• CATBIRD日記 (物理・数学・歴史・哲学・宗教の未解決問題を扱ってます)
  • 小説「中学生に分かる相対性理論」

    登場人物の紹介

     かねてより、数式を出来る限り使わず、言葉で相対性理論を語りたいと思っていた。そこで、相対論の総まとめとして、それを対話形式で表現した。中学生が、この会話を聞いていても理解出来る様に、平易な表現に努めた。

     登場人物は、私ことCATBIRDと、私の心の中に居る二人の男女である。二人とも、私の思考の一部である。
     男性は、角ばった体つきをしており常識派である。時間と空間が変化することは無いとの信念を持っている。宇宙は、もっと単純で美しく出来ていると考えるロマンチストな黒い光である。いつも右側に居る。
     女性は、スラリとした長身で、恐ろしく知的な白い光である。相対性理論を信仰している理論派である。いつも左側に居る。
     私は、微かな霊感である。雄弁な二人に比べると、私は弱々しく見える。反論されると、消えてしまいそうである。しかし、この二人は、私の中に真理を見つけようとする。

     この二人に名前はないが、仮に、「省三」と「みどり」としておく。

    高速移動により時間と空間は変化するか

    CATBIRD 「私が高速で移動した時、一体何が起こるだろうか。普通に考えると、私以外のものの移動速度が変わるだけと思える。常識では、時間や空間が変化するとは思えない。しかし、相対性理論の基礎となるローレンツ変換では、時間と空間は次の様に変換されると考える。
    【時間】   t'= (t-vx/c2) / √(1-v2/c2
    【進行方向】x'=(x-vt)/√(1-v2/c2)
    【上下方向】y'= y
    【左右方向】z'= z
    そこで、時間や空間が変化する実例に基づいて、話し合って見よう。」

    みどり 「カーナビにも使われているGPS衛星の中の時計は、地上では√(1-v2/c2)秒に1秒進む様に設定されています。この時計が軌道に乗り高速で移動すると、地上の時計と同じ速さで時を刻む様になります。
     この事実は、速度vで移動する慣性系では、時間の経過はt'=t/√(1-v2/c2)と遅くなることを示しています。軌道上では、√(1-v2/c2)/√(1-v2/c2)=1秒となるのです。」

    省三 「時間の経過が遅くなったとしても、何も変わりません。例えば、DVDを早送りやスローで見る様なものです。そうしても、ストーリーや結末は全く同じです。時間がゆっくりと流れる様になったとしても、物質の因果関係は何も変わりません。
     従って、物質の高速移動により、時間の経過がゆっくりとなったとしても、人間にはそれを知る方法はありません。DVDの中の登場人物には、すべての因果関係の進展する速度が同じ変化をするので、比べるものがないからです。
     また、空間が大きくなったり小さくなったりしても、何も変わりません。例えば、DVDを大きな画面で見たり、小さな画面で見たりする様なものです。ストーリーや結末には一切影響がなく、DVDの登場人物には空間が変化したことを知る術はありません。何故なら、変化していない空間がないので、比べるものが無いからです。」

    みどり 「物質が高速移動すると、時間の経過が遅くなります。しかし、その物質に流れる時間の経過だけを遅らせるのです。他の物質に流れる時間の経過には、一切影響を与えません。GPS衛星が高速で軌道上を移動しても、GPS衛星に流れる時間の経過を遅らせるだけで、地上の時間の経過を遅らせることはありません。
     従って、GPSの中の時計と地上の時計を比べ、GPS中の時計が遅れていることを確認することが出来ます。」

    省三 「物質が高速移動すると、その物質に流れる時間の経過のみゆっくりとしたものとなるとのお考えですが、どの様な仕組みでそうなるのですか。」

    みどり 「それは、分かりません。時間は直感であり、他のイメージを使って説明することが出来ないからです。ただ遅くなっているとしか言えません。
     人間には、その仕組みは理解出来ないけれども、真実であることは他にもあります。宇宙の始まりがそうです。物質の因果関係は、原因があり結果を生み、それがまた原因となり結果を生むと言う順番になります。これを遡って行くと、宇宙の始まりは原因なくして結果が生じたことになります。無から有が生じた瞬間が、宇宙の始まりです。しかし、人間には無から有が生じる仕組みを理解することは出来ません。」

    省三 「確かに、GPS中の時計を地上から見ると、遅れて見えることは事実です。しかし、それは時間の経過が遅くなったからと考える必要はありません。この様にも考えられます。
     物質間を瞬時に伝わるものはありません。物質を動かす力には4つあります。電磁力・重力・強い力・弱い力です。これらの力は有限な速度で伝わります。電磁力は光の一種であり、光速で伝わります。重力も光速で伝わると考えられます。
     私から、GPS衛星が高速で離れて行く場面を想定します。GPS衛星が私から離れる程、GPS衛星からの影響力が、私に届く為に要する時間は長くなります。電波も重力も光も全てがそうなります。すると、私は、両者の距離が離れれば離れる程、過去のGPS衛星を見ていることになります。どんどん過去のGPS衛星を見る様になると、GPS衛星に流れる時間は、ゆっくり経過していると見えます。しかし、それは単なる観測上のズレであり、双方の実際の時刻は一致しています。」

    みどり 「それでは、GPS衛星が戻って来る時は、私にどんどん近づくので、どんどん現在に近い過去のGPS衛星を見ることになります。この状態で、私がGPS衛星を見ると、それに流れる時間は速く経過していると見えます。
     GPS衛星を地上で回収した時、両者の時間のずれは無くなるはずです。GPSの時計は、速く進む様に設定されていたので、地上の時計よりも進んでいるはずです。しかし、実際はそうではありません。双方の時計は同じ時刻を示しています。この事実は、実際にGPS衛星に流れる時間の経過が遅くなったので、速く進む様に設定された時計がゆっくりと進み、地上の時計と同じ速度で時間を刻んだことを示しています。」

    省三 「仕組みは分からないけれども、物質が高速で移動すると、その物質に流れる時間の経過を遅らせ、それ以外の物質に流れる時間の経過には一切影響を与えないと言われるのですね。
     しかし、それではこの宇宙には、物質の移動する速度の数だけ、無数の時間の経過があることになります。物質が速度を変える度に、新しい時間の経過が生まれ、それまでの時間の経過は消滅することになります。これは、大変不自然で煩雑に思えます。この宇宙は、もっと単純で美しく設計されているはずです。」

    物質にとって時間の経過とは何か

    CATBIRD 「実例に基づいて、物質にとって、時間の経過とは何かを議論して見よう。
     太陽の原子核反応により多数の宇宙線が発生し、それが大気に突入し多数のμ粒子が生じ地上に降り注いでいる。 本来の速度で崩壊が進めば、μ粒子は平均寿命2.2×10-6秒なので、光速度c=3.0×109m/秒とすると 2,200×3=6,600mまでしか移動出来ず、大気の途中で崩壊し地上まで達しないはずである。しかし、現実には、多数のμ粒子が地上に到達している。 実際に、μ粒子の崩壊のスピードが遅くなっているのである。

