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高速移動する時計が遅れる仕組み

T.高速で移動する時計の遅れ

 図と平易な文章で、「高速で移動する時計の遅れる仕組み」の説明を試みたいと思います。

U.GPS衛星搭載の時計の遅れ

 実際に、高速で移動する時計は遅れます。実際に、地球の周りを高速で移動するGPS衛星に搭載されている時計は、高速移動により地上の時計に比べて1秒間に100億分の2.55秒遅れます。
 一方、GPS衛星は地表よりも重力の弱い所を回るので、地上の時計に比べて1秒間に100億分の7秒速く進みます。従って、差し引きすると、GPS衛星搭載の時計は地上の時計よりも1秒間に100億分の4.45秒速く進むのです。
 ですから、地上ではこの時計が逆に100億分の4.45秒遅く進む様に補正されています。これで、軌道上に乗ると、この時計は地上の時計とシンクロします。以下では、重力の影響を考えず、高速移動による影響のみ考慮することとします。

V.時計の遅れる仕組みとカウフマンの実験

カウフマンの実験  では、「高速で移動する時計の遅れる仕組み」を解説します。
 高速で移動する粒子は動き難くなります。これは、加速器の実験でも実証されています。
 また、カウフマンは、様々な速度の電子に電磁力を掛けて、上下左右方向へ曲げる実験を行いました。その結果、光速に近い電子程曲げ難いことが判明しました。

 v[m/s]で移動する電子は、上下左右方向には√(c2-v2)[m/s]までしか動かせません。これで、この電子の速度はc[m/s]となるからです(ピタゴラスの定理より)。ですから、v慣性系では静止時に比べて√(c2-v2)[m/s]÷c[m/s]=√(1-v2/c2)倍しか動けないことが分かります。

 相対性理論では、このことをm=m0/√(1-v2/c2)と表現します。m=v[m/s]で移動する物質の質量・m0=静止時の物質の質量です。つまり、v[m/s]で移動する粒子は、同じ力を掛けても、√(1-v2/c2)倍しか動かないことを表現しています。カウフマンの実験では、電子の動き難さはこの方程式と一致したのです。

 しかし、実際に質量が増加する訳ではありません。動き難くなったので、質量が増加した様に振る舞うと表現するのです。この様に、動き難くなったので、質量が増加した様に振る舞うと言っているのです。

 ですから、hさんの「質量が2倍となっても速度は1/2倍とはならない」との反論は本末転倒です。また、最高速度の限界がc[m/s]から√(c2-v2)[m/s]になることと、通常速度で移動する物質の移動速度が√(1-v2/c2)倍になることとは関係ないとの反論です。しかし、カウフマンの実験から分かるとおり、通常の速度v[m/s]で移動する電子にも、この動き難さは適用されるのです。

 ですから、物質は、上図のとおりv慣性系では、静止系の√(1-v2/c2)倍しか動けません。v慣性系の時計の部品も、静止時の√(1-v2/c2)倍しか動けないので、この時計は1秒間に√(1-v2/c2)秒を刻みます。即ち、変換式は
@t'=t*√(1-v2/c2)
です。これは、GPS衛星の時計の遅れと一致します。この上更に、時間の経過自体が√(1-v2/c2)倍に遅れると、時間の変換式は
At'=t*(1-v2/c2)
となり、現実のGPS衛星搭載の時計の遅れからは乖離します。従って、時間の経過自体は変化していないことが分かります。

W.「時間の経過が遅れる仕組み」を説明出来るか

 hさんは、当初は「時間の経過そのものが変化する」のだとのご主張でした。そして、物理学では、「時間の変化する仕組み」は考えず、それを前提として、ただひたすら物理計算をするのだと言われていました。私が幾ら「時間の経過自体の変化する仕組み」を尋ねても、何時も「wakarimasenn」との回答でした。
 それが分かるはずはありません。時間と空間は、他のものから構成することは出来ない直感です。つまり、構造がありません。従って、変化する仕組みを考えることは出来ません。ですから、今まで「時間の変化する仕組み」を答えた人は居ませんし今後も居ないでしょう。
 真実は、時間が遅れるのではなく、物質の変化のスピードが遅れるのです。その為に、「時間の座標が変化する」のです。物質は構造を有するので、物質が変化する仕組みを考えることが出来ます。

 hさんは、その仕組みを答えられないので、今度は高速で移動する「相手の時計が遅れて見える」だけで、実際には遅れてはいないのだとの主張に変りました。これで、「時間の遅れる仕組み」を答えなくて済むと思われたのでしょう。

X.見かけ上の時計の遅れ

見かけ上の遅れ  高速で移動する相手の時計の映像を見ます。しかし、その映像は、光や電波で届きます。どちらも光速で伝わるので、届くまでに時間が掛かります。
 Oで一緒だった宇宙船AとBが、高速で離れて行きます。発射してから5秒後のAの持つ時計の映像は、10秒後にBに届きます。従って、BがAの持っている時計を見ると、10秒間に5秒しか刻んでいないように見えます。つまり、Aの持っている時計は遅れて見えます。逆にAから見ると、Bの持っている時計は遅れて見えます。
 しかし、これでは、逆に宇宙船AとBが高速で近づく時、お互いに相手の時計は速く経過している様に見えます。従って、宇宙船AとBが高速で離れUターンして高速で近づき再開すると、AとBの中の時計は同じ時を示しています。これでは「ウラシマ効果」は起こりません。

Y.高速移動する時計は実際に遅れる

GPS衛星の時計の遅れ  しかし、GPS衛星は高速で地球の周りを回っています。地球とGPS衛星との距離には変化はありません。従って、電波がGPS衛星から地球に届く時間は同じなので、上記の様な見た目の変化は起こりません。
 従って、GPS衛星搭載の時計は、実際に遅れているのです。その仕組みは、上記のとおり、時計の部品が動き難くなったので、時計が遅れたのです。決して、「時間の経過そのものが遅れた」のではありません。

Z.アインシュタイン博士の説明

アインシュタイン博士自身が書かれた『特殊及び一般相対性理論について』では、次のように記述されています。
 >K'の原点(x'=0)に持続的に静止している時計があるとする。この時計が続けて刻む二つのカチカチを、Bt'=0とCt'=1とせよ。この時、ローレンツ変換第4式は次の様に変形される。
Bの時、t=0
Cの時、t=1/√(1-v2/c2)
 K基準体から判断すると、この時計の二つのカチカチの間に1秒ではなく、1/√(1-v2/c2)秒が経過する。時計の進み方は静止状態よりも運動中の方がより緩やかになるのである。ここでもまた、光速度cが到達不能な限界速度の役を演じている。<以上です。

 この様に、相対性理論では決して「時間が遅れる」とは言いません。m=m0/√(1-v2/c2)の高速で移動する物質は動き難くなることを前提として、あくまでも、「移動する時計は遅れる」と表現されています。つまり、時計の部品が動き難くなったので、時計は遅れると暗に言われているのです。