

 物質Oが発した物質を動かす力が、c[m]離れた物質Pに届くのに要する時間は、
c/√(c2+v2-2cvcosθ)秒である。 v慣性系では、物質が同じ動きをするのに、静止時の1/√(c2+v2-2cvcosθ)倍の時間が掛かる。 従って、その系ではc/√(c2+v2-2cvcosθ)秒を1秒と定義する。

 ∴時間は
Et'=t*√(c2+v2-2cvcosθ)/c
と変換される。
 この変換で、静止時のc/√(c2+v2-2cvcosθ)秒は、√(c2+v2-2cvcosθ)/c を掛けると、v慣性系の1秒となる。

 進行方向であるX軸方向へは、観測者がvt移動した分、距離が収縮した様に観測される。∴X軸方向は
Fx'=x-vt
となる。Y軸Z軸方向は変化しない。従って、まとめると変換式は
Et'=t*√(c2+v2-2cvcosθ)/c
Fx'=x-vt
By'=y
Cz'=z
Dc'=c
となる。これを基本変換と呼ぶ。

基本変換で、√(x'2+y'2+z'2)=ct'は成立する

光の定義  光をP(x,y,z)=(ct*cosθ,ct*sinθ,0)の平面で表す。P(x,y,z)は、Oを出発した光が t秒後に到達する点を表している。OP間の距離は、ピタゴラスの定理より
OP=√(x2+y2+z2) と表される。また、光の速度と時間の経過より
OP=ct とも表される。
OP2=(x2+y2+z2)= (ct*cosθ)2+ (ct*sinθ)2+02=c2*t2(cosθ2+sinθ 2)= c2*t2
 ∴√(x2+y2+z2)= ctであることが分かる。

 変換後の光をP'(x',y',z')とすると、光速度不変(c'=c)と仮定するので
OP'=√(x'2+y'2+z'2)=ct'
 を満たさなくてはならない。
OP'2=(x'2+y'2+z'2)= (ct*cosθ-vt)2+ (ct*sinθ)2+02= t2(c2*cosθ2-2cv*cosθ+v2+c2*sinθ2)= t2(c2+v2-2cv*cosθ)=c2t'2
 ∴Et'=t√(c2+v2-2cvcosθ)/c
となる。この様に、基本変換で変換すると、光速度は不変となる。

 √(x'2+y'2+z'2)=ct'は、距離=速度×時間を表わしており、 変換式はこの条件を満たすことが必要となる。
 一般的には、この式のcは光の速度であると考えられている。 光が、c[m/s]でt秒間進むと、その距離は√(x'2+y'2+z'2)となる。
 しかし、これは物質を動かす力の伝わる速度も意味している。 物質が移動する為、ある粒子の発した物質を動かす力が、 隣の粒子に到達するコースの距離が√(x'2+y'2+z'2)に変化する。 物質を動かす力の速度はc[m/s]で変わらない。従って、物質を動かす力が到達する時間は、 √(x'2+y'2+z'2)/cとなる。この様に、距離が変化しただけ、 粒子の動く速さが変わり、物質の変化のスピードが変わる。

 物質はそれを構成する粒子が結合・離反を繰り返すことにより、変化し時間を刻む。粒子の動く速度が遅くなり、 結合・離反に多くの時間がかかる様になれば、その物質はゆっくりと時を刻む。 従って、変換後の時間=変換後の距離÷光速で表わされるのである。

基本変換式で、逆変換しても光速度は不変となる。

 今度は、基本変換式で、逆変換しても光速度は不変となるか調べる。
 何故、逆変換しても光速度は不変とならなければならないのか。 特殊相対性理論では静止系を否定した為、全ての慣性系は、移動しているとも静止しているとも考えることの出来る平等なものとなった。 絶対静止が無いのであるから、運動はこれが静止しているとするとあれは運動している、 逆にあれが静止しているとするとこれは運動しているとしか言えない相対的なものとなる。
 そうなると、この慣性系は静止しているいや運動していると考え方を変えただけで、光速度が変化する様なことがあってはならず、 全ての慣性系で光速度はc[m/s]と観測されることが重要となる。
 vを-vにし、(x,y,z,t)を(x',y',z',t')にして、逆変換する。すると
x=x'+vt'
y=y'
z=z'
t=t'*{√(c2+(2vx')/t'+v2)/c }

となる。上記の通り
Ox'2+y'2+z'2=c2*t'2
は成立している。そこで今度は
Nx2+y2+z2=c2*t2
が成立するか調べて見る。

左辺=(x'+vt')2+y'2+z'2=x'2+2vt'x'+v2*t'2+ y'2+z'2
右辺= c2*t'2*(c2+(2vx')/t'+v2)/c2)= t'2*(c2+(2vx')/t'+v2))= c2*t'2+2vt'x'+ v2*t'2
両辺の(2vt'x'+v2*t'2)の部分は等しく両辺から消えるので、残るのは
Ox'2+y'2+z'2=c2*t'2
となる。従って、Nは常に成立する。基本変換で逆変換を行っても、光速度は常に不変となる。