     これを、単純なモデルに直して見よう。 今この宇宙に、粒子aと粒子bと2つのみとなったとして見る。粒子aとbは、毎秒60回振動している。そこで、粒子aを高速で移動させる。すると、粒子aは毎秒30回しか振動しなくなった。しかし、粒子bは依然として、毎秒60回振動している。
     私である粒子bが、μ粒子である粒子aを見ると、粒子aは毎秒30回の振動に減ったので、粒子aの時間はゆっくりと経過している様に見える。
     しかし、粒子aの振動回数が30回に減ったのは、それに流れる時間の経過が遅れた為であろうか。それとも、粒子aの振動と言う物質の反応速度がゆっくりとなっただけであるのか。」

    みどり 「粒子aに流れる時間の経過が遅れたのです。」

    省三 「宇宙の一部だけ、時間の経過が変化したとは思えません。また、その仕組みも分かりません。粒子aの振動と言う物質反応の速度が遅れたとしか考えることは出来ません。」

    CATBIRD 「粒子aを構成している基本粒子が、結合や離反を繰り返すことで、粒子aは振動し時を刻んでいる。それを構成している基本粒子の結合離反に要する時間が長くなると、粒子aの振動回数は減りゆっくりと時を刻む様になる。
     粒子aの振動回数が毎秒30回に減ったのは、基本粒子の結合離反に要する時間が、倍になったからとも考えられる。また、粒子aに流れる時間の経過が、倍のゆっくりとした速さになったからとも考えられる。果たしてどちらであろうか。」

    速度と光速で動こうとする物質の割合 みどり 「あらゆる物質の速度の限界は、光速であることは経験上確かです。物質の移動速度が光速に近づくにつれて、同じエネルギーを与えてもその物質は動き難くなります。これを相対論では、物質は高速で移動すると、質量が増加した様に振舞うと言います。
     X軸方向へ速度vで移動する物質を、Y軸方向へ光速で移動させる事は出来ません。Pまで移動させると、光の移動距離はOPとなり光速を超えてしまうからです。従って、この物質はaしか動く事は出来ません。ピタゴラスの定理により、a=√(1-v2/c2)です。物質は速度vで移動すると、静止時の√(1-v2/c2)しか動くことが出来なくなります。
     物質の動く速度は、質量に反比例します。重さが2倍となると速度は1/2になります。従って、√(1-v2/c2)しか動かなくなったと言うことは、重量が1/√(1-v2/c2)に増加したと言うことになります。静止時の質量をm0とすると、速度vで移動するとその質量は、m=mo/√(1-v2/c2)に増加します。従って、粒子aが速度vで移動すると、それを構成する基本粒子は重くなり、静止時の√(1-v2/c2)しか動けなくなります。
     よって、その基本粒子が結合離反をするには1/√(1-v2/c2)倍の時間を必要とする様になります。従って、粒子aは高速で移動すると、その物質反応の速度が遅くなり、振動回数が減ることになります。相対性理論では、そのことを想定済みだったのです。」

    省三 「私が高速で移動すると、私を構成する粒子は動きにくくなり、結合離反に長い時間が掛る様になります。そうすると、私は静止している時よりもゆっくりと動き思考し年を取る様になります。
     例えて言うならば、私はぜんまいで出来たロボットの様なものです。私の持っている時計も、ぜんまいで出来ています。基本粒子の結合離反に、より時間が掛る様になった状態は、ぜんまいが緩んだのと同じ状態です。私のぜんまいが緩み、ゆっくりとしか動けなくなりました。私の持っている時計も、ぜんまいが緩みゆっくりと時を刻んでいます。私が、ぜんまいの緩んでいない他の人や時計を見ると、それらは速く動いています。あたかも、他の人や時計に流れる時間が、速く経過している様に見えます。しかし、他の人が私を見ると、私の動き方がゆっくりとなっただけであることが分かります」

    CATBIRD 「高速移動により、物質の反応速度が遅くなることは分かった。 μ粒子が高速で移動した為、μ粒子自身の質量が増加し物質反応が遅くなった為に、崩壊のスピードが遅くなって、地上にまで到達したのである。 μ粒子に流れる時間の経過が遅くなったので、地上に到達したのではない。 この上更に、高速移動する物質に流れる時間の経過までもゆっくりとなったとしたら、どうなるであろうか。」

    みどり 「粒子aの振動回数は、30回の半分の15回となります。しかし、これでは経験値とは異なります。」

    省三 「物質が高速で移動しても、宇宙に流れる唯一の時間の経過は変化しません。しかし、高速で移動する物質の反応速度は遅くなるので、自分以外のものを見ると、そこに流れる時の経過が速くなった様に見えます。従って、高速移動により変化するのは、主観的な時間の経過であると言えます。」

    CATBIRD 「この様に考えると、移動する物質には、その移動速度に応じたそれぞれの時間の経過があることを上手に説明出来る。」

    静止系の発見

    みどり「しかし、それでは静止している物質を、特定する必要があります。静止している粒子は、毎秒60回で振動しており、移動速度に応じて振動回数が減少すると言うご説明なのですから。
     物質も光も、粒子から成っています。この宇宙は、何もない空虚な空間の中を、粒子が移動しています。何も無い空間の位置は考えることが出来ません。従って、後に残るのは動き回る粒子のみです。これでは、どの粒子が静止しているのか、特定することは出来ません。
     この粒子が静止しているとすると、あの粒子は移動している。逆に、あの粒子が静止しているとすると、この粒子は移動しているとしか言えなくなります。つまり、物質の運動とは、相対的な位置関係の変化に過ぎず、静止している物質を特定することは出来ないのです。
     この慣性系は静止している、いや移動していると考え方を変えただけで、観測される光の速度が変化してはなりません。従って、全ての慣性系において、光はc[m/s]と観測されなくてはなりません。
     静止している点を示すことが出来ないと、逆に粒子aが静止しており、粒子bが移動しているとも考えることが出来ます。すると、粒子aは毎秒60回振動し、粒子bは毎秒30回振動しなければなりません。しかし、それでは矛盾します。従って、物質の反応速度の変化で説明することは出来ません。」

    双子のパラドックスの問題 CATBIRD「確かに、そうなる。しかし、時間の経過自体が変化すると考えても、同じ矛盾が起こる。
     粒子aが静止しており、粒子bが移動していると考えると、粒子aの時間経過は変わらず毎秒60回振動し、粒子bの時間経過は遅くなり毎秒30回振動することになる。
     このことを、次の場面を使って考えて見よう。
     ここに、双子が居る。20歳の時、一人はパイロットになり、宇宙に飛び立った。光速の√(15)/4の速度で40年間宇宙旅行をして、再び地球に戻って来た。二人は再会した。その時の二人の年齢は何歳か。」

