共働距離と固有距離

 距離には、共働距離と固有距離の2種類があります。138億年前に起こったビッグバンにより、この宇宙は膨張しています。但し、物質が四方八方に飛び散っている訳ではありません。空間自体が膨張していると考えられています。

 何故、その様に考えるのでしょうか。  1929年に、ハップルによって、遠くにある天体程地球から速い速度で遠ざかっていることが判りました。天体の遠ざかる速度は、その距離に比例していました。これを「ハップルの法則」と言います。「ハップルの法則」は、次の通りです。
v=Hr H = 71 ±4 km/sec/Mpc
1Mpc(メガ・パーセク) = 326万光年です。つまり、326万光年離れた天体は、地球から毎秒71qの速度で遠ざかっています。不思議なのは、あらゆる方向の天体がそうだと言う点です。

 宇宙は、約138億年前に、ビッグバンにより誕生しました。それ以前、あらゆるものは一点に集中していましたが、未曾有の大爆発により宇宙は膨張を始め、現在も膨張を続けています。現在の地球が、まだビッグバンの中心辺りにまだあるのであれば、「ハップルの法則」は成立します。あらゆる方向にある天体は、ビッグバン地点から放射状に広がります。この時、全ての天体は、距離に比例して地球から遠ざかって行きます。

 しかし、現在の地球が、ビッグバンの中心から遠く離れていたらどうでしょう。天体はビッグバン地点を中心に、放射状に広がります。地球とビッグバンを結んだ方向(横方向)にある天体について言えば、一応天体は地球から遠い星程速く遠ざかると言えます。しかし、地球から見て上下左右方向(縦方向)の天体はどうでしょうか。地球と天体は、ほぼ同じ方向へ向けてビッグバン地点から遠ざかっています。この場合、天体はほとんど地球から遠ざからないことになります。

 従って、「ハップルの法則」が成立する為には、地球がまだビッグバン発生地点の極近くにあるか、宇宙全体が、2倍3倍となるような形で膨張しているかのどちらかしかありません。スイカを例に説明します。種が天体です。スイカが2倍3倍と生長すれば、種と種との間隔も、2倍3倍と開きます。これで、上手に「ハップルの法則」を説明することが出来ます。

 天体が移動していると考えると、ビッグバン地点から放射状に膨張するすることになり、上手に説明することが出来ないのです。ですから、空間全体が2倍3倍となる形で膨張していると考えます。
 現在、地球がビッグバンの中心にはないとしたら、「空間自体」が全ての方向へ等しく膨張しているとしか考えられません。

 共動距離は、2点間の距離を空間の伸縮と比一緒に伸縮する(共動する)定規で測った距離になります。定規自体が空間と一緒に伸縮するので、この定規で距離を測れば、距離は常に一定と測定されます。

 一方、固有距離は、2点間の距離を空間の伸縮には関係なく一定の大きさの定規で測った距離になります。定規自体は空間の伸縮と無関係に一定の大きさを保つので、この定規で距離を測ると、距離は空間が膨張すれば大きくなり、逆に空間が縮小すれば距離は小さくなります。

 観測可能な宇宙の果ては、後退速度が光速度となる137億光年です。その地点からの光は137億年掛って地球に到達するのです。この137億光年を光行距離と言います。

 しかし、現在地球に届いている137億年前の光が発せられたのは、実際には現在の地球から4200万光年離れた地点です。宇宙が非常に速く膨張したので、光でも地球に届くのに137億年要してしまったのです。この4200万光年が固有距離です。

 そして、137億年前に4200万光年の距離に在り、現在137億光年の距離に見えるものは、実際には宇宙の膨張により、465億光年の距離に遠ざかってしまっています。その465億光年が共動距離です。