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ローレンツ変換の考え方

マイケルソンとモーレーの実験

 ローレンツの思考過程を辿りながら、ローレンツ変換の意味を考えて行きましょう。

マイケルソンとモーレーの実験装置  ローレンツは、マイケルソンとモーレー(以下、MMと呼ぶ)の実験結果を説明出来る理論の構築を試みました。MMは、鏡で光を地球の進行方向(横方向)と上下左右方向(縦方向)に、片道11[m]の距離を往復させました。計算上、横往復した光は22/(1-v2/c2)[m]・縦往復した光は22/√(1-v2/c2)[m]進むことになります。しかし、縦と横に往復した2本の光は、予想に反して同時に戻って来たのです。
 この結果を説明するには、装置自体が、横方向へ√(1-v2/c2)倍収縮したと考える以外にありません。これで、光は縦往復も横往復も22/√(1-v2/c2)[m]進むので、同時に戻れます。この物質の収縮を「ローレンツ収縮」と言います。

移動系における電磁力の強さ

 一方、電磁気力は、電荷を帯びた物質間を電磁波(光の一種)が往復することで生じます。粒子がv[m/s]で並走しながらお互いに電磁波を交換し合うと、上記の通り、電磁波の往復距離は横1/(1-v2/c2)倍・縦1/√(1-v2/c2)倍に伸びます。従って、生じる電磁気力の強さは、物質間の距離の2乗に反比例するので、電磁波の往復距離が伸びると、生じる電磁気力の強さは弱まりそうです。

 しかし、マックスウェルの方程式は、移動しても生じる電磁気力の強さは変わらないとしています。そして、現実に変わりません。地球は自転し公転し複雑に加減速しています。ところが、地球の移動速度が変化しても、地上の磁石の強さは変わりません。
 つまり、v慣性系でも電磁波は静止時と同じ時間で物質間を往復しなければならないのです。つまり、移動しながら光を見ても、静止時と同じ速度と見えなければなりません。そうすれば、v慣性系でも、生じる電磁気力の強さは静止時と同じとなれます。これを「光速度不変の原理」と言います。

 つまり、v慣性系では、物質である定規が横に√(1-v2/c2)倍収縮するので、測定される距離は、逆に1/√(1-v2/c2)倍長くなります。そして、v慣性系の光の速度は静止時と同じc[m/s]でなくてはなりません。ローレンツは、この2つの条件を満たす為に、v[m/s]で移動する時計は1秒間に何秒を刻まなければならないかを考えました。

光速度不変の原理

光の相対速度  左図に基づいて説明します。今、光が1秒間にOP進みました。観測者AはOQ進みました。Aに、光はQP進んだと見えます。Aにとって、QPは何[m]でしょうか。ピタゴラスの定理より、QP=√(QR2+PR2)です。

 しかし、Aの持っている定規は、進行方向に√(1-v2/c2)倍収縮します。従って、本来は(ct*cosθ-vt)[m]であるQRの長さを、(ct*cosθ-vt)/√(1-v2/c2)[m]と測ります。

 従って、Aは、QP=√{((ct*cosθ-vt)/√(1-v2/c2))2+(ct*sinθ)2}=(c-v*cosθ)t/√(1-v2/c2)[m]と測ります。

ローレンツ変換

 上記の通り、Aから見たQPと進む光の速度はc[m/s]です。ここで、ローレンツは考えました。(c-v*cosθ)t/√(1-v2/c2)[m]を何秒で進めばc[m/s]となるでしょうか。
 答えは、(c-v*cosθ)t/c√(1-v2/c2)秒です。これで、Aから見た光速度は、(c-vcosθ)t/√(1-v2/c2)[m]÷(c-v*cosθ)t/c√(1-v2/c2)秒=c[m/s]となります。
 この様に、光速度が不変となる為には、Aの持っている時計は、t秒間に(c-v*cosθ)t/c√(1-v2/c2)秒を刻まなくてはなりません。従って、時間の変換式は
@t'=(c-v*cosθ)t/c√(1-v2/c2)
です。距離の変換式は、
Ax'=(ct*cosθ-vt)/√(1-v2/c2)
By'=y
Cz'=z
です。

 つまり、静止者の見た光OP=(x,y,z)=(ct*cosθ, ct*sinθ,0)を、v慣性系のAが見るとOP=(x',y',z')=( (ct*cosθ-vt)/√(1-v2/c2), ct*sinθ,0)と見えるのです。Dct*cosθ=xです。DをAに代入すると、
Fx'=(x-vt)/√(1-v2/c2)
DよりEcosθ=x/ctです。Eを@に代入すると
Gt'= (c-v* x/ct)t/c√(1-v2/c2)= (t-v*x/c2)/√(1-v2/c2)
となります。つまり、
Gt'= (t-v*x/c2)/√(1-v2/c2)
Fx'=(x-vt)/√(1-v2/c2)
By'=y
Cz'=z
とローレンツ変換となります。

 この様に、H√(x'2+y'2+z'2)は距離の変化を、t'は時間の変化を表します。光=(x,y,z)=(ct*cosθ, ct*sinθ,0)をHに代入するとHは光の進んだ距離を表し、t'は光の進んだ時間を表します。光速度は常にc[m/s]です。従って、H光の進んだ距離÷t'=c[m/s]の関係が成立するのです。
 この思考過程から、ローレンツ変換は導出されたのです。
 しかし、現実にはIt'=t*√(1-v2/c2)であることが実証されました。