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水素原子の電子軌道半径の求め方

T.電子の軌道

電子の速度と軌道半径  水素の原子核の周りを電子が回っています。その電子が回る軌道は、半径が決まっています。電子の軌道は第一軌道(n=1)・第二軌道(n=2)・第三軌道(n=3)・・・∞軌道(n=∞)があります。
 では、どうして電子の軌道半径は決まっているのでしょうか。

U.電子に働く遠心力とクーロン力

遠心力とクーロン力  電子は原子核の周りを回ることにより、遠心力を受け外に飛び出そうとします。また、原子核を構成する陽子は+の電荷を帯びており、電子は-の電荷を帯びているので、双方はクーロン力により引き合います。
 その、遠心力とクーロン力が釣り合うには、軌道半径と電子の速度には一定の関係が必要となります。

遠心力F=m×v2/r  {m=質量(単位:s)、v=回転速度(単位:m/s)、r=回転半径(単位:m)}
電磁力F'=k0×e2/r2 {定数k0=8.987600×109Nm2/C2、e=電荷(単位:Cクローン)、r=距離(単位:m)}
です。
 この様に、電子は遠心力F=電磁力F'となる一定距離を回っています。ですから
m×v2/r= k0×e2/r2
です。ですから
m×v2= k0×e2/r、@r=k0*e2/( m*v2)
でなくてはなりません。軌道半径rと電子速度vは、@の関係にあるのです。

V.電子の波長λ

 また、電子は粒子ですが波としての性質も持ちます。その波長λは「ドブロイの物質波の式」で
A電子の波長λ(単位:m)=h/mv {h(プランク定数)=( 6.629069×10-34)Js、m=電子の質量、v=電子の速度}
と表せます。
 ※「ドブロイの物質波の式」の求め方はドブロイの物質波を参照下さい。

W.ボーアの量子条件

ボーアの量子条件  そして、軌道の長さ=n×電子の波長(n=自然数)でなくてはなりません。
 電子は原子核の周りを振動しながら回転しています。そして、一周回って出発点に戻った時、電子が同じ位置に来なければ、一周目と二周目ではコースが異なります。回転する度に異なるコースを通ると、電子波は打ち消し合って消えてしまいます。何度回っても同じコースを通れば、電子波が打ち消し合うことはありません。
 ですから、軌道の長さは、図の様に電子の波長λの整数倍でなければならないのです。これを「ボーアの量子条件」と言います。

X.電子の速度v

 ですから、B電子の軌道の円周は2πrなので、@ABより
電子の軌道の円周=2πr= 2πk0*e2/( m*v2)=電子の波長×n= nh/mv、2πk0*e2/v= nh、故に
Cv=2πk0*e2/nh
が導かれます。
 水素原子は1つの陽子と1つの電子からなります。その電荷を電子素量(1.602176×10-19)Cクーロンと言います。ですから、e=(1.602176×10-19)Cです。上記のとおり、k0=(8.987600×109)Nm2/C2、h(プランク定数)=( 6.629069×10-34)Jsです。
 また、電子の波長=電子の軌道の長さの時n=1です。電子の波長×2=電子の軌道の長さの時n=2です。電子の波長×3=電子の軌道の長さの時n=3です。
 n=1の時、電子は軌道を一周する間に1回波打ちます。n=2の時、電子は軌道を一周する間に2回波打ちます。n=3の時、電子は軌道を一周する間に3回波打ちます。
 では、n=1(第一軌道)における電子の速度を求めます。
Cv=2πk0*e2/nh={2×3.141592×(8.987600×109)×(1.602176×10-19)2}÷{1×( 6.629069×10-34)}= (2.187702×106)m/s
です。これは光の
(2.187702×106)m/s÷(2.997925×108) m/s= 1/137.035290倍です。電子の質量m=(9.109389×10-31)sです。故に、@より
@第一軌道の半径r=k0*e2/( m*v2)= {(8.987600×109)×(1.602176×10-19)2}÷{(9.109389×10-31)×(2.187702×106)2}=(5.291741×10-11)m
です。

