TopPage思考の迷宮 (物理・数学・生物・歴史・哲学・宗教の未解決問題を扱います。貴方もアイデアをリリースして見ましょう。いざ思考の迷宮へ)

ニュートンのバケツによる静止系の証明

T.「ニュートンのバケツ」での静止系の証明は間違っているとの主張は正しいのか.

 先ず、「ニュートンのバケツ」から説明します。
 ニュートンは、地動説に基づき、天体の運動を絶対空間と絶対時間を使って記述することに成功しました。絶対空間とは、静止している空間です。絶対空間を基準とすれば、地球が回転しており宇宙は静止していることが分かると考えました。

 これに対して、当時の科学者は、絶対空間を見つけることが出来なかったので、その存在を次の様に否定しました。
 『空間は、何もない空っぽの入れ物で実体は無い。何もない空虚な空間の位置は考えることは出来ない。ここが静止していると空間の一点を指差しても、本当にその一点が静止しているのか移動しているのか誰にも分からない。後に残るのは、動き回る粒子のみである。
 こうなると、運動は物質と物質との相対的位置関係の変化となる。この粒子が静止していると仮定するとあの粒子は移動している。逆に、あの粒子が静止しているとすると、この粒子は移動しているとしか言えない。つまり、地球が自転しているのか、残りの宇宙全体が逆向きに回転しているのか分からない。』以上です。

 ニュートンは、この反論に対して「ニュートンのバケツ」と呼ばれる説明で、絶対空間があることを示しました。
 バケツに半分位水を入れ、紐をつけて天井に吊るし回転させます。そうすると、遠心力によりバケツの端は水面が高くなり、中央部分は低くなります。この事実から、バケツの中の水には、静止している絶対空間を基準にした水の回転速度(絶対運動)に応じた遠心力が掛かっていると説明しました。

 ここからは、私の補足説明です。
 バケツの中の水には、回転速度に応じた強さの遠心力が掛かります。回転が速くなり遠心力が強くなると、水面の凹凸の差は大きくなります。バケツの中の水は、「何か」に対して回転しており、その回転速度に応じた遠心力が掛かり、遠心力に応じた水面の凹凸が生じるのです。その「何か」が静止系です。

 この静止系がなければ、バケツの回転速度は特定しません。バケツは回転しているとも静止しているとも自由に考えることが出来ます。しかし、回転し水面が凹凸となっているバケツを見て、このバケツは静止していると幾ら念じても、水面は平らにはなりません。従って、静止系があることが分かります。静止系に対して、バケツの回転の絶対速度が特定されるので、その速度に応じた水面の凹凸差が生じるのです。これが、「ニュートンのバケツ」の説明です。

 質問者さんは、果敢にも「このニュートンの説明では、静止系の存在を証明することは出来ない」と、否定されました。その詳細は次のとおりです。

 >問題として、
@絶対静止系とその他の慣性系が区別できるか、と
A慣性系と加速度系(回転を含む)が区別できるか、
という問題がある。

 ニュートンのバケツもマッハのバケツも、Aについての議論だ。ニュートンのバケツで慣性系と回転系は区別することができるが、@の絶対静止系とその他の慣性系の区別などはできない。<以上です。

 質問者さんの説明は、大変舌足らずで分り難いので、私が補足します。
 先ず、Aから説明します。
 加速する物体には、加速度に応じた強さのGが掛かります。従って、その物体に掛かるGの強さを測定すれば、その物体はどれ位の加速度で加速しているのか分かります。
 これに対して、等速直線運動(同じ速度で真っ直ぐ移動する運動)をする物体には、Gが掛かりません。従って、物体に掛かるGの強さを測定すれば、その物体は加速しているのか、或は等速直線運動をしているのかが分かります。

