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重力により空間が落下するのか

T.慣性質量と重力質量

ピサの斜塔  質量には、慣性質量と重力質量とがあります。
 物質は同じ場所に留まろうとします。この動かし難さを慣性と呼び、その大きさを慣性質量と言います。また、物質は他の物質の重力に引かれます。この引かれる強さを重力質量と言います。単純に表現すると、横に押す時感じる重さが慣性質量であり、上に持ち上げて支えている時感じる重さが重力質量です。

 物体の落下は、その場に留まろうとする慣性質量を重力質量が引っ張る現象です。ピサの斜塔から物体を落とした時、慣性質量は上に向かって物質を引っ張り、重力質量は下に向かって物質を引っ張ります。動かし難いが重力には余り引かれない物質や、動かし易いが重力に良く引かれる物質があれば、ピサの斜塔から落とした時、前者はゆっくりと落下し、後者は早く落下します。
 しかし、そのようなことは起こらず、すべての物体は同じ速度で落下します。その場所に止まろうとする力と重力により引かれる力の比率が、全ての物質において同一だからです。

U.空間自体の落下

 では、何故この2つの比率は、全ての物質で同じなのでしょうか。
 一般相対性理論では、両者は同じ現象であるとしました。つまり、物体を押し続け加速している時、物体に掛かるGと、地面の上の物体に掛かるGは同じ現象によって起こると考えました。これは、地面にある物体は、地面に押されて加速されていると言う意味です。空間自体が地球の重力により落下し、物体は空間の同じ位置に留まろうとして一緒に落下します。しかし、地面が物体を逆方向へ押し、物体を加速し続けているのでGが掛かると考えました。

V.重力による光の曲り

光の曲がり  そして、光が重力により曲がることを、空間が落下する証拠とします。光の質量は、0とされています。つまり、重さがはありません。従って、物質を引き付ける重力も生じなければ、物質が発した重力に引き付けられることもありません。それならば、光は重力の影響を受けず、直進する筈です。しかし、現実には光は重力により曲げられます。
 一般相対性理論が発表された直後、1919年にちょうど日食がありました。 もし一般相対性理論が正しければ、太陽に隠れている星から来る光は、太陽の重力によって曲げられ、 地球上でその星が見えるはずでした。
 観測の結果、その星は相対性理論で予言した通りの位置に見えたのです。相対性理論では、太陽の質量により空間が落下したと考えます。光は直進したのですが、空間と一緒に落下した為、曲がって進んだと説明します。

W.アインシュタイン博士による解説

慣性質量と重力質量  以上の内容を、アインシュタイン博士自身が書かれた『特殊及び一般相対性理論について』では次のように記述されています。
 >部屋の形をした広大な箱を考える。その中に装置を備えた観測者が居る。この状態では、観測者にとって重力というものは存在しない。
 ・・・箱の蓋の中央外部にザイルを付けたハーケンが取り付けられ、我々とは無関係な種類の存在者が一定の力でこれを引き始めるとせよ(上図左)。その時、観測者もろとも一様な加速度運動で上方へ飛び始める。・・・しかし、箱の中の人はこの過程をどう判断するだろうか?箱の加速度は、箱の床そのものの反動によりその人に伝えられる。・・・その時、彼は、全く地球上の我が家の部屋の中(上図右)に居るように、箱の中に立っていることになる。・・・従って、箱の中の人は、自分も箱も重力場にあると言う結論に達するであろう。・・・屋根の中央にハーケンがあって、それにピーンとザイルが張られているのを発見する。そのことから、箱は重力場に静かに吊るされていると言う結論に達する。

 ・・・今度は、箱の中の人が箱の天井の内側にザイルを固定し、その空いている方の端に物体(黒い丸)を吊るすとする。こうすると、ザイルはビーンと垂直に垂れることになる。我々はこのザイルの張力の原因を尋ねる。箱の中の人(上図右)は言うだろう。「吊るされている物体(黒い丸)は重力場において下向きの力を受け、それはザイルの張力と釣合う。ザイルの張力の大きさを決めているのは、吊るされている物体の重力質量である」と。

 一方、空間に自由に浮かんでいる観測者(上図左)は、その状況を次のように分析するだろう。「ザイルは箱の加速運動に伴わざるを得ないから、それは結び付けられている物体(黒い丸)にその運動を伝える。ザイルの張力は物体の加速運動を生ずるに丁度良いだけの大きさである。ザイルの張力の大きさを決めているのは、物体の慣性質量である」と。
 この例から分かる様に、慣性質量と重力質量の同等性定理を必然的なものとして示している。<以上です。

X.解説

 相対性理論では、上記の様に、加速する際の物質の動き難さである慣性質量と地上にある物質の重力質量は同じ現象であると考えています。
 つまり、上図右の物質(黒丸)は静止しているのではなく、空間自体が地球の重力により落下し、その空間と共に落下しようとするが、ザイル(黒紐)に引っ張られます。空間自体から見ると物質(黒丸)は、反対方向へどんどん加速されていることになります。その為に慣性質量によりザイル(黒紐)はピント張るのです。

 単に、空間が曲っているだけでは、物体は落下しません。ましてや、空間が曲っているように見えるだけでは、物体は落下しないのです。

 質量には、慣性質量と重力質量とがあります。
 物質は同じ場所に留まろうとします。この動かし難さを慣性と呼び、その大きさを慣性質量と言います。また、物質は他の物質の重力に引かれます。この引かれる強さを重力質量と言います。単純に表現すると、横に押す時感じる重さが慣性質量であり、上に持ち上げて支えている時感じる重さが重力質量です。