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重力場での時計と測量棒の挙動

重力場での時間と空間の変化

 加速する系や重力場では、「時間と空間の座標」が変化します。しかし、これを重力により「時間と空間そのもの」が変化すると解釈されている方が居られます。
 しかし、実際はそうではありません。重力により「時計が遅れ定規が収縮する」ので、「時間と空間の座標」が変化するのです。これから、その仕組みを説明します。

重力により時空間座標が変化する仕組み

 強い重力が物質に掛ると、物質を構成する粒子は動き難くなります。ですから、強い重力の掛った時計は遅れます。また、定規に強い重力が掛ると収縮します。
 つまり、質量の大きい星の表面に立っている時には、強い重力で私の肉体を構成する粒子は動き難くなり、私はゆっくりと動き・思考し・年を取る様になります。私の持っている時計もゆっくりと時を刻みます。強い重力で私自身も定規も収縮します。
 この仕組みにより、重力により「時間と空間の座標」が変化します。しかし、私自身の動きや思考が遅れ私自身が収縮しているので、「時計が遅れ定規が収縮した」ことには気が付きません。つまり、自分の「時間と空間の座標」が変化したとは思わないのです。

高速移動により時空間座標が変化する仕組み

 同様の現象は、高速で移動した時にも起こります。光速に近づく程、粒子は加速し難くなります。これは、加速器の実験で実証されています。
 私が高速で移動すると、私の持っている時計はゆっくりと時を刻むようになります。私の肉体を構成する粒子も動き難くなり、私はゆっくりと動き・思考し・年を取る様になります。ですから、自分の持っている時計が遅れたことに気が付きません。
 逆に、静止している人は速く動き・思考し・年を取るように見えます。静止している人が持っている時計は、速く時を刻むように見えます。

 また、物質が高速で移動すると、原子の周りを回る電子も動き難くなって遠心力が弱まり、原子核の電磁力に引かれて、電子はより小さな軌道を回る様になります。この仕組みにより、高速で移動する定規は「ローレンツ収縮」します。
 この様に、高速で移動する時計は遅れ定規は収縮するので、高速で移動すると時間と空間の座標が変化します。

 この様に、重力により「時間と空間そのもの」が変化する訳ではありません。物質の反応速度が遅くなり物質が収縮し、時計が遅れ定規が収縮するので、重力場では「時間と空間の座標」が変わるのです。

特殊及び一般相対性理論について

 以上のことを、アインシュタイン博士の著書「特殊及び一般相対性理論について」で見て行きましょう。

重力場の時計と定規  「これまで私は、一般相対性理論における時間的空間的な値の物理的解釈について、わざと何も言わなかった。・・・。
 我々が考えている(一般相対性理論における時間的空間的な値の物理的解釈についての)像を確定するために、ここに一つの平らな円盤Kがあって、その中心の周りを同じ平面内で一様に回転している円盤K'を考える。

 円盤K'の縁に腰掛けている観測者Aは、直径方向に外方へ向かう力を感じる。その力は、本来の基準体Kに対して相対的に静止している観測者Bによれば遠心力と解釈されるであろう。しかし、円盤K'上に腰掛けている観測者Aは、円盤K'の方を静止している基準体とみなすかも知れない。一般相対性理論に基づけば、そう考えても正しいのである。観測者Aは自分や円盤K'に対して相対的に静止している物体に働く力を、重力作用として把握する。・・・。

 この観測者Aは、その円盤K'上で時計と測量棒を持ち、観測に基づいて円盤K'に関する時間的及び空間的な値の意味について厳密な定義を得るつもりで実験する。

 観測者Aは、先ず二つの同じ状態の時計@Aのうち一方@を円盤K'の中心に、他方Aを円盤K'の縁に置き、二つとも円盤K'に対しては相対的に静止している様にする。・・・。中心に在る時計@は速さが0であるが、縁にある時計Aは回転のために円盤Kに対して相対的に運動している。したがって、円盤の縁に在る時計Aは中心に在る時計@よりも、円盤Kから判断してゆっくりと針が進む。・・・。
 我が円盤K'上では、更に一般的に言えば全ての重力場において、時計は置かれている位置によって速くも遅くもなるだろう。・・・。

 円盤K'と共に運動する観測者Aが、1単位の測量棒アを円盤の縁に置くならば、それは1より短くなる。と言うのは、運動する物体はその運動方向に短縮することになるからである。それに対して、測量棒イを円盤K'の直径方向に置けば、円盤Kから判断してちっとも短縮しない。したがって、観測者Aが測量棒アで先ずその円盤の円周を測り、次に測量棒イでその直径を測って、この二つの測定値について割り算を行っても、その商はπ=3.141592・・・とはならず、より大きな数値になることが分かる。

 一方、円盤K上では、(測量棒イとウは収縮しないので)この操作によって解として厳密にπを与えるに違いない。こうして、ユークリッド幾何学の定理は、回転円盤K'上及び一般に重力場において、少なくともこの測量棒の長さを全ての位置全ての向きにおいて1とする時には、十分に当てはまらないことが既に証明された訳である。・・・。」以上です。

時間と空間そのものは変化しない

 この様にアインシュタイン博士は、決して重力により「時間と空間そのもの」が変化するとは言われていません。重力により「時計が遅れ定規が収縮する」と言われています。その為に、重力場では「時間と空間の座標」が変化するのです。