    みどり「光速の√(15)/4の速度で移動すると、時の経過は遅くなります。相対論では、上記の通り、速度vで移動すると、粒子の質量が1/√(1-v2/c2)増加するので、時の経過はt'=t/√(1-v2/c2)と表されます。従って、ロケットの中の時間の経過は、1/4の速さになります。ロケットの中では40×1/4=10年経過しているので、パイロットの年齢は20+10=30歳です。地上に残った方は20+40=60歳です。」

    省三「しかし、静止系が特定出来ないのであれば、逆にロケットは静止していて、地球の方が光速の√(15)/4の速度で40年間移動したとも考えられます。すると、パイロットの年齢は60歳で、地上に残った方の年齢は30歳と言うことになります。」

    CATBIRD「この様に、静止系がないと、時間の遅れの理論は必然的に破綻してしまう。静止系を発見することは、出来ないのであろうか。物質が加速すると、その物質にはGが掛る。これを題材に、物質の速度を特定出来ないか考察して見よう。」

    省三「例えば、粒子aを加速すると、粒子aにはGが掛かります。そして粒子aは、高速で移動する様になります。それを逆に、粒子aは静止していて、粒子bが加速されたと考えると、粒子bの方にGが掛ることになります。
     しかし、考え方を変えただけでは、Gは消えたり生じたりはしません。幾ら考え方を変えても、粒子aにしかGは掛りません。と言う事は、客観的に粒子aが動いたと言うことです。
     この宇宙に、粒子a一粒のみとなったとします。それでも、粒子aには加速に応じたGが掛ります。この宇宙には、もはや他に物質はありません。従って、粒子aは他の物質を基準に動いているとか静止しているとか考えることは出来ません。従って、運動とは、物質と物質との相対的位置関係の変化であるとすることは出来ません。
     そうなると、後に残っているのは空間自体のみです。空間自体を基準として、物質は動いているのか静止しているかを決定する以外にありません。」

    みどり「しかし、空間には何もありません。空間の一点を指で示したとしても、指自体が静止しているとは限りません。指が動いていれば、指し示した空間の一点も移動していることになります。
     この様に、静止している一点を示すことは不可能です。従って、何もない空間の位置を考えることは出来ません。」

    CATBIRD「空間には、本当に何も無いのであろうか。もし、本当に何も無いのであるなら、光の速度は何故299,972.5[q/s](以下c[m/s]と言う)なのであろうか。
     光が粒子であり、何も無い空間を移動すると考えるならば、光がもっとエネルギーを持てば、もっと速く移動する様になるのではないか。」

    省三「空間には、光をc[m/s]で伝える実体があることになります。湖面の波や音が、一定の速度で伝わるのは、水や空気と言ったそれを伝える実体があるからです。波や音は、水や空気の振動です。光も何かが振動しており、それを伝える実体の上を、波として伝わっているのではないですか。そう考えると、その実体を静止系と考えて、それぞれの物質の移動速度を特定することが出来ます。」

    マイケルソンとモーレーの実験

    みどり「その昔、エーテルが、光を伝える実体であると考えられていました。光は、エーテルの中を、振動として伝わるとされていました。エーテルが想定された理由は、次の通りです。
     光源がどの様に移動しても、そこから発せられた光の速度は皆同じc[m/s]です。この宇宙は膨張しています。地球から離れるに従って、膨張するスピードは速くなります。従って、夜空にある星は、様々な速度で地球から遠ざかっています。しかし、それらの星から届く光の速度は、全てc[m/s]です。光速に近いスピードで遠ざかっている星から届いた光は、大変速度が遅く歩いて追い抜けたと言う話を聞いたことがありません。

     光が、エーテルを伝わる波であるとすると、その源の移動速度に関係なく、伝わる速度は一定であることを上手に説明出来ます。例えば、近づいてくる救急車から届くサイレンも、遠ざかる救急車から届くサイレンもその速度は同じ音速です。近づくモーターボートから届く波の速さも、遠ざかるモーターボートから届く波の速さも速度は同じです。波と波との間隔が異なるだけです。

     しかし、移動しながら波や音の速度を観測すると、その速さは変化します。波や音に向かって移動しながら、その速さを観測すると、その速度は速くなります。逆に、波や音と並走しながらその速さを観測すると、その速度は遅くなります。

    マイケルソンとモーレーの実験装置  地球は、太陽の回りを猛スピードで回転しています。従って、進行方向から伝わる光は速く、後方から伝わる光は遅くなるはずです。観測者の進む方向との角度により、光の速度は異なることになります。
     このことを、マイケルソンとモーレーは、鏡を使って2本の光を同じ距離だけ往復させ、確認しようとしました。2本の光の内1本は、進行方向(以下横方向と言う)に往復させ、残る1本は、進行方向とは直角の方向(以下縦方向と言う)へ同じ距離だけ往復させました。

    縦往復する光の相対速度 横往路の光の相対速度 横復路の光の相対速度  この装置は、地球と共に高速v[m/s]で移動しているので、横方向への往復距離は、静止時に比べ1/(1-v2/c2)倍に、縦方向へは1/√(1-v2/c2)倍に伸びます。

       このことを、簡単に説明します。マイケルソンとモーレーの装置の片道をc[m]と仮定します。横方向の往路の光の相対速度は(c-v)[m/s]です。但し、光の相対速度とは、移動する装置から見た光の速度を言います。 従って、それに要する時間は、c/(c-v)秒です。横方向の復路の光の相対速度は(c+v)[m/s]です。従って、それに要する時間は、c/(c+v)秒です。 横方向の往復に要する時間は、c/(c-v)+c/(c+v)=2c2/(c2-v2)秒です。
     今度は、光の絶対速度c[m/s]を使って、光の実際の往復距離を計算します。静止時の往復距離は、c[m/s]で進む光が2秒掛る2c[m]です。速度vで移動する慣性系では、c[m/s]で進む光が2c2/(c2-v2)秒掛る距離が、その横方向の実際の往復距離です。従って、光が往復するのに要する時間を比較すれば、往復距離の変化率を求めることが出来ます。横方向に往復距離は、2c2/(c2-v2)÷2=c2/(c2-v2)=1/(1-v2/c2)倍となっていることが分かります。

