TopPage思考の迷宮 「kothimaro Aruki」の研究室へ戻る

光電効果の仕組み

T.光電効果とは

光電効果

 物質に光を当てると、その表面から電子が飛び出します。これを「光電効果」と言います。電子の放出は、一定の振動数以上の光を物質に照射した時にのみ生じます。

 この振動数は光を照射する物質により決まっています。これを「限界振動数」と言い、その波長を「限界波長」と言います。

U.光の振動数と飛び出す電子の速度

 飛び出す電子の速度は、照射した光の振動数(光の色)により決まります。同じ振動数の光を何倍も強くして(明るくして)照射しても、飛び出す電子の速度は変わりません。
 そして、その関係は次の様に表されます。
hf=hf0+(1/2)mv2 { h(プランク定数)= 6.629069×10-34Js、f=光の振動数、f0=光を叩き出すのに必要な光の振動数、m=電子の質量(9.109389×10-31)s、v=電子の速度(単位:m)}

 光のエネルギーEは、プランク定数×1秒間当たりの振動数vで表されます。その光のエネルギーの内、一定量は電子を軌道から叩き出すのに使われます。そのエネルギーがhf0です。

 残りの光のエネルギーは、飛び出す電子の速度になります。飛び出す電子の移動エネルギーE=(1/2)×電子の質量×電子の速度の2乗です。

V.水素原子内の電子

電子の移動と発光スペクトル

 水素原子を使って説明します。

 電子は原子核の周りを回っています。そして、電子の回る軌道があります。電子が原子核の周りを回ることにより、外側に飛び出そうとする遠心力が生じます。
 また、電子はマイナスの電荷を帯びており、原子核を構成する陽子はプラスの電荷を帯びています。この2つによるクーロン力により、電子は原子核に引き寄せられます。この遠心力とクーロン力が釣り合う一定軌道上を電子は回っています。

 内側から第一軌道(n=1)、第二軌道(n=2)、第三軌道(n=3)・・・と言います。内側の軌道から外側の軌道に移る際、電子は光を放出します。
遠心力F=m×v2/r  {m=質量(単位:s)、v=回転速度(単位:m/s)、r=回転半径(単位:m)}
クーロン力F'=k0×e2/r2 {定数k0=8.987600×109Nm2/c2、e=電荷(単位:Cクローン)、r=距離(単位:m)}
です。

 遠心力は距離rに反比例します。これに対してクーロン力は距離rの2乗に反比例します。ですから、原子核までの距離rが遠くなる程、電子の遠心力が弱くなるよりもクーロン力の方がr倍弱くなります。つまり、距離rが2倍になると速度vは1/√(2)倍にならなくては、遠心力とクーロン力が釣り合わないのです。
 先ず、r=1、v=1の時
遠心力F= m×v2/r=m×12÷1=m
クーロン力F'=k0×e2/r2= k0×e2÷12= k0×e2
で、遠心力とクーロン力は釣り合っています。
 次にr=2、v=1/√(2)の時
遠心力F= m×v2/r=m×{1/√(2)}2÷2=m/4
クーロン力F'=k0×e2/r2= k0×e2÷22= k0×e2/4
となり、遠心力もクーロン力も共に元の1/4倍となるので、双方が釣り合っていることが分かります。

電子の軌道半径  この様に、電子は外の軌道に移るには速度を落とさなければなりません。その為、余分なエネルギーを光として放出します。
 水素原子の電子が回るそれぞれの軌道の電子の速度と遠心力・クーロン力の関係を左表で示して置きます。

 ※詳細は、水素原子の軌道における電子の速度を参照下さい。
 この様に外側の軌道程、電子の速度は遅くなります。逆に、外側から内側の軌道に入るには、電子は速度を上げなくてはなりません。電子は光を吸収し運動エネルギーを増やし速度を上げて内側の軌道に入ります。

軌道変更後の電子の速度  それぞれの軌道における電子の移動エネルギーは左表のとおりです。外側の軌道に移るとAのエネルギーが@の光として放出されます。

 ※これも詳細は、水素原子の軌道における電子の速度を参照下さい。

W.プランク定数

 前述のとおり、内側の軌道に入るには、電子は@の波長の光を吸収しAのエネルギーを受け取りCの運動エネルギーとなりBの速度にならなくてはなりません。

 水素原子に光を照射すると、電子はその光を吸収しエネルギーを受け取り速度を増しより内側の軌道に入ります。しかし、(2.179871×10-18)Jsよりも大きなエネルギーの光を吸収すると、一番外側の軌道上の電子でも一番内側の第一軌道での移動速度を超えてしまい、原子の外に飛び出します。
 この様に、物質に一定以上の振動数の光を照射すると、電子は飛び出します。この電子の飛び出す速度を測定すれば、「プランク定数」を求めることが出来ます。

X.光量子仮説

 光が波であるなら、同じ振動数の波が合わさり振動数が同じでもより大きくエネルギーの高い波となりそうです。電子がその大きなエネルギーの光の波を吸収すれば、同じ振動数でも小さな光の波を吸収した時よりも、速い速度で飛び出しそうです。
 しかし、照射する光の量は一切関係せず、照射した光の振動数に応じた速度で電子は飛び出すのです。
 つまり、電子はある振動数の1つの光を吸収すると考えられます。同じ振動数ならそれより小さな光は存在しないのです。また、電子は同じ振動数の複数の光を吸収してより速度を増すこともないのです。
 波なら、同じ振動数でも幾らでも小さな波を考えることが出来ます。しかし、光は振動数vならエネルギーE=hvより小さなものはないのです。この様に、光は不連続な飛び飛びのエネルギー量の集まりとなります。
 このことからアインシュタイン博士は、光は1粒の粒子であるとする「光量子仮設」を提唱しました。