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  • 重力波望遠鏡LIGO(ライゴ)で重力波は発見されたのか?

    T.アインシュタインからの最後の宿題

     アメリカのカリフォルニア工科大とマサチューセッツ工科大等の共同研究チームが、「アインシュタインからの最後の宿題」と言われた「重力波」の直接観測を成し遂げたと発表しました。

     同チームは、ワシントン州とルイジアナ州にある2台の重力波望遠鏡「LIGO(ライゴ)」を使い「重力波」をキャッチしたそうです。
     しかし、この実験装置で重力波を観測出来るのでしょうか。それを、検証して行きます。

    U.重力波発生のメカニズム

    ブラックホールの合体  相対性理論で、重力波は物質の加速度運動により放出されるとします。今回観測されたのは、今から13億年前、太陽の質量の約29倍と36倍の2つのブラックホールが合体した際に放出された重力波と見られています。

     ブラックホール同士がその重力により近づくと、それは連星系を形成します。つまり、2つのブラックホールが両者の重心の周りを軌道運動します。そして、両者が近づくに従い軌道半径が小さくなるため、「角運動保存の法則」により、回転速度はどんどん速くなり加速度運動をします。
     ブラックホールは、巨大質量なのに非常に小さいので、軌道半径はとても小さくなり、そのため回転速度は光速に近くなります。

     この時、重力波が発生します。重力波は、双方の質量が大きく速度が光速に近い程強く生じます。ですから、ブラックホール同士が衝突するまでに、大量のエネルギーが重力波として放出されます。今回、観測の対象となったブラックホールの合体では、太陽の約3倍の質量が重力波に変換されたと考えられています。

     ※重力が作用する粒子であるクォークとレプトンは、加速運動することで重力波を生じます。そして回転は、遠心力が常に掛るので加速度運動です。直線の加速度運動で常にGが掛るのと同じです。2つのブラックホールも元々重力波を発生しており、また合体した後のブラックホールも重力波を発生します。
     しかし、合体直前、2つのブラックホールが光速に近い速度まで加速した際に放出された重力波は膨大なものです。太陽の約3倍の質量が、その瞬間重力波として放出されたと考えられています。
     ですから、2つのブラックホールの重力波(小)→合体直前の重力波(大)→合体後の重力波(小)と今回観測されたのです。

    V.重力波とは

    重力波のモード  重力波とは、時空間の歪みが光速で伝わる現象です。図の様に、重力波には+モードと×モードの2種類があります。空間自体が重力波により、赤→緑→青→緑→赤と振動します。

     時空間そのものの歪みが光速で伝わる現象が重力波です。つまり、時空間そのものが重力波の媒体です。その速度が光速なので、今回観測されたのは13億年前に発生した重力波であることが分かりました。

     重力が光速で伝わることについては《重力の伝わる速度》を参照下さい。

    W.観測装置

    干渉計型検出器  そして、今回のチームが用いた観測装置は、地上における干渉計型検出器と呼ばれるものです。

     光源より、2本のレーザー光aとbを90度開いた2つの方向へ発射します。そして、4q先に鏡aとbを設置し、レーザー光を反射させて光源に戻します。

     重力波により空間自体が図(重力波の2つのモード)のとおり振動するため、鏡aまでの距離が縮んだ時、鏡bまでの距離は伸びています。この仕組みにより、レーザー光aとbが発射位置に戻る時間はズレます。

     共同研究チームは、ズレを検出し時空間を振動させる重力波の存在を実証したと名乗りを上げました。

    X.潮汐力による観測装置の変形

     しかし、この仕組みで本当に重力波が時空間を歪めることを実証出来るでしょうか。
    潮汐力  物質に強い重力が掛かると、潮汐力が生じます。その為に、物質は歪みます。月の潮汐力を例に説明します。

     月の直径は3,474qあります。従って、地球に近い側と反対側では、地球までの距離が違う為に、掛かる重力加の大きさが異なります。地球に近い側は重力a・反対側は重力c・月の中心は重力bが掛かります。a>b>cなので、地球に近い側にはa−bの外側に向かう力が、反対側にはb−cの外側に向かう力が働きます。こうして、月には楕円体に引き伸ばされるのです。

     ですから、ブラックホール合体の際放出された重力波により、地球に潮汐力が掛かり地球は楕円体に引き伸ばされます。観測装置を地上に置くと、地球自体が楕円体に変形するために、ブラックホール方向へ向いた鏡までの距離が長くなります。これでは、当然レーザー光aとbは同時には戻りません。また、物質である定規で鏡までの距離を測定しても、定規自体が変形しているのでどちらも4qと測定されます。

     観測者には、aとbどちらも4qなのにレーザー光が戻る時間にズレが生じました。一見、空間自体が伸び縮みした様に思えます。しかし現実には、地球や地上の物質が変形したので、そう観測されるだけです。この方法では、重力波が時空間自体を歪めていると実証することは出来ません。

    Y.宇宙空間での干渉計型検出器

    宇宙空間での干渉計型検出器  ですから、この実験は宇宙空間で行わなければなりません。

     宇宙空間に3台の衛星を打ち上げます。一台pがレーザー光発射装置です。他の2台aとbが鏡となります。pから90度の角度をなす衛星aとbに向かってレーザー光を発射します。衛星aとbに付けた鏡にレーザー光が反射し発射位置pに戻ります。重力波により空間自体が歪んでいるのなら、レーザー光aとbが戻る時間にズレが生じます。

