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「力学的エネルギー保存則」の速度は惑星の落下速度であり公転速度ではない

T.法則の速度vは落下速度vである

 惑星の「力学的エネルギー保存の法則」は
運動エネルギーK=(1/2)mv2
位置エネルギーU=-GMm/r (m=惑星の質量・v=惑星の速度・G=万有引力定数・M=太陽の質量)
力学的エネルギー=K+U=(1/2)mv2+(-GMm/r)=k(一定)
です。
 この速度vは、惑星が太陽に落下し又は飛び出す速度vです。惑星の公転速度vではありません。

位置エネルギーと落下速度  それを、今から検証します。  今惑星が、太陽からr離れた地点@に静止しています。この惑星が、太陽の重力により(1/2)r地点のA、(1/3)r地点のB、(1/4)r地点のCに落下しました。@ABC地点それぞれの惑星の力学的エネルギーK+Uは等しいのです。
 では、Aの地点の惑星の落下速度を求めます。
@地点の惑星の運動エネルギーK=(1/2)mv2=(1/2)m02=0
@地点の惑星の位置エネルギーU=-GMm/r
@地点の惑星の力学的エネルギーK+U=-GMm/r
です。そして
A地点の惑星の位置エネルギーU'=-GMm/(r/2)=-2GMm/r
です。そして
@地点とA地点の位置エネルギー差=-GMm/r-(-2GMm/r)= GMm/r
です。この差の位置エネルギーが、太陽の重力により落下運動エネルギーに変わったのですから
A地点の落下運動エネルギーK'=(1/2)mv'2=0+ GMm/r、v'2= 2GM/r、∴v'=√(2GM/r)
です。これで
A地点の力学的エネルギー=K'+U'=(1/2)m{√(2GM/r)}2+(-2GMm/r)= GMm/r-2GMm/r=-GMm/r
です。従って、@地点の力学的エネルギー=A地点の力学的エネルギーです。

 次はBの地点です。
B地点の惑星の位置エネルギーU'=-GMm/(r/3)=-3GMm/r
です。そして
@地点とB地点の位置エネルギーの差=-GMm/r-(-3GMm/r)= 2GMm/r
です。この差の位置エネルギーが、太陽の重力により落下運動エネルギーに変わったのですから
B地点の落下運動エネルギーK'=(1/2)mv'2=0+2 GMm/r、v'2= 4GM/r、∴v'=2√(GM/r)
です。これで
B地点の力学的エネルギー=K'+U'=(1/2)m{2√(GM/r)}2+(-3GMm/r)= 2GMm/r-3GMm/r=-GMm/r
です。従って、@地点の力学的エネルギー=B地点の力学的エネルギーです。

 次はCの地点です。
C地点の惑星の位置エネルギーU'=-GMm/(r/4)=-4GMm/r
です。そして
@地点とC地点の位置エネルギーの差=-GMm/r-(-4GMm/r)= 3GMm/r
です。この差の位置エネルギーが、太陽の重力により落下運動エネルギーに変わったのですから
C地点の落下運動エネルギーK'=(1/2)mv'2=0+3GMm/r、v'2= 6GM/r、∴v'=√(6GM/r)
です。これで
C地点の力学的エネルギー=K'+U'=(1/2)m{√(6GM/r)}2+(-4GMm/r)= 3GMm/r-4GMm/r=-GMm/r
です。従って、@地点の力学的エネルギー=C地点の力学的エネルギーです。

 これで、落下運動エネルギーと位置エネルギーの関係が分かりました。
 逆に、A地点から放り上げ@地点で惑星が頂点に来るには、初速度v'=√(2GM/r)が必要です。これで
A地点の力学的エネルギー=(1/2)mv2+(-2GMm/r)= (1/2)m(√(2GM/r))2+(-2GMm/r)= GMm/r-2GMm/r=-GMm/r=(1/2)m02-GMm/r
となります。これから、A地点から初速度√(2GM/r)で放り上げると、太陽からr離れた@の位置で上昇速度は0となることが分かります。B地点、C地点も同様に計算出来ます。

U.第二宇宙速度

位置エネルギーと第二宇宙速度

 では、力学的エネルギー保存の法則を使って、地球の重力を振り切って無限遠に飛び去るのに必要なロケットの初速度を求めましょう。
 地球の半径をR・ロケットの初速度をv0・無限遠をr・無限遠におけるロケットが地球から離れる速度をvとします。すると
(1/2)m*v02+(-GMm/R)=(1/2)mv2+(-GMm/r)
です。V=0、r=∞なので
(1/2)m*v02+(-GMm/R)=(1/2)m02+(-GMm/∞)=0+0=0
です。したがって
(1/2)m*v02= GMm/R、v02=2GM/R、v0=√(2GM/R)=√(2×6.67408×10-11×5.972×1024÷6.378×106)= 1.117965×104[m/s]≒11[q/s]
です。このロケットの初速度11[q/s]を、第二宇宙速度と言います。地表から第二宇宙速度でロケットを打ち上げると、地球の重力を振り切って無限遠に飛び去ります。

