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ローレンツ変換では何が収縮するのか

v慣性系において定規で距離を測定する

 高速で移動すると、物質である定規がローレンツ収縮します。長さ10光年の定規を想定します。0.8cで移動する宇宙船この定規を持ち込むと、定規は進行方向へ√(1-v2/c2)倍収縮し、10√(1-v2/c2)光年の長さとなります。この定規で地球から星までの距離を測ると、10/√(1-v2/c2)光年=10/0.6光年=50/3光年の長さとなります。

レーザー装置で距離を測定する

 また、距離を測定する方法には、定規で測る方法以外に、レーザー光線を対象物に当て反射して戻って来るまでの時間を測定して計算する方法があります。対象物までの距離=光の往復に掛かった時間×c[m/s]÷2です。
 結論から言えば、v慣性系では、レーザー光線を使って距離を測定しても、10光年の距離は10/√(1-v2/c2)光年=10/0.6光年=50/3光年の長さとなるのです。
 左図を見て下さい。今、AとBの宇宙船を想定します。AとBはc[m]離れており、v[m/s]で並走しています。BがAとの距離を、レーザー光線を使って測定します。往路の光の速度は(c-v)[m/s]です。従って、レーザー光線がAに当たるのは、c/(c-v)秒後です。復路の光の速度は(c+v)[m/s]です。従って、Aに反射したレーザー光線がBに戻って来るのは、反射してからc/(c+v)秒後です。故に、レーザー光線がBを発射して再びBに戻って来るのに要する時間は、c/(c-v)秒+c/(c+v)秒=2c2/(c2-v2)秒=2/(1-v2/c2)秒です。

 しかし、v[m/s]で移動する時計は、1秒間に√(1-v2/c2)秒を刻みます。この時計の遅れは、GPS衛星で実証済みです。ですから、v[m/s]で移動するBには、レーザー光線は2/(1-v2/c2)秒×√(1-v2/c2)=2/√(1-v2/c2)秒で戻って来たと測定されます。従って、
AB間の距離=2/√(1-v2/c2)秒×c[m/s]÷2=c/√(1-v2/c2)[m]
と計算されます。
 この通り、v[m/s]で進む観測者には、c[m]がc/√(1-v2/c2)[m]に伸びます。つまり、距離の座標は、進行方向へは1/√(1-v2/c2)倍となるのです。ですから、v慣性系では10光年の距離は10/0.6光年=50/3光年と定義されます。

v慣性系の距離の変化

 この様に、v慣性系では、距離を定規で測っても、レーザー装置で測っても、進行方向に1/√(1-v2/c2)倍長く測れます。
 ローレンツ変換の進行方向の距離の変換式は
x'=(x-vt)/√(1-v2/c2)
です。この式から分かる通り、距離は1/√(1-v2/c2)倍長くなります。また、観測者自身がvt[m]移動するので、その分短く測定されます。

宇宙船から見た光の速度

 宇宙船に乗っている観測者は、光を見ているのです。地球から見ると、光は10年間で10光年を進み星に到達しました。x=10光年です。vtはその間に宇宙船が移動した距離です。従って、vt=8光年です。従って、光が星に到達した時、光は宇宙船の前方2光年の位置にあります。しかし、その2光年の距離は、宇宙船の中の観測者には、2/√(1-v2/c2)光年=2/0.6光年=10/3光年先と測れます。

 ローレンツ変換の時間の変換式は
t'=(t-vx/c2)/√(1-v2/c2)です。x=光の進んだ距離=ct=10光年です。v=0.8cです。∴t'=0.2t/0.6=10t/3となります。従って、10年は宇宙船の中では10/3年となります。
 光は、宇宙船の中の観測者には、宇宙船の位置から発して、10/3年間で10/3光年前方へ進んだ様に見えます。従って、宇宙船の中の観測者には、光の速度=c[m/s]と測定されます。地球から見ると、光は地球を発して星に到達したと見えます。しかし、宇宙船から見ると、光は宇宙船の位置から発して0.8cで向かってくる星に到達したと見えます。

ローレンツ収縮は物質の収縮である

 ローレンツ収縮については、アインシュタイン博士自身が書かれた『特殊及び一般相対性理論について』では次のように記述されていますので、参考になさって下さい。
>座標系K'のX'軸に沿って、メートル棒を始点がx'=0に、終点がx'=1となる様に置く。では、座標系Kにおいて相対的なメートル棒の長さはどれほどになるか。これを知るには、座標系Kにおける測量棒の始点と終点の位置を問いさえすればよい。・・・この2点間の距離は√(1-v2/c2)mである。従って、速度vで動く剛体のメートル棒の長さは、移動方向には√(1-v2/c2)mとなることが分かる。それゆえ、運動する剛体棒は同じ静止状態にある時の棒よりも短くなり、運動が速くなるほどそれだけ短くなるのである。<
以上です。
 ※メートル棒=測量棒=剛体棒=私の言う「物質である定規」です。