     縦方向には、往路も復路も光の相対速度は√(c2-v2)[m/s]です。これは、ピタゴラスの定理を使えば、簡単に計算出来ます。 この定理を使って、上左の図の縦方向の光の相対速度を計算してみて下さい。 従って、縦方向の往復に要する時間は、2c/√(c2-v2)秒です。c[m/s]で進む光が2c/√(c2-v2)秒掛る距離が、その縦方向の実際の往復距離です。よって、縦方向に往復距離は、2c/√(c2-v2)÷2=√(c2)/√(c2-v2)=1/√(1-v2/c2)倍となっています。

     これでは、当然2本の光は同時には戻って来ることは出来ません。マイケルソンとモーレーは、この装置を様々な方向へ向け、何千回もの実験を繰り返しました。
     その結果、当初の予想に反して、どの方向へ装置を向けても、2本の光は同時に戻って来たのです。

       この事実は、どの様に装置が移動しても、光の相対速度は変わらないことを証明しています。上記の計算に使用した光の相対速度は、誤りなのです。 移動する装置から見て、光の横方向の往路も復路も、縦方向の往路も復路も、その相対速度は全てc[m/s]なのです。 従って、全ての方向において、光の往復に要する時間は、2c÷c[m/s]=2秒となり、2本の光は同時に戻って来るのです。

     つまり、光に対面する形で高速移動しながら光を観測しても、逆に、光と並走する形で移動しながら光を観測しても、その光はc[m/s]としか計ることが出来ないのです。これを「光速度不変の原理」と言います。
     エーテル理論では、必然的に光の相対速度は変化します。従って、光を媒介する存在は否定され、光は粒子であると結論されたのです。」

    光速度不変の原理

    省三「静止している人Bと、高速で光と並走している観測者Aとが、同じ1本の光を見ているとします。静止者Bには、光はc[m/s]と観測されます。そして、Bは光と観測者Aとが、1秒間に離れていく速度は、明らかにc[m/s]より小さな値と観測します。それなのに、移動する観測者Aにとって光は、1秒間にc[m]ずつ離れていくと言うのは、明らかに矛盾していると思われます。」

    みどり「高速で光と並走する観測者の時間の経過が、ゆっくりとしたものになるのです。静止者Bの考える1秒間に、光と観測者Aとが離れていく距離は、おっしゃる通りc[m/s]よりも小さな値になります。しかし、高速で移動する観測者Aの時間の経過がゆっくりとなります。移動する観測者Aが1秒と考える間隔は、静止者Bが考える1秒の間隔よりも長くなります。従って、光は移動する観測者Aの考える1秒間にc[m]進むことが出来るのです。」

    省三「それでは、光に対面する形で高速移動しながら、その光の速度を観測したらどうでしょう。1秒間に両者の近づく距離は、c[m]よりも大きな値になります。そして、移動する観測者Aの時間の経過は遅くなるので、その観測者Aが1秒と考える時間に、光はその値よりも更に遠くまで進むことになります。すると、移動する観測者Aには、光の速度はc[m/s]よりも遥かに大きなものとなってしまいます。」

    みどり「光と対面する形で移動する場合、時間の経過は速くなります。静止者Bの1秒間に両者が近づく距離は、確かにc[m]よりも大きな値となります。しかし、光に向かって移動する観測者Aの1秒は静止者Bの1秒よりも小さなものとなります。従って、光は移動する観測者Aの1秒間にc[m]しか進むことは出来ないのです。」

    省三「ちょっと待って下さい。物質は光と並走すると時間の経過が遅れて、光と対面する方向へ移動すると時間の経過は速くなると言われるのですか。もし、光が無かったら、移動する物質に流れる時間の経過は遅くなるのですか、それとも速くなるのですか。」

    みどり「それは・・・。しかし、よく考えると妙ですね。相対性理論における時間の変換式は、上述の通りt'=t/√(1-v2/c2)です。光との角度は関係がありません。従って、物質の速度に応じて、時間の経過が遅れる式となっています。
     これでは、省三の言う通り、観測者Bが光と対面する形で移動しても、観測者Aの時間の経過は、ゆっくりとなります。 そうなると、観測者Aに、光の速度はc[m/s]超と計れます。この式では、光速度は不変ではありません。
     ところが、相対性理論の根幹となっているローレンツ変換での時間の変換式はt'= (t-vx/c2) / √(1-v2/c2)としています。x=ctcosθです。これでは、観測者の進む方向と光の進む方向との角度θによりxの値は違ってくるので、時間の経過も変わってきます。この式なら光速度は不変となります。何故、両者の変換式は違うのでしょう。」

    高速移動する物質の収縮

    CATBIRD「下の図を見て欲しい。中心Oを出発した光がt秒後に到達するPは、(x,y,z)=(ctcosθ,ctsinθ,0)と表わすことが出来る。x=ctcosθなので、ローレンツ変換の時間の変換式は、観測者の進行方向と光との角度θにより変換率が変わって来る。
     つまり、光と並走すると時間の経過は遅くなり、光と対面して移動すると時間の経過は速くなる変換式となっている。 この為に、みどりの言う通り光の相対速度は不変となっている。

     一方、相対性理論の時間の変換式では、光との角度に関係なく、観測者の速度に応じて時間の経過が遅くなる。しかし、これでは、光の相対速度は変化してしまう。

     横方向と縦方向へ往復した2本の光が、同時に戻ってくる様にする為には、光の相対的速度が変わらないと考える以外に、どんな方法があるだろうか。例えば、実験装置自体を縮めてはどうか。」

    省三「そうです。装置自体が、横方向へ√(1-v2/c2)に縮んだとしたらどうでしょう。そうすると、光の往復距離は、横方向には√(1-v2/c2)×1/(1-v2/c2)= 1/√(1-v2/c2)倍となり、縦方向の往復距離と同じとなります。これで、2本の光は同時に戻って来ることが出来ます。」

    みどり「ローレンツは、エーテルに押されて、物質が進行方向へ√(1-v2/c2)に縮むと考えました。これをローレンツ収縮と言います。それで、2本の光は同時に戻って来たのだし、エーテル理論も正しいのだと説明したのです。しかし、ローレンツ収縮の仕組みを理論的に証明することは出来ませんでした。」

    光の定義 省三「観測者の進行方向をX軸とします。そしてZ=0の平面で考えます。光は中心Oを出発し、t秒後にはP(x,y,0)=(ctcosθ,ctsinθ,0)に到達します。
     速度vで移動する観測者には、光は進行方向へは1秒間に(x-vt)[m]進んだと見えます。Y軸方向へはy[m]進んだと見えます。それを数式にすると、x'= x-vt、y'=y、z'=zです。
     しかし、横方向へは物質が√(1-v2/c2)収縮します。これは、c√(1-v2/c2)[m]の物質をc[m]と定義すると言うことになります。これを数式にすると、x'=x/√(1-v2/c2)、y'=y、z'=zです。
     両者を合わせると、空間はx'=(x-vt)/√(1-v2/c2)、y'=y、z'=zとなります。これで、ローレンツ変換における、空間の変換式が出来上がりました。

