宇宙の平坦性

 当初一般相対性理論では、この宇宙の時空間は重力により曲がり、四次元において半径300億光年の球体となり閉じていると考えられていました。
@宇宙の時空間の曲率>0の時「閉じた宇宙」・A曲率=0の時「平坦な宇宙」・B曲率<0の時「開いた宇宙」と表現します。@の時宇宙は収縮に転じビッグクランチが、Bの時膨張し続けビッグリップが起こります。Aの時は、宇宙は膨張率0に向かって永遠に膨張し続け有限の大きさとなり定常宇宙となります。
 最新の観測結果では、宇宙は限りなく平坦でりAでした。従って、宇宙は球体になっている訳ではありません。

 また、この宇宙で絶対に静止している一点を示すことは出来ません。ですから、相対性理論では、地球が動いているとも、地球は静止しており太陽や他の天体が動いているとも自由に考えることが出来ます。

 この宇宙は、約148億年前に起こったビックバンにより膨張しています。しかし、物質間には重力が働いています。この宇宙が十分な質量を持ち正の曲率を持てば、ビッグバンによる宇宙膨張が減速され、現在の膨張は止まり逆に重力により収縮に向かいます。そうして、また物質は一点に集中し再度ビッグバンが起こります。この様な宇宙を「閉じた宇宙」と呼びます。

 逆に、この宇宙が十分な質量を持たず、負の曲率しか持たなければ、現在の膨張は止まらず永遠に膨張を続けます。この様な宇宙を「開いた宇宙」と呼びます。この中間で、宇宙の膨張が0に向かう場合、つまり最終的に宇宙は膨張を止めるが重力による収縮も起こらない時、宇宙の曲率は0であると言います。この様な宇宙を「平坦な宇宙」と言います。平坦な宇宙の質量(=エネルギー)の密度を臨海密度と言います。この宇宙は、平坦なのか閉じているのか或は開いているのか。それが平坦性問題です。

 観測の結果、この宇宙の質量の密度は、臨海密度の0.98 から 1.06倍の間であることが分かりました。これは、この宇宙はほぼ平坦であることを意味しています。宇宙の始まりにおいて、この値が精密に1であり宇宙が平坦でないと、現在の様な宇宙は形成されなそうです。1より小さいとあっという間に宇宙は収縮してつぶれてしまいます。逆に、1より大きいと急速に宇宙は膨張して銀河等は形成されません。なぜ、宇宙の始まりにおいて、この値が正確に1で、宇宙は平坦であったのかが謎でした。

 これをインフレーション理論が解きました。従来のビッグバンの標準理論では、何ものも光速以上では動けません。その為、宇宙の初期にあった曲率は解消されませんでした。しかし、インフレーション理論では、宇宙のごく初期において光速を超えて急速に宇宙は膨張した為、曲がっていた宇宙は平坦に伸ばされたとされます。

 現在の時点では、宇宙は平坦に限りなく近いと考えられています。

 重力により再び一つの巨大ブラックホールに収縮することはないと考えられています。銀河系も、偶然に巨大ブラックホールに出会い、飲み込まれる可能性はありますが、上記の通り、必然的にブラックホールに飲み込まれることはないようです。