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ローレンツ変換しても距離=速度×時間となる

T.ローレンツ変換とは

 ローレンツ変換は次の通りです。
@x'=(x-vt)/√(1-v2/c2
Ay'= y
Bz'= z
Ct'= (t-vx/c2) / √(1-v2/c2

U.ローレンツ変換で、光の進んだ距離と時間はどう変換されるか

 この方程式は、v[m/s]で移動した時の、時間と空間の変換を表しています。
光の座標  静止系における光の座標を便宜上平面で、P(x,y,z)=D(ctcosθ,ctsinθ,0)とします。光は、原点Oを発して1[s]後にPの位置に到達します。光が移動した時間はt[s]です。光の移動した距離は、√(x2,y2,z2)=√{( ctcosθ)2+( ctsinθ)2+02}=ct[m]です。従って、静止者が見た光の速度は、ct[m]÷t[s]=c[m/s]です。

 今度は、v[m/s]で移動する観測者Aが同じ光を見ると、その速度は幾らと観測されるでしょうか。ローレンツ変換によると、光の進んだ時間t[s]は、v慣性系ではCの通り変換されます。DよりEx=ctcosθです。従って、EをCに代入すると
v慣性系で光の進んだ時間Ct'= (t-vx/c2) / √(1-v2/c2)=(c-vcosθ)t/c√(1-v2/c2)[s]
に変換されます。

 また、光の進んだ距離√(x2,y2,z2)は、v慣性系ではF√(x'2+y'2+z'2)に変換されます。これにDを代入すると、
v慣性系で光の進んだ距離F√(x'2+y'2+z'2)=√{((t-vx/c2) / √(1-v2/c2))2+( ctsinθ)2+02}=(c-vcosθ)t/√(1-v2/c2)[m]
に変換されます。
 従って、v[m/s]で移動する観測者Aから見た光の速度は、(c-vcosθ)t/√(1-v2/c2)[m]÷(c-vcosθ)t/c√(1-v2/c2)[s]=c[m/s]となります。これで、観測者の移動速度vの値にかかわらず、光速度は常に静止系と同じc[m/s]となります。これを「光速度不変の原理」と言います。
 この様に、ローレンツ変換では、時間と空間は光速度が常にc[m/s]になる様に連動して変換されます。

V.アインシュタイン博士自身による解説

 この速度=距離÷時間の計算を否定される方が居られます。その為に、アインシュタイン博士がローレンツ変換をどの様に考えられていたかを検証したいと思います。以下では、アインシュタイン博士自身が書かれた『特殊及び一般相対性理論について』を引用します。
光信号
x'=(x-vt)/√(1-v2/c2) ・・・・(第1式)
y'= y・・・・・・・・・・・・・・・・(第2式)
z'= z・・・・・・・・・・・・・・・・(第3式)
t'= (t-vx/c2) / √(1-v2/c2)・・(第4式)
 これらの方程式群は<ローレンツ変換>と呼ばれている。
 ローレンツ変換によれば、真空中の光の伝播法則は、基準体Kについても基準体K'についても同じように満足される。このことを知るには、次の例を見ると好都合である。ある光信号(赤の矢印)がX軸の正方向に送られている。この光は方程式「 x=ct」 に従って、即ち速度cで伝わる。ローレンツ変換の第1式と第4式にx=ctを代入すると
x'=(c-v)t/√(1-v2/c2)
t'=(1-v/c)t/√(1-v2/c2)
となる。x'÷t'=cによって、 「x'=ct'」 が出てくる。この式から、座標系K'を基準とする時の光の伝播が得られる。この式より、基準体K'から見た光の相対的な伝播速度もやはりcであることが分かる。他の任意の方向に伝播する光についても同様である。
<以上です。

W.注釈

 ここからは、私が解説します。アインシュタイン博士は、便宜上、光の座標をP(x,y,z)=G(ct,0,0)と1次元で表現されています。静止者Kから見ると、光はx=ctです。xは光の進んだ距離であり、tは光の進んだ時間です。従って、Kから見ると光の速度は、x[m]÷t[s]=ct[m]÷t[s]=c[m/s]です。
 では、v[m/s]で移動する観測者K'から見ると、光の速度は幾らに見えるでしょうか。K'から見た光の進んだ距離は、ローレンツ変換の第1式にx=ctを代入すると、
x'=(c-v)t/√(1-v2/c2)[m]
であることが分かります。また、K'から見た光の進んだ時間は、ローレンツ変換の第4式にx=ctを代入すると、t'=(1-v/c)t/√(1-v2/c2)[s]
であることが分かります。
 従って、K'から見た光の速度は、
光の進んだ距離÷光の進んだ時間=(c-v)t/√(1-v2/c2)[m]÷(1-v/c)t/√(1-v2/c2)[s]=c[m/s]
なので、やはり、その速度はc[m/s]と測定されます。このことは、光がX軸の正方向へ向かう時に限られず、全ての方向へ向かう場合も同様に、光はc[m/s]と測定されます。この様に、アインシュタイン博士は述べられています。

