月に掛かる潮汐力

 月の自転と公転の周期は同一です。どうして、月の自転は公転と一致したのでしょうか。

 地球から外に向かって飛び出そうとする月が、地球に向かって自由落下するので、月は地球の周りを公転しています。月はこの様に地球に向かって自由落下しているので、月の中の重い物質も軽い物質も同時に地球に向かって落下します。月の中に重い部分と軽い部分があったとしても、月が地球に同じ面を向ける力は生じません。

 しかし、月には潮汐力が掛かります。潮汐力を説明します。月の直径はで3,474qあります。従って、地球に近い側と反対側では、地球までの距離が違う為に、掛かる重力加速度の大きさが異なります。地球に近い側の地球による重力加速度をa・反対側の地球による重力加速度をc・月の中心の地球による重力加速度をbとします。a>b>cなので、地球に近い側にはa-bの外側に向かう力が、反対側にはb−cの外側に向かう力が働きます。こうして、月には楕円体に引き伸ばされる力が働くのです。従って、この潮汐力は自由落下している月にも働きます。

 そして、その潮汐力Ftは、次の通り計算されます。
Ft=2GMmr/R3
G=万有引力定数=6.67384×10-11m3Kg-1s-2、M=物体Bの質量、m=物体Aの質量、R=物体AとBとの距離、r=物体Aの中心からの距離です。この潮汐力により、月は楕円体に変形されます。

 そして、月が自転し地球に向ける面が変わると、月はきしみながら地球に向けた方向が長くなる様な楕円体に変形します。この変形に伴い物質が摩擦し、莫大なエネルギーを消費します。元々、月は公転よりも短い期間で自転していました。しかし、この潮汐力による月の変形に自転エネルギーが序々に奪われ、終には自転周期と公転周期が一致したのです。こうなれば、月は常に同じ面を地球に向ける形となるので、月自体はもう変形しません。従って、これ以上自転エネルギーが奪われることはないのです。
 こう言う理由により、月は同じ面を地球に向けているのです。