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静止系を否定する特殊相対性理論は誤っているのか

特権を有する系

 特殊相対性理論では、物質も光も全て粒子であり、空間には何もないと考えます。何もない空間の位置は考えることが出来ません。後に残るのは、動き回る粒子のみです。そうなると、どの粒子が静止しているのか誰にも分かりません。
 従って、特殊相対性理論では、「静止系」と言う特権を有する系はないと考えます。つまり、自分の居る系は静止しているいや移動していると自由に考えることが出来るのです。
 自分の居る系は静止系だ、いや移動系だ、と考え方を変えただけで観測される光の速度が変化してはなりません。従って、特殊相対性理論では、全ての慣性系において「光速度不変」であることが必須となります。これを、「光速度不変の原理」と言います。

 他の物理法則も同様です。考え方を変えただけで、物理の法則の方程式が変わってはなりません。従って、「全ての慣性系において、物理法則は同一の形となる」ことが必須です。これを、「特殊相対性原理」と言います。例えば、高速で並走しながら電荷を帯びた粒子が光子を交換し合っても、生じる電磁力の強さは静止時と同じと観測されるのです。

 特殊相対性理論は、この「光速度不変の原理」と「特殊相対性原理」を基礎として導かれました。その結晶が、次の「ローレンツ変換」です。

ローレンツ変換

 v[m/s]で移動すると、空間と時間の座標が、次の「ローレンツ変換」のとおり変化します。
@x'=(x-vt)/√(1-v2/c2
Ay'= y
Bz'= z
Ct'= (t-vx/c2) / √(1-v2/c2

光速度不変

 高速移動する物質は、横方向(進行方向)に√(1-v2/c2)倍「ローレンツ収縮」します。v慣性系では定規が横に「ローレンツ収縮」するので、距離は1/√(1-v2/c2)倍長く測定されます。その間、観測者自身がvt[m]移動しているので、その分距離は短く測定されます。縦方向(上下左右方向)には変化はありません。従って、@からBまでの空間の座標の変換式が導かれます。

光の座標  そして、光の座標を便宜上下図のとおり平面で、P(x,y,z)=(ct*cosθ,ct*sinθ,0)とします。光は、原点Oを発してt秒後にPの位置に到達します。光が移動した時間はt秒です。
 光の移動した距離は、√(x2,y2,z2)=√{( ct*cosθ)2+( ct*sinθ)2+02}=ct[m]です。従って、静止者が見た光の速度は、ct[m]÷t秒=c[m/s]です。

 今度は、v[m/s]で移動する観測者Aが同じ光を見た時、光速度がc[m/s]で「光速度不変」となる時間の座標の変換式を求めます。
v慣性系で光の進んだ距離√(x'2+y'2+z'2)=√{((t-vx/c2) / √(1-v2/c2))2+( ct*sinθ)2+02}=(c-vcosθ)t/√(1-v2/c2)[m]
なので、「光速度不変」となるためには
光の移動時間Dt'=(c-vcosθ)t/c√(1-v2/c2)
でなければなりません。これで
v慣性系における光の速度=(c-vcosθ)t/√(1-v2/c2)[m]÷(c-vcosθ)t/c√(1-v2/c2)=c[m/s]
となります。
 光のX軸の座標はx=ct*cosθなので、cosθ=x/ctです。これをDに代入すると
Dt'=(c-vcosθ)t/c√(1-v2/c2)= (c-vx/ct)t/c√(1-v2/c2)=C (t-vx/c2) / √(1-v2/c2
です。これで@ABCのとおり「ローレンツ変換」が導かれました。

ヒッグス粒子のプール

 「ローレンツ変換」によれば、v[m/s]で並走する電荷を帯びた粒子から見て、往復する光子の相対速度は常にc[m/s]なので、全ての慣性系で光子は同じ時間で粒子間を往復します。従って、全ての慣性系で生じる電磁気力の強さは同じとなるのです。

 ところで、少し前にヒッグス粒子が発見され話題になりました。空間は何もない入れ物ではなく、そこにはヒッグス場があります。物質がヒッグス場上を移動すると、ヒッグス粒子が生じ物質にまとわり付きます。その為に、物質は動き難くなり質量を与えられます。
 即ち、この「ヒッグス粒子のプール」が静止系です。物質が「ヒッグス粒子のプール」の中を移動すると質量が与えられ、その中で加速するとGが掛かるからです。

 物質は、この静止系の中を移動します。そして、粒子は光速に近づく程加速し難くなります。例えば、v[m/s]で移動する粒子を、進行方向(横方向)に向かって上下左右方向(縦方向)へ動かします。その方向へ動かせる限度は√(c2-v2)[m/s]までです。この時、粒子の速度はc[m/s]とMAXになります。これ以上粒子が、上下左右方向へ動けば、その速度は光速を超えてしまいます。
 静止時には、その方向へはc[m/s]まで動かすことが出来ました。従って、v慣性系では、静止時の√(c2-v2)[m/s]÷c[m/s]=√(1-v2/c2)倍しか動かせません。

kothimaro変換

 高速移動する時計は、静止時に比べて√(1-v2/c2)倍しか動かないので、この時計は1秒間に√(1-v2/c2)秒を刻む様になります。従って、時間の座標の変換式は
Et'=t√(1-v2/c2)
です。ならば、
v慣性系における真実の光速度c' =v慣性系の光の移動距離÷v慣性系の光の移動時間=(c-vcosθ)t/√(1-v2/c2)[m]÷t√(1-v2/c2)= F(c-vcosθ)/(1-v2/c2)
です。まとめると
@x'=(x-vt)/√(1-v2/c2
Ay'= y
Bz'= z
Et'=t√(1-v2/c2)
Fc'=(c-vcosθ)/(1-v2/c2)
です。これを「kothimaro変換」と呼びます。

特殊相対性原理

 では、「kothimaro変換」で、全ての慣性系で生じる電磁力の強さが同じとなることを説明します。
 c[m]離れた粒子がv[m/s]で並走しながら光子を交換すると、往復距離は横2c/(1-v2/c2)[m]・縦2c/√(1-v2/c2)[m]となります。しかし、v[m/s]で移動する地球自体が横に「ローレンツ収縮」するので、光子の往復距離は横2c√(1-v2/c2)/(1-v2/c2)=2c/√(1-v2/c2)[m]・縦2c/√(1-v2/c2)[m]となります。この仕組みにより、「マイケルソンとモーレーの実験」では、縦往復した光と横往復した光は同時に戻ったのです。

 静止時には、光子は横も縦も2秒で往復します。v慣性系では横も縦も2/√(1-v2/c2)秒で光子は往復します。ただし、Eのとおり、v慣性系の時計は2/√(1-v2/c2)秒間に2秒を刻むので、v慣性系でも静止時とおなじ2秒で光子は往復すると観測されます。この仕組みにより、v慣性系でも生じる電磁力の強さは静止時と同じとなります。

偉大な発明

 光子がv[m/s]で並走する粒子間を往復すると、「kothimaro変換」のとおり当然往路と復路の光速度は異なります。しかし、往復すると上記のとおり「光速度は不変」となります。生じる電磁気力の強さは、光子の往復時間の2乗に反比例するのですから、「kothimaro変換」を使って一々往路と復路の光速度よりそれぞれの所要時間を求め足して電磁力の強さを求めるのは無駄です。
 どうせ同じなら、「ローレンツ変換」のとおり往路も復路も「光速度不変」と仮設した方が計算に便利です。
 この様に「ローレンツ変換」は物理計算を簡便にした偉大な発明です。決して、誤っている訳ではありません。