 2次元で考えた場合、光の座標は、上記で示した通りP(x,y,z)=D(ctcosθ,ctsinθ,0)です。私は、最初の説明で、アインシュタイン博士が1次元で説明されたことを2次元で説明しただけです。Gの代わりにDを使い、同様の説明を行いました。

X.距離=速度×時間が成立する

 ローレンツ変換の第4式は、静止系のt[s]はv慣性系ではt'[s]となることを表現しています。第1式・第2式・第3式は、静止系のx[m]・y[m]・z[m]はv慣性系では、x'[m]・y'[m]・z'[m]となることを示しています。従って、静止系で見た光の進んだ距離√(x2,y2,z2)[m]は、v慣性系では√(x'2+y'2+z'2)[m]となります。
 速度=距離÷時間です。従って、v[m/s]で移動する観測者K'が光を見ると、光の相対速度は√(x'2+y'2+z'2)[m]÷t'[s]=c[m/s]となると、アインシュタイン博士は明快に述べられています。

 観測者と光源との相対速度をv[m/s]とします。その時、空間と時間の座標は、次のローレンツ変換の通り変換されます。
@x'=(x-vt)/√(1-v2/c2
Ay'= y
Bz'= z
Ct'= (t-vx/c2) / √(1-v2/c2
下図に基づいて説明します。
ローレンツ変換  この方程式は、v[m/s]で移動した時の、時間と空間の変換を表しています。
 静止系における光の座標を便宜上平面で、P(x,y,z)=D(ctcosθ,ctsinθ,0)とします。光は、原点Oを発して1[s]後にPの位置に到達します。光が移動した時間はt[s]です。光の移動した距離は、√(x2,y2,z2)=√{( ctcosθ)2+( ctsinθ)2+02}=ct[m]です。従って、静止者が見た光の速度は、ct[m]÷t[s]=c[m/s]です。
 今度は、v[m/s]で移動する観測者Aが同じ光を見ると、その速度は幾らと観測されるでしょうか。ローレンツ変換によると、光の進んだ時間t[s]は、v慣性系ではCの通り変換されます。DよりEx=ctcosθです。従って、EをCに代入すると
v慣性系で光の進んだ時間Ct'= (t-vx/c2) / √(1-v2/c2)=(c-vcosθ)t/c√(1-v2/c2)[s]
に変換されます。
 また、光の進んだ距離√(x2,y2,z2)は、v慣性系ではF√(x'2+y'2+z'2)に変換されます。これにDを代入すると、
v慣性系で光の進んだ距離F√(x'2+y'2+z'2)=√{((t-vx/c2) / √(1-v2/c2))2+( ctsinθ)2+02}=(c-vcosθ)t/√(1-v2/c2)[m]
に変換されます。

 従って、v[m/s]で移動する観測者Aから見た光の速度は、(c-vcosθ)t/√(1-v2/c2)[m]÷(c-vcosθ)t/c√(1-v2/c2)[s]=c[m/s]となります。これで、観測者の移動速度vの値にかかわらず、光速度は常に静止系と同じc[m/s]となります。これを「光速度不変の原理」と言います。
 この様に、ローレンツ変換では、時間と空間は光速度が常にc[m/s]になる様に連動して変換されます。

光のドップラー効果

 この様に、観測者と光源の相対速度がv[m/s]である時、光の進んだ距離は静止者が見た場合ct[m]ですが、観測者が見た場合、F=(c-vcosθ)t/√(1-v2/c2)[m]と観測されます。即ち、光の波の山から山までの距離(波長)は、(c-vcosθ)t/√(1-v2/c2)[m]÷ct[m]=(1-vcosθ/c)/√(1-v2/c2)倍と観測されます。
 振動数×波長=光速が成立します。光速度は不変なので、波長が(1-vcosθ/c)/√(1-v2/c2)倍となれば、振動数は√(1-v2/c2)/ (1-(v/c)cosθ)倍となります。即ち、振動数は
ν'=ν×√(1-v2/c2)/ (1-(v/c)cosθ)
となります。