     しかし、この方法でも重力波が空間自体を歪めていることを実証することは出来ません。何故なら、レーザ光の速度は、重力の影響を受けるからです。

    Z.重力による光の速度の変化

    重力による空間の歪み  一般相対性理論が発表された直後の1919年に、丁度日食がありました。 もし一般相対性理論が正しければ、太陽に隠れている星から来る光は、太陽の重力により曲げられ、 地球上でその星が見える筈でした。 そして、その星は相対性理論で予言したとおりの位置に見えました。
     相対性理論では、太陽の質量により空間が曲げられたと考えます。光は直進したのですが、空間の曲がりに沿って進んだ為、曲がったと説明します。
     光の質量は、0とされています。つまり、重さがありません。ですから、この世の最速の光速cで進むことが出来ます。  故に、光は物質を引き付ける重力も生じなければ、物質が発した重力に引かれることもありません。それならば、光は重力の影響を受けず、直進する筈です。しかし現実は、光は重力により曲げられました。この理由により、空間自体が重力により歪んだと考えます。

    慣性質量と重力質量  しかし、本当に光に質量がないのでしょうか。
     質量には慣性質量と重力質量があります。物質は同じ場所に留まろうとします。この動かし難さを慣性と呼び、その大きさを慣性質量と言います。また、物質は他の物質の重力に引かれます。この引かれる強さを重力質量と言います。

     物体の落下は、その場に留まろうとする慣性質量を重力質量が引っ張る現象です。そして、全ての物体は同じ速度で落下します。全ての物質は、慣性質量と重力質量の比が同一であり、落下させる重力質量が2倍になると落下し難さである慣性質量も2倍となるからです。

     しかし、光には慣性質量はないけれども、重力質量がある可能性があります。光には運動量Pがあるので、慣性質量が0でも加速度aは無限大にはなりません。そうであれば、慣性質量がないので、光はこの世の最速の光速cで進むことが出来、かつ重力質量があるので物質の重力により曲がり又は遅くなります。
     質量とエネルギーは等価です。例えば、静止時の電子の質量は、m=9.11×10^-31kgです。これをエネルギーに直すには、「E=mc^2」を使います。
     電子のエネルギー量E=9.11×10^-31kg×(3×10^8)2/1.6×10-^19=0.511MeV(メガ電子ボルト)
     となります。つまり、電子と言う物質は9.11×10^-31kgの質量を持ち、それをエネルギーに直すと0.511MeVになります。電子は質量=エネルギーを持つので重力に引かれるのです。
     同様に、光もエネルギーを持つので、質量に直すことが出来ます。

    赤い光  可視光線は、紫から赤までです。赤い光は3.9×10^14Hz(ヘルツ)です。1Hzは1秒間に1回振動する光です。そのエネルギー量が、6.626069×10^-34J(ジュール)です。
    赤い光の1秒当たりの振動回数ν回/秒=3.9×10^14回
    です。ですから
    赤い光のエネルギー量E=h(ジュール*秒)×3.9×10^14回/秒= 2.584166×10^-19ジュール
    です。これを質量に直すには、E=mC^2⇒m=E/C^2を使います。
    赤い光の質量m(s)= 2.584166×10^-19ジュール÷C^2=2.584166×10^-19ジュール÷{(2.997924×10^8)m/秒}2=2.875272×10^-36s
    です。
     この様に、赤い光は2.875272×10^-36sの重力質量を持っていると考えられます。従って、光も重力質量を持ち重力により落下し、又は重力に引かれて遅くなることが分かります。

     つまり、レーザー光の速度が重力により変化するので、当然aとbが戻る時間はズレます。従って、宇宙空間で実験しても、空間自体が伸縮していることを実証することは出来ません。

    [.共振型検出器

    共振型検出器  重力波を検出する装置として、他に共振型検出器があります。これは、2つの重りをバネで繋いだ構造です。重力波により空間が振動するので、重りaとb或はcとdの距離が変化しバネが伸び縮みするので、装置が振動します。その振動を測定できれば、重力波が空間を伸び縮みさせていることを実証出来ると考えます。

     しかし、潮汐力の項で述べた様に、2つの重りから重力源までの距離には差があり、2つの重りに掛かる重力の強さが異なるため、その影響でバネが伸び縮みし振動してしまいます。
     やはりこの方法でも、重力波が空間自体を歪めていることを実証することは出来ません。

    \.空間自体は変化しない

     一体どの様な仕組みで、空間自体が伸縮するのでしょうか。その仕組みを答えた人はまだ居ません。そして、未来永劫居ないでしょう。

     何故なら、空間には何も実体がないからです。実体がなく構造を持たないものの変化を説明出来る筈はありません。

     また、時間や空間自体が変化しても、新たな物理現象は起こらないのです。DVDを大画面のテレビで見ても小さな画面のテレビで見ても、そのストーリーや結末は同じです。早送りで見てもスローで見ても同じです。
     何故なら、画面の中の人や物の大きさは画面が大きくなると大きくなり小さくなると小さくなるからです。また、画面の中の人や物の動く速さは、早送りで見ると速くなり、スローで見るとゆっくりとなるからです。
     つまり、この宇宙の空間や時間が変化したとしても、その変化に合わせて中にある物質の大きさや速さが変化するので、結局物理現象(この宇宙のストーリー)は変わらないのです。

     一方、量子力学では、重力は、グラビトンが物質の間を往復することで生じると考えます。あたかも、グラビトンが輪ゴムの様に、2つのものを近づけるのです。決して、空間自体が歪むとは考えません。
     私は、この考え方の方が自然であると判断します。