水素の原子核の周りを、電子が回っています。電子の軌道を内側から、n=1,2,3,4,5,6,7,8,9,10・・・∞と付番します。
電子は、外側の軌道n'から内側の軌道nに移る際光を放出します。その光の波長λ[m]は、「リュードベリの式」で次のとおり表わします。(逆に、内側の軌道nから外側の軌道n'に移る際光を吸収します。)
1/λ=R(1/n2‐1/n'2) (R=リュードベリ定数、n=移動前の内側の軌道番号、n'=移動後の外側の軌道番号)
です。
そして、「リュードベリ定数R=(me*e4)/(8ε02*h3*c) (me=電子の質量、e=電気素量、ε0=真空の誘電率、h=プランク定数)」です。
これから、その求め方を説明します。
電子は正弦波としての性質も持ち、原子核の周りを公転する際、自然数回振動します。即ち、軌道1では1回、軌道2では2回、軌道nではn回波打ちます。
電子の波長=λとすると、電子が公転する円周の長さL=nλなので
電子の公転半径r=L/2π= nλ/2π
です。
一方、物質の波長は「ド・ブロイ波長λ=h/mv (h=プランク定数、m=質量、v=速度)」なので
電子の公転半径@r= nλ/2π=nh/(2π*me*v)
です。
電子は、公転による遠心力Fと、原子核の静電気力F'が釣り合う軌道上を公転します。
遠心力F=mv2/r
静電気力F'=(1/4πε0)q1q2/r2 (ε0=真空の誘電率、q1=q2=電荷)
なので
電子に掛かる遠心力F=me*v2/r=(1/4πε0)q1q2/r2=電子に働く静電気力F'=(1/4πε0)e2/r2、Ame*v2=(1/4πε0)e2/r
です。
Aに@を代入すると
Ame*v2=(1/4πε0)e2÷nh/(2π*me*v)=e2*me*v/2ε0*nh、Bv= e2/2 nh*ε0
です。Bを@に代入すると
@r= nh/{2π*me*(e2/2 nh*ε0)}= nh/(2π*me)×(2 nh*ε0/e2)=Cr=n2*h2*ε0/πe2*me
です。
そして
D水素原子の電子の運動エネルギーK=(1/2)me*v2
E水素原子の電子の位置エネルギーU=(1/4πε0)q1q2/r
です。
水素原子は1つの陽子と1つの電子なので、q1=e、q2=-eです。∴
F水素原子の電子の位置エネルギーU=‐(1/4πε0)e2/r
です。
そして、DにBを、FにCを代入すると
G水素原子の内側からn番目の軌道上の電子の運動エネルギーK=(1/2)me*v2=(1/2)me×(e2/2 n*h*ε0)2
H水素原子の内側からn番目の軌道上の電子の位置エネルギーU=‐(1/4πε0)e2÷(n2*h2*ε0/πe2*me)=‐me(e2/2n*h*ε0)2
です。
したがって
G水素原子の内側からn'番目の軌道上の電子の運動エネルギーK=(1/2)me×(e2/2 n'*h*ε0)2
H水素原子の内側からn'番目の軌道上の電子の位置エネルギーU=‐me(e2/2n'*h*ε0)2
です。
ですから、電子は外側の軌道n'から内側の軌道nに移る際
必要とする運動エネルギーK={(1/2)me×(e2/2 n*h*ε0)2}-{(1/2)me×(e2/2 n'*h*ε0)2}=(me*e4)/(8ε02*h2)(1/n2-1/n'2)
位置エネルギーUの変化による運動エネルギーKの増加=‐me(e2/2n'*h*ε0)2‐{‐me(e2/2n*h*ε0)2}=me(e2/2n*h*ε0)2‐me(e2/2n'*h*ε0)2=(me*e4)/(4ε02*h2)(1/n2-1/n'2)
です。
∴余分な運動エネルギーK'=(me*e4)/(4ε02*h2)(1/n2-1/n'2)- (me*e4)/(8ε02*h2)(1/n2-1/n'2)= IE=(me*e4)/(8ε02*h2)(1/n2-1/n'2)
です。
この余分な運動エネルギーK'が光として放出されます。
その放出される光の周波数をf、波長をλとすると
光のエネルギーE=hf、Jf=E/h
光の波長λ=c/f、K1/λ=f/c
なので、JにIを、KにJを代入すると
K1/λ= E/hc=(me*e4)/(8ε02*h2)(1/n2-1/n'2)÷hc=(me*e4)/(8ε02*h3*c) (1/n2-1/n'2)=R (1/n2-1/n'2)
です。
これで、「リュードベリ定数R=(me*e4)/(8ε02*h3*c)」が求まりました。