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高速移動に伴う時間及び空間の変化の仕組み

ローレンツ変換

ローレンツ収縮  左図に基づいて説明します。今、観測者K'がX軸の正方向へvm/秒で移動しています。1mの剛体の棒(測量棒)もvm/秒で同じ方向へ移動しています。観測者K'には、この測量棒の長さを1mと測ります。では、静止しているKには何mと測れるでしょうか。

 ローレンツ変換は次の通りです。
x'=(x-vt)/√(1-v2/c2) ・・・・(第1式)
y'= y・・・・・・・・・・・・・・・・(第2式)
z'= z・・・・・・・・・・・・・・・・(第3式)
t'= (t-vx/c2) / √(1-v2/c2)・・(第4式)
 静止者Kにとって、1秒後の測量棒の始点の位置Pはx=@vmです。終点の位置Qは幾らでしょうか。測量棒は観測者K'と同じ速度で同じ方向へ移動するので、(x,y,z)=A(vt,0,0)です。静止者Kから見た1秒後の測量棒の終点の位置Qをx=B(v+a)mとします。観測者K'にとっての測量棒の終点の位置Qは第1式にAとBを代入すると
x'=(x-vt)/√(1-v2/c2)=(v+a-v)/√(1-v2/c2)=a/√(1-v2/c2)=1m
となります。

 従って、
a=√(1-v2/c2)m
です。静止者Kから見た測量棒の長さは、終点-始点=v+√(1-v2/c2)-v=√(1-v2/c2)mです。
 この様に、v慣性系では、定規は進行方向に√(1-v2/c2)倍に収縮します。これを「ローレンツ収縮」と言います。

ローレンツ収縮の仕組み

 物質を構成する粒子は、接し合っている訳ではありません。粒子間に働く引力や斥力の釣合う一定距離を保っています。その引力や斥力は、電磁波等が、光速で粒子間を往復することで生じます。物質が移動すると、電磁波等の往復距離が変化するので、引力や斥力の強さが変化します。従って、高速移動すると引力と斥力の釣合う粒子間の距離が変化し、物質が収縮することは考えられることです。

特殊相対性理論

 以上の内容を、アインシュタイン博士自身が書かれた『特殊及び一般相対性理論について』では次のように記述されています。

 >座標系K'のX'軸に沿って、メートル棒を始点がx'=0に、終点がx'=1となる様に置く。では、座標系Kにおいて相対的なメートル棒の長さはどれほどになるか。これを知るには、座標系Kにおける測量棒の始点と終点の位置を問いさえすればよい。・・・この2点間の距離は√(1-v2/c2)mである。従って、速度vで動く剛体のメートル棒の長さは、移動方向には√(1-v2/c2)mとなることが分かる。それゆえ、運動する剛体棒は同じ静止状態にある時の棒よりも短くなり、運動が速くなるほどそれだけ短くなるのである。速度v=cとなると、√(1-v2/c2)=0mとなり、更に速度が増すとこの値は虚数となる。そのことから、相対性理論では速度cは現実の物体にとって、到達できずまた超えられない1つの限界速度の役を務めていると結論される。
 もしもガリレイ変換にもとづいたならば、運動にともなって測量棒が短縮するとは言えなかったであろう。<  以上です。
v慣性系では、測量棒である定規が進行方向へ√(1-v2/c2)倍収縮するので、空間はその分長く表記されます。第4式でローレンツ因子である√(1-v2/c2)が分母に来ていることからもそれが分かります。しかし、観測者自身が(vt)m移動しているので、その分空間は短く表記されます。

運動する時計の遅れ

時計の遅れ  次に、時間の変化です。今、観測者K'がX軸の正方向へvm/秒で移動しています。時計もvm/秒で同じ方向へ移動しています。観測者K'には、この時計は1秒間に1秒を刻んでいると観測されます。では、静止しているKには、この時計は何秒間に1秒を刻むと観測されるでしょうか。

 高速で移動するGPS衛星に搭載されている時計は遅れます。移動速度をvq/秒とすると、その時計は1/√(1-v2/c2)秒間に1秒を刻む様になります。

質量増加

質量増加  高速で動く物質は、動かし難くなります。このことは、加速器の実験で、粒子が光速に近づく程それ以上加速し難くなることにより実証されています。これを、相対論でm=m0/√(1-v2/c2)と表します。m=vで移動する物質の質量・m0=静止時の質量です。速度vで移動する物質は、静止時に比べて√(1-v2/c2)倍しか動けません。そうすると、高速で移動する時計は部品が動き難くなり、1秒間に√(1-v2/c2)秒しか刻めません。

特殊相対性理論

 以上の内容を、アインシュタイン博士自身は次のように記述されています。
 >K'の原点(x'=0)に持続的に静止している時計があるとする。この時計が続けて刻む二つのカチカチを、Bt'=0とCt'=1とせよ。この時、ローレンツ変換第4式は次の様に変形される。
Bの時、t=0
Cの時、t=1/√(1-v2/c2)
 K基準体から判断すると、この時計の二つのカチカチの間に1秒ではなく、1/√(1-v2/c2)秒が経過する。時計の進み方は静止状態よりも運動中の方がより緩やかになるのである。ここでもまた、光速度cが到達不能な限界速度の役を演じている。<以上です。

解説

 相対性理論では、上記の様に、決して時間が遅れるとは表現されていません。あくまでも、「移動する時計は遅れる」と表現されています。
 以上のように時間や空間自体は変化しないのです。物質変化のスピードや大きさが変わるので、時間や空間の座標が変化した様に見えるだけです。