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くりこみ理論とは何か

T.点状粒子

点状粒子

 「くりこみ理論」とは何でしょうか。
 量子力学では、粒子を点と考えました。しかし、これでは粒子同士どこまでも近づきます。
 一方、電磁気力の強さは、電荷を帯びた粒子間の距離の2乗に反比例します。故に、粒子間に働く電磁気力の強さは無限大になります。つまり、電子の持つ本来の電荷(真の電荷)は無限大となり、それ以降計算不能に陥ります。

U.計算結果が無限大となる

電子分極

 計算結果の値が無限大に発散することは、電磁力の計算の過程で良く起こります。

 電子(マイナスの電荷)は、常に粒子(マイナスの電荷)と反粒子(プラスの電荷)を発生吸収しています。プラスの反粒子は電子側にマイナスの粒子は電子の反対側に位置(分極)し、このプラスの反粒子とマイナスの粒子の1セット(電子双極子)が雲状に電子を取り巻きます。

 そのため、実験では元々電子が持っていた電荷(裸の電荷)が弱まって観測されます。電子と電子双極子は双方点であり、どこまでも近づくので、理論上弱まる力を計算しても無限大となります。

V.くりこみの手法

 この様に、@電子の真の電荷の強さを計算しても無限大、A電子双極子により弱められる電荷の強さを計算しても無限大となり、それ以上計算が出来ません。
 しかし、@電子の裸の電荷の強さからA電子双極子により弱められる電荷の強さを差し引いた値は、実験により確認されています。
 そこで
@×粒子同士は一定距離Bまでしか近づけないと仮定した時の電子の電荷の強さ/無限大
A×粒子同士は一定距離Bまでしか近づけないと仮定した時の電子双極子により弱められる電荷の強さ/無限大
と処理します。これを「くりこみ」と言います。この一定距離Bを計算結果が実験値に一致する様に取るのです。

 朝永博士は、「くりこみ理論」というのは発散を除く一つの便法で、カンニングのようなもの だと言っておられました。無限大に発散して値の定まらない所へ実験値を代入するのですから、確かにそのとおりです。

W.場の量子論

場の量子論

 一方、湯川博士は「くりこみ理論」が提唱される以前から、「点状粒子」の考え方には限界があることを見通され、「広がりや大きさのある粒子」像を想定し「場の量子論」を提唱されました。

 しかし、朝永博士の「くりこみ理論」の成功で、湯川博士の考え方は忘れ去られました。

X.超ひも理論

超ひもの振動

 しかし「くりこみ」の手法は、根本的な解決方法ではありません。再び、湯川博士の「広がりのある粒子」の考えが見直され、その結果素粒子を「超ひも」で表現する「超ひも理論」が完成しました。

 この「超ひも」は、プランク長程度(10-35[m])の長さです。「超ひも」の振動であらゆる粒子を表現出来ます。ですから、粒子同士、プランク距離より近づくことが出来ないのです。
 これで、電荷を帯びた粒子間に働くクーロン力も無限大ではなくなり、裸の電荷も無限大ではなくなりました。

 また、質量同志が何処までも近づけるなら、質量間に働く万有引力は無限大となり、質量が本来持っている万有引力も無限大となってしまいます。
 しかし、質量同志がプランク距離よりも近づかないので、質量の持つ真の万有引力も無限大ではなくなりました。

Y.微細構造定数α

微細構造定数

 その結果、真の電荷と真の万有引力の強さは幾らとなったのかを見て行きましょう。
C1粒の電子と陽子がプランク距離Lpまで近づいた時の電磁気力=(1/4π*ε0)×(e2/Lp2)=e2/(4π*ε0*Lp2)
です。一方
Dプランク力=プランク質量同志がプランク距離まで近づいた時の万有引力=プランク質量×プランク加速度=ディラック定数×1秒間の振動数(プランク時間tpに1回振動)÷光速2(エネルギーを質量に換算)×光速÷プランク時間=(hバー/tp)×(1/c2)×(c/tp)
=(hバー/tp)×(1/c2)×(Lp/tp2)=hバー*Lp/tp3*c2
です。
 微細構造定数αは、Bの電磁力とCのプランク力の比を表わすので
微細構造定数α=B÷C= e2/(4π*ε0*Lp2)×tp3*c2/hバー*Lp=D「e2/(4π*ε0*hバー*c)」= (1.602176×10-19[C])2/{4×3.141592×( 8.854187×10-12)×(1.054364×10-34)Js×(2.997925×108)m/s }=1/137.0091
です。

 つまり、1粒の電子と1粒の陽子がプランク距離Lpまで近づいた時の電磁気力の強さは、プランク力の1/137倍となりました。これで、それが無限大ではなくなり計算出来る様になりました。