     空間はこの様に変化します。物質を動かす4つの力の速度は、c[m/s]で変わりません。物質が移動すると、進行方向へは物質を動かす力はゆっくりと伝わります。そうすると、物質変化はゆっくりと進行します。逆に、進行方向とは逆の方向へは、物質を動かす力は速く隣の物質に伝わる様になります。そうすると、物質変化は速く進行する様になります。

     従って、物質が時間を刻む速さは、見かけ上の空間の距離の変化に比例すると言えます。物質間の距離は、(x,y,z)=(ct*cosθ,ct*sinθ,0)を、空間の変換式に代入すれば求めることが出来ます。その結果は、t(c-vcosθ)/{c√(1-v2/c2)}[m]となります。速度vで移動する慣性系では、ct[m]がこの様に変化するのです。従って、物質が時間を刻む速さはt'= t(c-vcosθ)/{c√(1-v2/c2)}となります。X=ct*cosθなので、cosθ= x/ctです。これを、この時間の変換式に代入すると、t'= (t-(vx/c2)) / √(1-v2/c2)となり、ローレンツ変換の時間の変換式を導くことが出来ました。

     これで、光速度不変の意味が分かりました。物質を変化させる電磁力等の伝わる速さは、観測しようとする光の速さと同じなのです。観測しようとする光の速さが1/2になっても、その方向へは、私の肉体を変化させる力の伝わる速さも、1/2となるので、私の時間の経過は2倍のゆっくりとしたものになります。従って、光はc[m/s]と観測されます。逆に、観測しようとする光の速さが3/2となっても、その方向へは、私の肉体を変化させる力の伝わる速さも3/2となり、私の時間の経過は2/3倍と速くなります。従って、光は3c/2×2/3=c[m/s]と観測されます。観測される光速度は常にc[m/s]です。光速度の変換式は常にc'=cです。
     静止系はあるので、光速度が不変である必要はありません。しかし、この仕組みにより、光速度は結果的に不変なのです。」

    みどり「でも、これでは電磁力等は隣の物質に直線的に伝わるとしています。現在では、電磁波が電荷を帯びた物質間を往復することで、電磁力は生ずることが分かっています。物質が変化するスピードは、移動する物質間を電磁波が往復するのに要する時間に比例するはずです。また、高速移動する物質が、横方向へ√(1-v2/c2)縮む仕組みも不明です。」

    CATBIRD「それには、物質を構成する粒子は、お互いに接し合っているのかどうかから考えて見る必要がある。」

    粒子間の距離 省三「物質間には、物質を動かす4つの力が働いています。電磁力は引力と斥力とがあります。他に重力と強い力と弱い力の引力があります。粒子はお互いに、これらの引力と斥力とが釣り合う一定距離を保っています。こうすることで、物質は一定の形を保っています。」

    収縮する仕組み 省三「物質を動かす4つの力は、光速で伝わっています。それらが、物質間を往復することで、引力や斥力が生じます。物質が速度vで移動すると、電磁波等の往復距離は、横方向へは1/(1-v2/c2)倍に、縦方向へは1/√(1-v2/c2)倍になります。」


    収縮した鏡 省三「電磁波等の往復距離が、静止時と同じとなる距離で、引力と斥力とは釣り合います。
     従って、粒子間の距離は、横方向へは(1-v2/c2)に、縦方向へは√(1-v2/c2)に縮むことになります。マイケルソンとモーレーの実験装置が、この比率で収縮したことになります。
     マイケルソンとモーレーの実験において、光は横方向へ(1-v2/c2)×1/(1-v2/c2)=1、縦方向へ√(1-v2/c2)×1/√(1-v2/c2)=1と静止時と同じ距離を往復したこにとなります。これで、2本の光は同時に戻ることが出来ます。

     これでは、ローレンツ収縮は誤りであり、光の相対速度は不変ではないこととなります。」

    みどり「しかし、光速度が不変であることは、次のことからも証明されています。
     電磁力の強さは、電荷を帯びた物質間の距離の2乗に反比例します。距離が2倍となれば、生じる電磁力の強さは1/4となります。  物質間に生じる電磁力の強さは、マックスウェルの方程式で導くことが出来ます。この方程式では真空の誘電率と透磁率を定数としています。この2つは電磁波の速度を決定します。空気中や水中では、電磁力の伝わる速さは遅くなります。物質により、この2つの定数の値が決まっています。
     従って、真空中を物質がどの様な速度で移動したとしても、2つの定数の値は変わらず、移動する物質と電磁波との相対速度は変化しない式になっています。そして、実際に測定しても、移動する物質間に生ずる電磁力の強さは、変化しません。マックスウェルの方程式で導いた通りの強さとなります。
     この事実は、将に、移動する物質と電磁波との相対速度は、一定で変化しないことを意味しています。」

    省三「しかし、速度vで移動すると、物質は横方向へ(1-v2/c2)、縦方向へ√(1-v2/c2)収縮します。移動する地球全体がこの比率で収縮すると、物質間を行き来する電磁波等の往復距離は、横方向へは(1-v2/c2)×1/(1-v2/c2)=1、縦方向へは√(1-v2/c2)×1/√(1-v2/c2)=1となり、静止時と同じ距離となります。これで、電磁波の往復距離が変化しないので、物質間に生じる電磁力も変化しないことを上手に説明することが出来ます。
     ローレンツ収縮では、電磁波の往復距離は、横方向には2c√(1-v2/c2)/(1-v2/c2)= 2c/√(1-v2/c2)[m]、縦方向にも2c/√(1-v2/c2)[m]となります。これでは、移動する物質間に働く電磁力の強さは、1/(1-v2/c2)となってしまします。マイケルソンとモーレーの実験で2本の光が同時に戻ることの説明は出来ても、移動する物質間に働く電磁力の強さが変化しないことを説明することは出来ません。」

    みどり「しかし、光の伝播を媒介するエーテルは矛盾だらけで否定されました。エーテルの海の中を地球が進んでいるとすると、地球がエーテルを掻き分けるので、エーテルに乱れが生じます。すると、光の伝わりにも乱れを生じることとなります。しかし、幾ら観測してもその様な光の乱れは見つかりませんでした。この事実も、光を媒介する存在のないことを証明しています。」

    光を伝える実体

    CATBIRD「物質自体も、その媒体の上を振動として伝わると考えてはどうだろう。光も物質もその媒体の上を振動として伝わる。物質は媒体を掻き分けて進むのではなく、その上を伝わるのでその乱れを引き起こさない。そして、超ひもの振動自体の伝わる速さが光速なので、何物も光速以上で移動することが出来ないのではないか。」