 この様に、基本変換は、正変換することも逆変換することも自由自在であり、変換後の光の速度は全てc[m/s]となる。 一見すると、移動系における時間と空間の変換は、基本変換で十分な様に思える。

しかし、基本変換式のみでは、マイケルソンとモーレーの実験結果を説明出来ない

マイケルソンとモーレーの実験装置  マイケルソンとモーレーは鏡を使い、光を慣性系の進行方向(横方向)と上下左右方向(縦方向)に等しい距離を往復させ、 光が同時に戻って来るか実験を行った。実験の結果、全ての方向へ往復した光は、同時に戻って来た。

縦往復する光の相対速度  実験装置の片道をc[m]と仮定する。光の相対速度は第二余弦定理より√(c2+v2-2cvcosθ)[m/s]となる。 縦方向にはcosθ=v/cなので
縦方向の光の相対速度=√(c2-v2)[m/s]
となる。従って、縦の往復に要する時間は
2c/√(c2-v2)=2/√(1-v2/c2)秒
である。(図は左右逆となっている)

横往路の光の相対速度 横方向(進行方向)の往路は、cosθ=1なので
横往路の光の相対速度=(c-v)[m/s]
となる。よって
横方向の往路に要する時間=c/(c-v)秒
となる。


横復路の光の相対速度 横方向の復路は、cosθ=-1なので
横復路の光の相対速度=(c+v)[m/s]
となる。よって
横方向の復路に要する時間=c/(c+v)秒
となる。

 従って、横方向の往復に要する時間は
横往復時間=c/(c-v)秒+ c/(c+v)秒=2/(1-v2/c2)秒
となる。これでは、横方向と縦方向とで、光の往復に要する時間が異なり、光は同時には戻れない。

 これを解決するには、装置自体が進行方向へ√(1-v2/c2) 収縮したと考えるほかない。この様に装置が収縮すれば
縦方向の往復時間=2/√(1-v2/c2)秒
横方向の往復時間=2√(1-v2/c2)/(1-v2/c2) =2/√(1-v2/c2)秒
となり、光は同時に戻ることが出来る。これをローレンツ収縮と言う。 ローレンツは、物質は進行方向にはエーテルに押されてこの様に縮むと考えた。

ローレンツ収縮により、空間はX軸方向のみ1/√(1-v2/c2)伸びる。

 物質であるc[m]の物差しが横方向に√(1-v2/c2)収縮したらどうなるであろうか。 v慣性系では、c√(1-v2/c2)[m]をc[m]と計る。従って、v慣性系では、 横方向へはc√(1-v2/c2)[m]の長さをc[m]と定義する様になる。 縦方向の長さの定義に変化は無く、c[m]の長さをc[m]と計る。
 従って、その変換式は
Hx'=x/√(1-v2/c2)
y'=y
z'=z

である。これをローレンツ収縮による変換と呼ぶ。 これでX軸方向において、静止時のc√(1-v2/c2)[m]は、1/√(1-v2/c2)を掛けると、 v慣性系のc[m]となる。Y軸Z軸方向の変化はない。
 縦往復する光と横往復する光とが、同時に戻ることを説明する為の物質の横方向の収縮率 √(1-v2/c2)を、ローレンツ因子と言う。
 基本変換と、ローレンツ収縮による変換とを統合すると、空間の変換式は
Ix'=(x-vt)/√(1-v2/c2)
Jy'=y
Kz'=z
となる。

その時、時間の変換式はt'=(t-vx/c2)/√(1-v2/c2)となる。

では、時間はどう変換されるであろうか。√(x'2+y'2+z'2)=ct'より、時間の変換式(t'=)を導く。
OP'2=(x'2+y'2+z'2) ={(ctcosθ-vt)/√(1-v2/c2)}2+(ctsinθ)2+02
=(ctcosθ-vt)2*c2/(c2-v2)+c2t2sinθ2
=c2t2{(c2cosθ2-2cvcosθ+v2) /(c2-v2)+ sinθ2}
= c2t2{(c2cosθ2-2cvcosθ+v2+c2sinθ2- v2sinθ2)/(c2-v2)}
= c2t2{(c2-2cvcosθ+v2-v2(1-cosθ2))/(c2- v2)}
= c2t2{(c2-2cvcosθ+v2cosθ2)}/(c2-v2)}
=t2(c-vcosθ)2/(1-v2/c2)=c2t'2
∴Lt'={t*(c-vcosθ)/c}/√(1-v2/c2)
となる。
 x=ctcosθ、∴cosθ=x/ctをLに代入すると
@t'={t*(c-vcosθ)/c}/√(1-v2/c2)
=(t-vx/c2)/√(1-v2/c2)
となり、ローレンツ変換となる。このローレンツ変換は、正変換及び逆変換をしても光速度は常にc[m/s]となる。 (計算方法は、基本変換の場合と同じである)