 宇宙には、物体Aしかなくなりました。Aには、自分が動いているのか否かを比べる他の物がありません。しかし、A自身に掛かるGの強さを測定すれば、自分は加速運動しているのか、或は等速直線運動をしているのかが分かるのです。
 バケツの回転運動も加速系です。バケツの中の水には、その回転速度に応じた遠心力が掛かり、遠心力に応じた水面の凹凸が生じます。ですから、バケツが回転(加速運動)しているのかしていないのかが分かります。

 次に@です。
 この宇宙には、「ニュートンのバケツ」のみとなりました。そして、バケツは回転せず等速直線運動をしています。バケツの中の水に、Gは掛かりません。従って、水面は平らです。
 一方、バケツが静止している時も水面は平らです。これでは、幾ら、バケツの水面を観測しても、このバケツは静止しているのか、等速直線運動をしているのか分かりません。

 従って、質問者さんは、「ニュートンのバケツ」では、バケツが等速直線運動をしているのか或は静止しているのか分からないので、静止系があることの証明になっていないと仰っておられるのです。

U.「ニュートンのバケツ」を回転させながら、等速直線運動をさせて水面を観測する

 では、この宇宙に唯一の存在となった「ニュートンのバケツ」を、回転させながら等速直線運動をさせて見ましょう。
 物質は、光速に近づくに従って動き難くなります。そして、光速を超えることは出来ません。これは、加速器の実験で普通に見られる現象です。
 バケツの中の水の回転も、バケツの速度が光速に近づくと遅くなります。亜光速でバケツが移動する時、中の水は殆ど回転することは出来ません。少しでも回転すると、光速を超えてしまうからです。
 ですから、バケツの速度が速くなるに従って、バケツの中の水の回転速度は落ち、遠心力が弱まり、水面の凹凸差は次第に少なくなります。つまり、等速直線運動の速度に応じたバケツの水面の凹凸差が生じるのです。この凹凸差を測定すれば、バケツは静止しているのか、或はどれだけの速度で等速直線運動をしているのか分かります。

 「何か」に対して、バケツは等速直線運動をしているのです。その「何か」を静止とすると、バケツの等速直線運動の絶対速度が求まり、その絶対速度に応じた水面の凹凸差が生じるのです。ですから、「ニュートンのバケツ」は、静止系の存在を証明しています。

 質問者さんは、亜光速で移動するバケツを見ても、それが静止しているのか等速直線運動しているのか分からないと主張されます。そして、「静止系はない」と強く主張されます。
 若し、静止系がなければ、亜光速で移動する「ニュートンのバケツ」が静止していると自由に考えることが出来ます。最初回転させておいても、バケツの速度が亜光速になると、上記のとおり水は回転することが出来ず、水面は平らとなります。本当に、このバケツは静止していると強く念じると、再び水面は凹凸となるのでしょうか。

 しかし、考え方を変えただけでは、水面は変化しません。質問者さんは、バケツは静止しているいや移動していると考え方を変えると、水面の凹凸が変化すると考えられているご様子です。いやはや、貴方は「超能力者」なのですね。

V.静止系は何か

 この場合、「ニュートンのバケツ」は、何に対して亜光速で移動しているのでしょうか。それが「静止系」です。この宇宙に物質はなくなったのですから、その「何か」は物質ではありません。

 現在の物理学では、「超ひも理論」が最も有力視されています。そして、宇宙を次の様に想定します。
 宇宙開びゃくの瞬間、宇宙は非常にエネルギーの高い状態にあり、個々の「超ひも」は自由に空間を動き回っていました。しかし、宇宙のエネルギーが、100GeVになった時、「超ひも」は第三回目の相転移を起こしました。相転移とは、水蒸気が冷えて氷となる様な現象を言います。水蒸気として自由に動き回っていた水の分子は、冷えて相転移を起こし氷の分子として固定され、もはや自由には動き回ることが出来なくなります。