    省三「現在、超ひも理論が最も有力となっています。物質も光も4つの力も、全て超ひもの振動として表わすことが出来ます。超ひもが物質として振動していると物質に見え、振動していないと真空に見えます。従って、真空とは何も無い空虚な空間なのではなく、振動していない超ひもが存在しています。その超ひもが、光をc[m/s]で伝えているのです。」

    みどり「確かに、物質は超ひもの振動として表わすことが出来ます。しかし、物質として振動する超ひもが粒子なのであり、その粒子が空間を移動するのです。そうなると、どの超ひもが静止しているのか分かりません。やはり、静止系を示すことは出来ません。
     前述の通り、静止系を示すことが出来なければ、光速度は不変でなくてはなりません。しかし、省三は、物質が収縮するので2本の光は同時に戻るのであり、光の相対速度は変化するとしています。」

    CATBIRD「超ひもは網の様に結び付いており、それ自体は動かない。そして、その上を物質波や光の波が伝わっていると考えることは出来ないであろうか。物質が移動していると見えるのは、実は物質波が、隣の超ひもへ次々に伝わっている現象である。超ひも自体は、静止していると考えて見てはどうか。静止系を特定出来れば、光速度不変にこだわる必要な無くなる。」

    リングレーザージャイロ装置

    みどり「しかし、【光速度不変の原理】に基づいて、ローレンツ変換は導かれており、今までこのローレンツ変換に反する物理現象は、観測されてはいません。」 リングレーザージャイロ装置 v慣性系に於ける光の速度 省三「だが、現実には、光速度は不変ではありません。ロケットの自動操縦に使うリングレーザージャイロ装置では、光の速度を(c-vcosθ)[m/s]と設定してあります。
     左上の図を見て下さい。この装置は、光ファイバーを輪にして、この中を右回りと左回りに2本の光を走らせるものです。光ファイバーの輪が、右か左に回転移動すると、左回りと右回りの2本の光は、同時には出発点には到達しません。この時間差を計測することにより、ロケットの進行方向が変化したことを知ることが出来ます。
     仮に、光の相対速度が不変であれば、光ファイバーの輪が幾ら左右に回転移動しても、2本の光は同時に戻ります。これでは、ロケットの進行方向の変化を知る事は出来ません。

     ただ、右の図の通り、速度vで移動する観測者にとって、光の相対速度は第二余弦定理により√(c2+v2-2cvcosθ)[m/s]と観測されるはずです。それなのに、現実の光の速度は(c-vcosθ)[m/s]と観測されることが理解出来ません。」

    物質の収縮による空間の変化

    CATBIRD「物質が速度vで移動しながら、前記の様に収縮したならば、物質と共に移動する観測者に、その物質はどの様な形と観測されるであろうか。
     今ここに、半径c[m]の球体の鏡があるとする。その内面は鏡となっている。静止時には、その中心から発した光は、2秒で反射して中心に戻って来る。この球体の鏡がv[m/s]で移動すると、光は何秒で中心に戻ってくるだろうか。」

    みどり「物質が、横方向に(1-v2/c2)、縦方向に√(1-v2/c2)収縮すると、全ての方向への光の往復距離は、静止時と同じになります。つまり、速度vで移動しても、光は常に2秒で戻って来ます。」

    CATBIRD「球体の鏡の中心に居る観測者は、毎秒v[m]移動している。光が2秒で戻って来たと言うことは、観測者の移動前の位置と移動後の位置と光が反射した位置を結ぶ距離は、常に2c[m]であると言うことになる。光の反射位置を結ぶとどの様な形になるだろうか。」

    点線の形 省三「楕円の2つの焦点と、任意の円周上の点を結ぶ長さは常に一定です。それは、楕円となります。」

    みどり「その楕円は、X2/c2+Y2/(c2-v2)=1と表せます。それは、元の球体の鏡X2+Y2=c2を、縦に√(1-v2/c2)収縮した形です。」

    CATBIRD「つまり、移動する観測者は、全ての方向に往復した光が、2秒で戻ってくるその楕円を、半径c[m]の円と定義することになる。」

    みどり「鏡の半径は、縦方向には√(1-v2/c2)[m]なのに、c[m]と観測されます。と言うことは、空間の長さの単位が縦方向には√(1-v2/c2)に縮んだことになります。」

    光の相対速度は(c-vcosθ)[m/s]である

    省三「光の相対速度は√(c2+v2-2cvcosθ)[m/s]ですが、空間が縦方向にこう変化すると、実際に観測される光の速度が変わって来ると思います。」

    CATBIRD「空間が、縦方向へ√(1-v2/c2)収縮すると、観測される光の速度は、√(c2+v2-2cvcosθ)[m/s]から(c-vcosθ)[m/s]に変化する。詳細は、(v慣性系では光が、(c-vcosθ)[m/s]と観測される仕組み)を見て欲しい。」

    省三「そうすれば、リングレーザージャイロ装置で、光の速度が(c-vcosθ)[m/s]と設定されていることと一致します。」

    光行差

    みどり「しかし、ローレンツ変換が正しいことは、光行差からも証明されています。望遠鏡で星を見る時、実際に星のある方向へ望遠鏡を向けても見えないことが知られています。望遠鏡は、地球と共に速度vで移動しています。実際に星のある方向へ、望遠鏡を向けて見ます。すると、星からの光は、移動する望遠鏡の内壁に当たり、覗いている観測者の目には到達出来ません。望遠鏡を、ほんの少し進行方向へ傾けてやれば、星からの光は上手に望遠鏡を通り抜けて観測者に届きます。この傾ける角度を、光行差と呼び、その角度はブラッドリーの方程式で表すことが出来ます。ローレンツ変換を使えば、このブラッドリーの方程式を導くことが出来ます。」

    CATBIRD「ローレンツ変換と真実の変換式とを較べて見よう。まず、真実の変換式を今までの議論から導く。
    速度vで移動する慣性系では、物質の質量が1/√(1-v2/c2)に増加する。すると、時間は1/√(1-v2/c2)が1秒となる。その間に、光はc/√(1-v2/c2)[m]移動する。この距離を、その慣性系ではc[m]と定義する。光は1秒間と考える時間に、c[m]と考える距離を移動するので、その速度はc[m/s]のまま変わらない。これを数式にすると、
    t'=t/√(1-v2/c2
    x'=x/√(1-v2/c2
    y'=y/√(1-v2/c2
    z'=z/√(1-v2/c2
    c'=c 
    となる。
     また、速度v[m/s]で移動する慣性系では、光の相対速度は√(c2+v2-2cvcosθ)[m/s]と観測される。空間は観測者が移動した分、X軸方向にvt[m]短くなっている。時間に変化はない。従って、これを数式にすると、
    t'=t
    x'=x-vt
    y'=y
    z'=z
    c'=√(c2+v2-2cvcosθ)
    となる。
     次に、高速移動により物質が横方向へ(1-v2/c2)、縦方向へ√(1-v2/c2)収縮する為に、空間は縦方向に√(1-v2/c2)となる。電磁波等の往復距離は静止時と同じなので、物質が刻む時の経過は変わらない。光の速度は、√(c2+v2-2cvcosθ)[m/s]から(c-vcosθ)[m/s]に変化する。これを数式で表すと、
    t'=t
    x'=x
    y'=y*√(1-v2/c2)
    z'=z*√(1-v2/c2)
    c'=(c-vcosθ)/√(c2+v2-2cvcosθ)
    となる。この3つを統合すると、
    t' = t/ √(1-v2/c2
    x'=(x-vt)/√(1-v2/c2
    y'= y
    z'= z
    c'=(c-vcosθ)

