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長い棒を押すと情報は光速を超えて伝わるか

棒の一方を押すと瞬時に他の一方が動くか

 物質は多くの粒子から構成されています。そして、それぞれの粒子は、お互いに接し合っている訳ではありません。粒子同士は、粒子間に働く電磁気力・重力・強い力・弱い力の4つである引力や斥力の釣り合う一定距離を保っています。そのために、物質は一定の形を保っています。重力が余りに強いと、物質は自らの中に落下して行き点であるブラックホールとなります。

 そして、電磁気力や重力は、光速で伝わると考えられています。つまり、物質の一端を押すと、隣の粒子に斥力が光速で伝わり、隣の粒子を動かします。その粒子が動いたことにより、更に斥力がその隣の粒子に伝わり、その隣の粒子も動きます。この様にして、次々と斥力が光速で伝わり、次々と隣の粒子が動いて行きます。その粒子が次々と動いて行く速さは、決して光速よりも速くはありません。
 長さ1光年の棒の一端を押しても、反対側の端にその力が伝わるのは少なくとも1年以上後です。

ローレンツ収縮

ローレンツ収縮  そして、上記の物質のイメージを使えば、ローレンツ収縮の仕組みを理解出来ます。
 物質が高速で移動すると、進行方向に√(1-v2/c2)倍収縮します。これをローレンツ収縮と言います。
 左図に基づいて説明します。今、観測者K'がX軸の正方向へv[m/s]で移動しています。1mの剛体の棒(測量棒)もv[m/s]で同じ方向へ移動しています。観測者K'には、この測量棒の長さを1mと測ります。では、静止しているKには何mと測れるでしょうか。

ローレンツ変換

 ローレンツ変換は次の通りです。
x'=(x-vt)/√(1-v2/c2) ・・・・(第1式)
y'= y・・・・・・・・・・・・・・・・(第2式)
z'= z・・・・・・・・・・・・・・・・(第3式)
t'= (t-vx/c2) / √(1-v2/c2)・・(第4式)
 静止者Kにとって、1秒後の測量棒の始点の位置Pはx=@vmです。終点の位置Qは幾らでしょうか。測量棒は観測者K'と同じ速度で同じ方向へ移動するので、(x,y,z)=A(vt,0,0)です。静止者Kから見た1秒後の測量棒の終点の位置Qをx=B(v+a)mとします。観測者K'にとっての測量棒の終点の位置Qは第1式にAとBを代入すると
x'=(x-vt)/√(1-v2/c2)=(v+a-v)/√(1-v2/c2)=a/√(1-v2/c2)=1m
となります。従って、
a=√(1-v2/c2)m
です。静止者Kから見た測量棒の長さは、終点-始点=v+√(1-v2/c2)-v=√(1-v2/c2)mです。  この様に、v慣性系では、定規は進行方向に√(1-v2/c2)倍に収縮します。これを「ローレンツ収縮」と言います。
 物質を構成する粒子は、接し合っている訳ではありません。粒子間に働く引力や斥力の釣合う一定距離を保っています。その引力や斥力は、電磁波等が、光速で粒子間を往復することで生じます。物質が移動すると、電磁波等の往復距離が変化するので、引力や斥力の強さが変化します。従って、高速移動すると引力と斥力の釣合う粒子間の距離が変化し、物質が収縮することは考えられることです。

特殊相対性理論

 以上の内容を、アインシュタイン博士自身が書かれた『特殊及び一般相対性理論について』では次のように記述されています。

 >座標系K'のX'軸に沿って、メートル棒を始点がx'=0に、終点がx'=1となる様に置く。では、座標系Kにおいて相対的なメートル棒の長さはどれほどになるか。これを知るには、座標系Kにおける測量棒の始点と終点の位置を問いさえすればよい。・・・この2点間の距離は√(1-v2/c2)mである。従って、速度vで動く剛体のメートル棒の長さは、移動方向には√(1-v2/c2)mとなることが分かる。それゆえ、運動する剛体棒は同じ静止状態にある時の棒よりも短くなり、運動が速くなるほどそれだけ短くなるのである。速度v=cとなると、√(1-v2/c2)=0mとなり、更に速度が増すとこの値は虚数となる。そのことから、相対性理論では速度cは現実の物体にとって、到達できずまた超えられない1つの限界速度の役を務めていると結論される。
 もしもガリレイ変換にもとづいたならば、運動にともなって測量棒が短縮するとは言えなかったであろう。<  以上です。