 この様に、万有引力により落下し生じる落下運動エネルギーを、落下する前の位置に加算したのが位置エネルギーです。ですから、@からAに落下すると、その位置エネルギーの差だけ落下運動エネルギーが増え、落下速度が上がるのです。

 逆に、万有引力に逆らって打ち上げるには、位置エネルギーの差に相当する運動エネルギーを、そのロケットに加えなければなりません。

 したがって、力学的エネルギー保存則とは、太陽からの位置rと落下運動速度vの関係を、つまり位置エネルギーUと落下運動エネルギーKの合計が一定になることを意味します。

ロケットのコース  実際には、ロケットは地球の自転速度を利用して自転方向へ発射します。しかし、vはロケットが地球から離れて行く速度です。

V.法則の速度は公転速度vではない

位置エネルギーと公転速度

 この関係を、惑星の公転速度vに適用してはいけません。それを、今から検証します
 惑星が、太陽からrの位置@で速度vで公転しています。この惑星を太陽からr/2の位置Aに、r/3の位置Bに、r/4の位置Cに置きます。すると、角運動量保存の法則「a=mvr」により、Aの位置では2vで、Bの位置では3vで、Cの位置では4vで公転します。

@の位置エネルギーU=-GMm/r、Aの位置エネルギーU=-2GMm/r、Bの位置エネルギーU=-3GMm/r、Cの位置エネルギーU=-4GMm/r
です。故に惑星の公転運動vにも、力学的エネルギー保存則の適用があるとすると
Aの位置では、(1/2)m(2v)2=(1/2)mv2+GMm/r、2mv2=(1/2)mv2+GMm/r、(3/2)mv2= GMm/r、v2=(2/3) GM/r、v=√{(2/3) GM/r }
Bの位置では、(1/2)m(3v)2=(1/2)mv2+2GMm/r、(9/2)mv2=(1/2)mv2+2GMm/r、4mv2= 2GMm/r、v2=(1/2) GM/r、v=√{(1/2) GM/r }
Cの位置では、(1/2)m(4v)2=(1/2)mv2+3GMm/r、(16/2)mv2=(1/2)mv2+3GMm/r、(15/2)mv2=3GMm/r、v2=(2/5) GM/r、v=√{(2/5) GM/r }
となります。

 この様に、@の位置の公転速度vは同じですが、惑星の公転運動vにも力学的エネルギー保存則の適用があると考えると、それぞれのケースでvの値が異なってしまいます。つまり、矛盾します。
 故に、公転速度vは位置エネルギーUにより変化するのではなく、角運動量保存の法則により変化するのです。

 再度、アプローチを変えて説明します。
 @の位置では
力学的エネルギー=(1/2)mv2+(-GMm/r)=k
です。ここでk=-(1/2) GMm/rと仮設します。すると
(1/2)mv2+(-GMm/r)=-(1/2) GMm/r、(1/2)mv2=(1/2) GMm/r、v2= GM/r、v=√(GM/r)
です。

Aの位置の運動エネルギーK=(1/2)m(2v)2=2mv2=2m{√(GM/r)}2=2GMm/r=(1/2)mv2+x=(1/2) GMm/r+x、x=(3/2)GMm/r
です。つまり、@の位置からAの位置に移動し惑星の公転速度がvから2vになるためには、運動エネルギーを(3/2)GMm/r加えなければなりません。しかし、@とAの位置エネルギーの差はGMm/rです。
Bの位置の運動エネルギーK=(1/2)m(3v)2=(9/2)mv2=(9/2)m{√(GM/r)}2=(9/2)GMm/r=(1/2)mv2+x=(1/2) GMm/r+x、x=4GMm/r
です。つまり、@の位置からBの位置に移動し惑星の公転速度がvから3vになるためには、運動エネルギーを4GMm/r加えなければなりません。しかし、@とAの位置エネルギーの差は2GMm/rです。
Cの位置の運動エネルギーK=(1/2)m(4v)2=(16/2)mv2=(16/2)m{√(GM/r)}2=(16/2)GMm/r=(1/2)mv2+x=(1/2) GMm/r+x、x=(15/2)GMm/r
です。つまり、@の位置からCの位置に移動し惑星の公転速度がvから4vになるためには、運動エネルギーを(15/2)GMm/r加えなければなりません。しかし、@とAの位置エネルギーの差は3GMm/rです。

 この様に、惑星の公転速度が公転半径rに反比例して変化するのは、位置エネルギーと関係はなく、角運動量が保存されるからです。
 ですから、力学的エネルギー保存の法則「(1/2)mv2+(-GMm/r)=k」のvは、惑星が太陽に落下し又は飛び出す速度vです。決して、公転速度vではありません。