    となる。これをCATBIRD変換と呼ぶこととする。そして、移動に伴う物質の横方向へ(1-v2/c2)、縦方向へ√(1-v2/c2)の収縮をCATBIRD収縮と呼ぶ。

     一方、ローレンツ変換は、前述したが次の通りである。
    t'= (t-vx/c2) / √(1-v2/c2
    x'=(x-vt)/√(1-v2/c2)
    y'= y
    z'= z
    c'=c
     では、ローレンツ変換とCATBIRD変換とを比べて見よう。両者の時間と光の速度の変換式は異なる。しかし、空間の変換式は同じである。空間の定義がこの様に変わった時に初めて、ブラッドリーの方程式は成立する。
     詳細は、(光行差は第三変換により導くことが出来る)を見て欲しい。従って、ローレンツ変換でも、CATBIRD変換でも、空間の変換式は同一であり、ブラッドリーの方程式を正しく導くことが出来るのである。」  

    ローレンツ変換とCATBIRD変換

    みどり「では、ローレンツ変換は誤りなのですか。」

    CATBIRD「CATBIRD変換は、真実の時間・空間・光速度の変化を表している。しかし、一々、電磁波の速度と物質間の距離の変化を計算して、生じる電磁力の強さを計算するのは無駄である。電磁波の速度と物質間の距離とを不変と仮定して、マックスウェルの方程式を移動する慣性系でもそのまま使用して、生じる電磁力の強さを計算した方が合理的である。これが【光速度不変の要請】である。
     従って、光速度を不変と仮設したローレンツ変換を用いて物理計算をした方が合理的である。CATBIRD変換は真実であるが、物理計算に使用することは困難である。」

    省三「特殊相対性理論は、間違いではないのですか。」

    CATBIRD「いや、【光速度不変の原理】は真実ではないが、今述べた様に、物理計算を可能とする仮設である。この原理に基づいて、特殊相対性理論を導く方法は正しい。」

    省三「今まで、時間や空間が変化するはずはないと考えていました。しかし、この会話で、それらが主観的には変化することが良く分かりました。
     高速移動により、自分が重くなり動きがゆっくりとなるので、自分以外の時間経過が主観的に速くなります。逆に言えば、自分の時間の経過は主観的に遅くなります。
     また、空間の実体である【超ひもの網】の大きさは変わりません。しかし、そのc[m]の長さを、移動する観測者はc[m]と定義するとは限りません。 自分の時間の経過が2倍とゆっくりになれば、実際の2秒を1秒と定義します。その間に光は2c[m]進みます。現在、メートル原器は使われず、1mは光が一定の時間に進む距離で定義されています。 その一定時間が、実際には倍の時間の間隔なので、【超ひもの網】の2mを1mと定義することとなります。すると、1mの物体を0.5mと測定することになります。
     また、移動する物体は、進行方向へ(1-v2/c2)、縦方向へ√(1-v2/c2)収縮します。収縮した物体の長さを、レーザー装置を使って測定して見ます。 測定する物体には、半径c[m]の球体の鏡を使います。レーザー装置はこの球体の中心にあり、球体と共に移動します。レーザー光線を当て反射して戻って来るのに要した時間から、長さを計算します。
     レーザー光線が反射した点を結ぶと、元の球体を縦に√(1-v2/c2)収縮した形となります。横には変わりません。全ての方向へ向かった光は、反射して2秒でレーザー装置に戻って来ます。 従って、進行方向はc[m]の物体をc[m]と測定します。つまり、【超ひもの網】c[m]をc[m]と定義します。しかし、縦方向はc√(1-v2/c2)[m]に収縮した物体を、c[m]と測定します。 従って、「超ひもの網」c√(1-v2/c2)[m]をc[m]と定義するのです。この様に、高速で移動すると、空間の定義つまり【超ひも】の大きさの定義が主観的に変化します。」

    みどり「今まで、高速で移動することにより、時間と空間そのものが変化すると解釈していましたが、それは主観的な変化であることが分かりました。
     移動する物質は、実際には横に(1-v2/c2)、縦に√(1-v2/c2)収縮しています。 しかし、物質を動かす力は、電磁波や重力波が光速で物質間を往復することで生じます。 物質としてのレーザー装置から発した電磁波や重力波が、球体の鏡に到達し折返し戻って来て初めて、レーザー装置に鏡からの電磁力や重力が作用します。 ですから、レーザー装置にとって、この鏡は元の鏡を縦に√(1-v2/c2)収縮した形と考えても良いことになります。
     一々、本当の物質の収縮率と移動速度を計算して、鏡からレーザー装置に届く電磁力や重力の強さを計算するのは、非常に煩雑です。 物体は、縦に√(1-v2/c2)収縮し移動していない、そしてレーザー装置はこの楕円の焦点から焦点へ移動していると仮定して、電磁力や重力の強さを計算した方が合理的です。 この様に、レーザー光線がこの楕円上で反射した時は異なります。しかし、同時に反射したのであり、鏡はこの楕円の形をしていると仮設して物理計算をすれば良いのです。 これが【同時性の相対性】です。」

    CATBIRD「そうだ。真実ではない【同時性の相対性】を仮設して、相対性理論を導く方法は正しい。」

    重力による時間の変化

    みどり「しかし、それでも時間の経過自体が変化するケースがあります。
     重力により時間の経過は遅くなります。GSP衛星は高所を回っており、地球の重力の影響は弱くなっています。従って、地上よりも重力が弱いために、速く時間が経過します。高速移動による時間の遅れと、重力の弱さによる時間の速まりとを差引して、GPS衛星に内臓されている時計の進む速さは設定されています。重力により、時間の経過そのものが変化すると考えられます。」

    CATBIRD「重力が強くなると、物質を構成する粒子の動きはどうなるであろうか。」

    省三「粒子が重くなり、動きにくくなります。すると、粒子の結合離反に要する時間が長くなり、その物質の反応速度が遅くなり、その物質はゆっくりと時間を刻みます。つまり、物質には重力の強さに応じた時間の経過があることになります。」