 ここからは、私のオリジナルです。
 ビッグバンの初期には、「超ひも」は光速を超えて自由に移動していました。しかし、宇宙のエネルギーの低下に伴い、宇宙は相転移を起こし、「超ひも」は固定され網状に繋がったと考えます。

 そして、その「超ひもの網」の上を、物質や光及び重力・電磁力・強い力・弱い力の4つの力は、振動として伝わると考えます。つまり、物質が移動して見える現象は、実は超ひもの物質としての振動が、次々と隣の超ひもに伝わる現象であると思います。そして、「超ひも」の振動自体が光速で伝わるので、何ものも光速以上で伝わることは出来ないのです。

 超ひも理論では、物質も光も一本の超ひもの振動として表現されます。超ひもの長さをプランク距離Lと言います。振動が超ひもの端から端まで伝わるのに要する時間をプランク時間Sと言います。超ひもの振動は光速Cで伝わります。従って、
 光速c=プランク距離lp÷プランク時間tp=lp/tp= 1.616199×10-35m÷5.39106×10-44秒=299,792.5q/秒となります。

 ここで注意したいのは、1本の超ひも上を光は光速で振動として伝わることです。そして、真空中も同じ光速で光は伝わります。これは単なる偶然でしょうか。
 真空中には、超ひもが繋がったものがあり、その上を光はそのまま光速で伝わっていると考える方が自然です。

 上記で述べた通り、幾ら光の質量が0でも、光が粒子なら、エネルギーを加えると更に幾らでも加速するはずです。なぜ、光の速度は299,792.5q/秒が限界なのか、そのヒントは1本の超ひも上を伝わる光の速度が光速であることにあると考えます。

 本来は物質も光と同様に、光速で「超ひもの網」上を伝わろうとします。しかし、「超ひもの網」である空間にはヒッグス場があり、物質がその中を移動すると、ヒッグス粒子が生じ物質にまとわり付き動き難さである質量を与えます。その為に、物質は光速未満でしか動くことが出来ないのです。

 私はこの理由により物質は、光速未満でしか移動出来ないと考えます。相転移する前の宇宙は、超ひもが繋がっておらず、自由に飛び回っていたので、光は光速を超えて移動することが出来ました。インフレーション理論でも、宇宙開闢の一瞬あらゆるものは光速を越えた速度で飛び散ったと考えます。その後、宇宙は相転移し、超ひもが網状に繋がったので、光は光速で真空中を伝わる様になりました。

 「ニュートンのバケツ」が「ヒッグス粒子のプール」の中を回転するから、中の水に質量が与えられ、水はバケツとは真横に飛び出す形で等速直線運動をしようとしますが、バケツの壁によりバケツ方向へ常に押され続けるので、水にGが掛かり、水面が盛り上がるのです。
 一方、「ニュートンのバケツ」が「ヒッグス粒子のプール」と同じ点を中心に同じ速さで回転するとどうでしょう。この状態では、バケツの中の水には質量が与えられません。従って、水は「ヒッグス粒子のプール」と一緒にまるで静止している様に何の変化もせず回転します。その水面も平らなままです。

 宇宙空間を、バケツが「ヒッグス粒子のプール」と同じ方向へ同じ速度で移動しても、中の水には質量は与えられません。ですから、水は「ヒッグス粒子のプール」と一緒に、まるで静止している様に何の変化もせず移動し続けます。静止時と同じ様に、このバケツを回転することが出来ます。静止時と同じ力で回転させた時、静止時と同じ水面の凹凸差が生じます。

 この様に、「超ひもの網」と「ヒッグス粒子のプール」が静止系です。これを基準にすると、バケツの等速直線運動や回転運動の絶対速度を特定することが出来ます。その絶対速度に応じた水面の凹凸差が生じるのです。
 決して、質問者さんが言われる様に、目の前の回転するバケツを見て、このバケツは静止しているいや高速で等速直線運動をしていると念じると、水面の凹凸差が変化するようなことは起こらないのです。