• CATBIRD日記 (物理・数学・歴史・哲学・宗教の未解決問題を扱ってます)
  • アキレスと亀のパラドックスの解消方法

    T.アキレスは亀を追い越せるか

    アキレスと亀

     アキレスと亀のパラドックスは
     「走ることの最も遅いものですら最も速いものによって決して追い着かれないであろう。なぜなら、追うものは、追い着く以前に、逃げるものが走りはじめた点に着かなければならず、したがって、より遅いものは常にいくらかずつ先んじていなければならないからである」と言うものです。

     アキレスと亀が競争しました。アキレスは亀にハンディーキャップを与え、亀よりも後ろからスタートしました。
     亀がスタートしたA地点にアキレスが到達した時、亀は既に幾らか前方のB地点に進んでいます。
     アキレスがそのB地点に到達した時、亀は既により前方のC地点に到達しています。これが繰り返されるので、アキレスが幾ら進んでも亀は常に前方に居ることになり、アキレスは決して追いつき追い越すことが出来ません。

    U.アキレスは一歩も前に進めないか

     これを少し変えたものに、「運動はない」とするパラドックスがあります。
     ゴールの半分の地点に到達するには、その前にその半分の半分の地点に到達していなければなりません。更にその半分の半分の地点に到達するには、その前に半分の半分の半分の地点に到達しなければなりません。これが限りなく続くので、アキレスは無限の地点を通過しなくてはならず、一歩も前に進み出ることが出来ないと考えます。

    V.数の稠密性(ちゅうみつせい)

     両者のパラドックスの本質は同じです。
     ではどの様に考えれば、このパラドックスを解くことが出来るでしょうか。

     これは、数の「稠密性(ちゅうみつせい)」の問題です。稠密性数とは、数はつんでいて間がないことを意味します。
     例えば、0と最も小さい正の数との間はつんでいて何もないとすると、「最も小さい正の数−0=0」となります。
     そうなら、「最も小さい正の数=0+0=0」となってしまいます。しかし、「最も小さい正の数≠0」です。

     この様に矛盾するので、0と最も小さい正の数の間には、0でない「無限小」があることになります。つまり、数は稠密ではないのです。
     「無限小」+「無限小」≠「無限小」です。ですから、「無限小」地点を2つ通過すれば、それは「ある長さを持った距離」になります。
     そうなると、もうそれを無限に繰り返さなくても前に進めます。「ある長さを持った距離」の通過を繰り返せば、どんどん前に進めるからです。

     アキレスと亀のパラドックスも、同じ思考方法で解くことが出来ます。
     ある時刻にアキレスは亀まで「無限小」+「無限小」≠「無限小」の距離に近づきます。その次の時刻に、アキレスと亀の差は「無限小」に、またその次の時刻には両者の差が0になります。亀は、「無限小」より小さい距離を進むことが出来ないからです。

     更に次の時刻にアキレスの方が「無限小」前方に居ます。亀は同じく、「無限小」より小さい距離を進むことが出来ないからです。その次の時刻にアキレスは「無限小」+「無限小」≠「無限小」亀より前方に居ます。これで、アキレスは無事亀を追い越すことが出来ました。