    CATBIRD「強力な重力により本当に時間の経過が止まってしうとしたら、ブラックホールは完成するであろうか。」

    省三「強力な重力により、星が自分自身に落下しブラックホールが形成されます。その際、客観的に時間そのものが遅くなると考えると、その自分の強力な重力でその星の時間の経過は止まってしまいます。そうなると、ブラックホールの形成も、そこで止まります。
     しかし、現実にはその形成は止まる事なく、ブラックホールは完成されます。自分自身に落下する動き以外には出来なくなるので、物質の結合離反が止まり、その物質はそれ以上反応が進まなくなり、時を刻むのを止めてしまうのです。しかし、落下する動き自体はそのまま続きます。」

    重力による空間の歪み

    重力による空間のゆがみ みどり「しかし、空間自体が変化するケースがあります。重力により空間は歪められます。日食の際、実際には太陽に隠れて見えないはずの星が、地上で観測されました。光には重さがありません。従って、他の物質を引き付ける力もなければ、他の物質に引き寄せられることもありません。よって、光は真っ直ぐに進みます。なのに、太陽の影に隠れている星が地上で見えたのは、光は空間中を真っ直ぐに進んだが、空間そのものが太陽の重力により曲がったので、地上で観測出来たと考える以外にはありません。」

    省三「空間が歪んだとしても、何も変わりません。例えば、上の図が描かれた紙を、くしゃくしゃに丸める様なものです。 幾ら、くしゃくしゃにしても、地球に到達していない光が、地球に到達することはありません。空間が歪んだとしても、物質の因果関係は変わりません。 従って、そこに描かれている登場人物には、空間が歪んでいることを知る術はありません。何故なら、比べるべき歪んでいない空間が無いからです。

    CATBIRD「光には、本当に重さが無いのであろうか。光にはエネルギーがある。一番エネルギーの少ない光で、1秒間に6.62606957×10-34ジュールのエネルギーを有する。これを、重さに直すと7.34172037×10-48gに相当する。
     物質も光も4つの力も、全て超ひもの振動である。物質としての振動が、物質を動かす4つの力としての振動に変化することがある。逆に、4つの力としての振動は、物質としての振動となることもある。つまり、物質がエネルギーに、エネルギーは物質に変換され得る。従って、エネルギーは重さを持ち、重力により進行方向を変えられるし、エネルギーは物質を重力により引き付けることが出来る。」

    省三「光に重さがあれば、何も無理に空間を歪める必要はないですね。」

    慣性質量と重力質量の等価原理

    pisanosyatou みどり「しかし、空間の曲率を使って、正確に物質の落下速度を計算することが出来ます。」
    CATBIRD「では、物質の落下について考えて見よう。物質にはその場に止まろうとする性質と、他の物質に引かれる性質とがある。前者を慣性質量と言い、後者を重力質量と言う。その場に止まろうとする性質は強いが、他の物質には余り引かれない物質や、その場に止まろうとする性質は弱いが、他の物質に強く引かれる物質があれば、両方をピサの斜塔から同時に落とした時、前者はゆっくりと落下し、後者は速く落下する。しかし、実際にはその様なことはなく、全ての物質は同時に落下する。
     この事実は、慣性質量と重力質量の比率が、全ての物質において一定であることを意味している。何故、この比率は一定なのであろうか。」

    省三「全く同じであると言うことは、物質がその場に引き付けられる引力も、他の物質に引き付けられる引力も、同じものであると言えます。」

    みどり「しかし、その物質が元あった場所には、何もありません。何も無い所に引かれることはありません。」

    慣性は自己の重力により生じる CATBIRD「物質がグラビトンを交換し合うことで、重力は生じる。今、2つの粒子aとbとが、グラビトンを交換し合いながら、速度vで移動するとどうなるであろうか。」

    省三「グラビトンはα→β→α→βと動きます。グラビトンを受取った時、反対方向へ粒子は引き付けられると考えると、移動する粒子には、常に反対方向へ引く力が掛かります。これが慣性の正体ですね。」

    CATBIRD「物質の質量が2倍となっても、慣性質量と重力質量とが共に2倍となる。動かそうとする力と動きにくさとが共に2倍となるので、落下速度は同じである。従って、物質の落下速度を計算するには、落下する物質の質量は考えなくても良いこととなる。
     引き付けている相手の物質の質量のみが、落下速度を決定する。一々、慣性質量と重力質量とを計算して、落下速度を求めるのは無駄である。空間自体が相手物質の重力により落下している。そして、落下している様に見える物質は、空間の一定位置を保っているだけであると仮定して、単に空間の落下速度を求めたほうが合理的である。空間の落下速度を微分して空間の曲率を求め、空間の曲率を使って物体の落下速度を求めるのが一番早い。重力により空間が落下するとの思考方法は、慣性質量と重力質量の等価原理と言われている。」

    省三「慣性質量と重力質量が等価であるとは、加速により物体に掛るGと、重力により物体に掛るGとは、同じものであると考えることなのですね。空間が落下しており、物質はその空間の同じ位置を保っているので、落下している様に見えると言うことですね。地上で重力によりGを感じるのは、落下する空間の中で同じ位置を占めようとする物質を、地面が反対方向へ押し加速し続けているので、その物質にGが掛ると考えるのですね。
     しかし、それでは地上にある物質は46億年間加速され続け、現在では光速に近い速度になっていることになります。そうなると、地上にある物質は殆ど、どの方向へも動けないことになります。でも、実際には自由に動かすことが出来ます。」

    CATBIRD「空間が落下すると考えるのは、物体の落下速度を計算する場合に限られるべきである。」

    真実でないが、仮設は必要である

    省三「では、一般相対性理論は誤っているのですか。」

    CATBIRD「いや、【慣性質量と重力質量の等価原理】は真実ではないが、物理計算を可能とする仮設である。 前述の通り、【慣性質量と重力質量の等価原理】を仮設し、空間が重力により落下すると考えた方が、簡潔に物体の落下速度を計算することが出来る。一々。慣性質量と重力質量を計算するのは煩雑でり無駄である。 この原理に基づいて、一般相対性理論を導く方法は正しい。」

    大理石の彫刻の様に美しい みどり「真実ではない原理を3つも仮設して、偉大な相対性理論を導いた方は、将に天才の中の天才です。」

    省三「大変美しい数式ですね。」

    CATBIRD「これは奇蹟である。」

    我に返る

    CATBIRD「私たちは、三人で一人だ。三人でこの様な知的対話を、楽しむことは至福である。しかし、もうそろそろ夕御飯の時間らしい。1階から5歳の息子が私を呼んでいる。では一人に戻って、家族の団欒を楽しもう。」