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同時性の相対性と光速度不変の原理

ローレンツ変換では片道で光速度不変となる

 先ず、「同時性の相対性」について説明します。

 「ローレンツ変換」は次のとおりです。
@x'=(x-vt)/√(1-v2/c2
Ay'= y
Bz'= z
Ct'= (t-vx/c2) / √(1-v2/c2
Dc'=c

 「ローレンツ変換」では、v慣性系で観測される光の相対速度はc'=cで「不変」です。ですから、光子が0.8c慣性系で8c[m]離れて横方向(進行方向)に並んだ物質間を往復すると、
往路の所要時間=8c[m]÷c[m/s]=8秒
です。また
復路の所要時間=8c[m]÷c[m/s]=8秒
です。従って、
光子の往復の所要時間=16秒
です。

kothimaro変換では往復すると光速度不変となる

 一方、「kothimaro変換」は次のとおりです。
Ex'=(x-vt)/√(1-v2/c2
Fy'= y
Gz'= z
Ht'=t√(1-v2/c2)
Ic'=(c-vcosθ)/(1-v2/c2)
 なお、これについては「kothimaro変換」の導き方を参照下さい。

 「kothimaro変換」では、v慣性系で観測される光の相対速度は、c'=(c-vcosθ)/(1-v2/c2)です。光子が、0.8c慣性系で8c[m]離れて横方向(進行方向)に並んだ物質間を往復します。往路では、v=0.8c[m/s]、cosθ=1です。従って、
往路の所要時間=8c[m]÷(c-vcosθ)/(1-v2/c2)[m/s]=8c[m]÷(c-0.8c)/0.36[m/s]=8c[m]÷0.555c[m/s](光の相対速度)=14.4秒
です。

 また、復路では、v=0.8c[m/s]、cosθ=-1です。従って、
復路の所要時間=8c[m]÷(c-vcosθ)/(1-v2/c2)[m/s]=8c[m]÷(c+0.8c)/0.36[m/s]=8c[m]÷5c[m/s](光の相対速度)=1.6秒
です。従って、
光子の往復の所要時間=14.4秒+1.6秒=16秒
です。従って
光の往復の平均速度c'=16c[m]÷16秒=c[m/s]
と「光速度不変」となります。

往復で光速度不変なら生じる電磁力の強さは不変となる

 この様に、v慣性系でも、光子は静止時と同じ時間で電荷を帯びた物質間を往復すると観測されます。その為に、生じる電磁力の強さは不変と測定されます。これを「全ての慣性系で物理法則は同じ形となる(=特殊相対性原理)」と言います。

 電荷を帯びた粒子AB間の距離を8c[m]とします。粒子Aの発した光子が、先を行く粒子Bに届くのは、実際には14.4秒後です。その光子が、再びAに戻って来るのは16秒後です。
 逆に、粒子Aが発した光子が、後を行く粒子Bに届くのは、実際には1.6秒後です。その光子が、再びAに戻って来るのは16秒後です。
 この様に、Aの発した光子がBに届く時は、Bの位置により異なります。
 しかし、生じる電磁力の強さは、光子の往復時間の2乗に反比例します。従って、往路も復路も「光速度不変」と仮設して、Aの発した光子がBに届くのは8秒後、再びAに戻るのは16秒後と考えても、生じる電磁力の強さは正しく計算されます。

 ですから、物理学上、往路も復路も「光速度不変」と考えても良いのです。こう考えると、Aの発した光子がBに到達する時は、Bの位置にかかわらず「同時」となります。

 この様に、実際にはAの発した光子がBに届く時は、Bの位置により異なります。しかし、往路も復路も「光速度不変」と仮設し、光子がBに到達する時を「同時」として物理計算をしても良いのです。これを「同時性の相対性」と言います。

 「同時性の相対性」とは、光の相対速度は往路と復路では異なりますが、物理計算上、往路も復路も「光速度不変」と考えても良いと言う意味です。

光の絶対速度

 以上は、光の相対速度です。今度は光の絶対速度を求めます。
 ロケットの中のBの持っている時計は1/0.6秒間に1秒を刻み、定規は0.6倍に収縮します。この時計と定規を使って、光の絶対速度を測定します。
 光は1/0.6秒間にc/0.6[m]進みます。この距離を収縮した定規で測定すると、c/0.36[m]となります。この間Bの時計は1秒を刻むので、
 Bが見た光の絶対速度= c/0.36[m]÷1秒= c/0.36[m/s]=2.77c[m/s]です。

 ロケットは0.8c[m/s]で移動します。ただし、Bが持っている時計は1/0.6秒間に1秒を刻み、定規は0.6倍に収縮します。この時計と定規を使ってロケットの絶対速度を測定します。
 ロケットは1/0.6秒間に0.8c/0.6[m]進みます。その距離を収縮した定規で測定すると、0.8c/0.36[m]と測れます。この間Bの持っている時計は1秒刻むので、
 Bが見たロケットの絶対速度=0.8 c/0.36[m]÷1秒= 0.8c/0.36[m/s]=2.22c[m/s]です。

 Bには、ロケットは光の0.8c/0.36[m/s]÷c/0.36[m/s]=0.8倍の速度で進んでいると測定されます。決して、光速を超えると観測されることはありません。