Y. kothimaroの水素モデル式

 水素原子の電子軌道を求める@とCを「kothimaroの水素モデル式」と呼びます。(2016/02/23pm19:46)
@軌道半径r=k0e2/( mv2)
C電子速度v=2πk0e2/nh
 第二軌道の半径を求めるにはn=2を、第三軌道の半径を求めるにはn=3を入れます。

Z.各軌道半径と電子速度の関係

 各軌道の半径と電子速度を「kothimaroの水素モデル式」で求めると、下表のとおりになります。
電子速度と軌道半径

[.各軌道の電子のエネルギー

各軌道の電子速度とエネルギー  物質の運動エネルギーT=(mv2)/2であり、電子の質量m=(9.109389×10-31)sです。したがって、各軌道の電子の速度vを使うと、各軌道における電子の運動エネルギーを表のとおり求めることが出来ます。
 例えば、第一軌道の電子の運動エネルギーT=(mv2)/2=(9.109389×10-31)×(21.877029×10^5)2÷2=(217.989679×10-20)Jsとなります。

\.電子が軌道間を移動した際放出される光の波長「リュードベリの式」

水素スペクトル系列
 次に、各軌道間の電子のエネルギーの差を求めます。単純に、
「第一軌道の電子の運動エネルギー」-「第一軌道の電子の運動エネルギー」=(217.989679×10-20)Js-(54.49742×10-20)Js=(163.5×10-20)Jsです。それが水色の部分です。

 電子が第一軌道から第二軌道に移ると、エネルギーを光の形で(163.5×10-20)Js放出します。
 光のエネルギーE=hv (h=プランク定数、v=振動数ヘルツ)、v=E/hです。
 この式を使って、 (163.5×10-20)Jsのエネルギーを持つ光の振動数を計算します。
電子が第一軌道から第二軌道に移った時放出される光の振動数v=E/h=(163.5×10-20)Js÷(6.629069×10^-34)Js=(246.7×1013)Hz
です。それが緑の部分です。

 光は1秒間にcメートル進むので、1秒間に(246.7×1013)回振動する光の波長は、
電子が第一軌道から第二軌道に移った時放出される光の波長λ=c/v=(2.99792458×108)m/s÷(246.7×1013)Hz=(12.2×10-8)m
です。それがピンクの部分です。

 電子が第一軌道から第∞軌道に移動した際放出される光の波長(太枠で囲んだ波長)をaメートルとします。そうすると、各光の波長の比率は黄色のマーカーの部分のとおりとなります。

 ですから、放出される光の波長λは「リュードベリの式」のとおり
1/λ(波長)=R{(1/n'2)-(1/n'2)}

と表せるのです。

   つまり、第一軌道の電子の速度が一番速く、第二軌道に移ると速度は1/2に第三軌道に移ると速度は1/3になります。運動エネルギーは速度の2乗に比例します。
 従って、第一軌道の電子が第二軌道に移ると運動エネルギーは1/4になるので、差の3/4を光として放出するのです。第一軌道の電子が第三軌道に移ると運動エネルギーは1/9になるので、差の8/9を光として放出します。
 第一軌道の電子が第∞軌道に移ると運動エネルギーは0になるので、全ての運動エネルギーを光として放出します。
 光の波長はエネルギーに反比例します。ですから、第一軌道の電子が第二軌道に移ると、第∞軌道に移る時に放出する光の4/3の波長の光を放出します。第一軌道の電子が第三軌道に移ると、第∞軌道に移る時に放出する光の9/8の波長の光を放出します。
 即ち、放出されるエネルギー量は(第一から第二)[ 1/12-1/22]、及び(第一から第三)[1/12-1/32]であり、光の波長はエネルギーに反比例するので、放出される光の波長は第一から第∞に移る時と比べて(第一から第二)1/{1/12-1/22}・(第一から第三)1/{1/12-1/32}の長さとなるのです。