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移動系でも電磁力が変わらない仕組み

特殊相対性原理

移動系では光の往復距離が伸びる  先ず特殊相対性理論が考案された経緯から説明しましょう。

 地球は、自転し公転し銀河の周りを公転し銀河同士はビッグバンによりお互いに離れています。この様に、地球は宇宙の中で、大変複雑な加速減速運動を繰り返しています。ですから、地表の動く速度は絶えず変化しています。

 では、地表の移動速度が変化すると、その度に生じる電磁気力の強さは変化するでしょうか。
 電磁気力は、光の一種である電磁波が物質間を往復することで生じます。そして、その強さは、物質間の距離の2乗に反比例します。

 一方、v[m/s]で並走しながら、物質同士が電磁波を交換し合うと、電磁波の往復距離は横(進行方向)1/(1-v2/c2)倍・縦(上下左右方向)1/√(1-v2/c2)倍に伸びます。

   ですから、v慣性系では電磁波の往復時間が長くなります。すると、電磁気力の強さは、横1/(1-v2/c2)2倍・縦1/(1-v2/c2)倍に弱まりそうです。

 しかし、現実にはそんなことは起こりません。地表の電磁石の電磁気力は、常に一定の強さを保っています。
 マックスウェルの方程式では、真空の誘電率と真空の透磁率を定数としているため、静止系でも移動系でも、生じる電磁気力の強さは不変であるとしています。

光速度不変の原理

 では、何故、移動速度が変化し電磁波の往復時間が伸びても、生じる電磁気力の強さは不変なのでしょうか。
 特殊相対性理論では、2つの物質がどれ位の速さで移動しても、電磁波の往復に要する時間が不変(光速度が不変)と考えました。

光の往復時間は不変  v[m/s]で移動する物質は、進行方向に√(1-v2/c2)倍ローレンツ収縮します。移動する地球全体がローレンツ収縮するので、電磁波の往復距離は横√(1-v2/c2)/(1-v2/c2)2倍=1/√(1-v2/c2)倍・縦1/√(1-v2/c2)倍となります。
 従って、電磁波の往復時間は、静止時に比べて、横1/√(1-v2/c2)倍・縦1/√(1-v2/c2)倍となります。この仕組みにより、マイケルソンとモーレーの実験では、縦往復と横往復した2本の光は、同時に戻ることが出来たのです。

 一方、v[m/s]で移動する時計は遅れ、1/√(1-v2/c2)秒間に1秒を刻む様になります。従って、v慣性系では、電磁波は静止時と同じ1秒で物質間を往復することになります。その為に、特殊相対性理論では、生じる電磁気力の強さは、静止時と同じと観測されると考えます。
 これを「全ての慣性系において、物理法則は同じ形となる」と言います。

 この様に、光の片道の速度は、系の移動速度により変化しますが、往復時間は不変です。ですから、光の速度を往復で平均すると、光速度は常に不変となります。
 そして、電磁波の片道の時間は、生じる電磁気力の強さに関係しません。物質間を往復して初めて、電磁気力が生じるからです。ですから、電磁波の往復での平均速度が電磁気力の強さに影響し、平均速度は上記の通り不変なので、電磁気力は全ての系で同じ強さとなるのです。

質量増加

移動系での物質の動き難さ  確かに、高速で移動すると時間と空間の座標は変化します。  高速で移動すると、物質は加速し難くなります。相対性理論では、v[m/s]で移動する物質は、静止時に比べて√(1-v2/c2)倍しか加速出来ないと考えます。
 つまり、v[m/s]で移動する時計は、静止時に比べて√(1-v2/c2)倍しか動けないので、1秒間に√(1-v2/c2)秒を刻みます。従って、時間の変換式は@t'=t*√(1-v2/c2)です。

ローレンツ収縮

ローレンツ収縮  また、高速で移動すると、原子核を回っている電子が動き難くなるため、電子の回転速度が落ちその遠心力が弱まり、電子は原子核からの電磁力に引かれ原子は収縮します。この仕組みにより、v[m/s]で移動する物質は、進行方向に√(1-v2/c2)倍「ローレンツ収縮」します。

 v慣性系では、定規が√(1-v2/c2)倍とローレンツ収縮するので、距離は1/√(1-v2/c2)倍長く測定されます。その間、観測者自身がvt[m]移動しているので、その分短く測定されます。上下左右方向には変化はありません。
 従って、空間の座標の変換式は
Ax'=(x-vt)/√(1-v2/c2)
By'=y
Cz'=z
です。
 時間の座標の変換式は、@t'=t*√(1-v2/c2)ですが、一々片道時間を計算するのは無駄です。電磁波が往復して初めて電磁気力が生じるので、片道の光速度も不変と仮設した方が合理的です。

ローレンツ変換

光の座標  従って、ローレンツ変換では、片道の光速度も不変とします。
 静止者から見た光は、OP=(x,y,z)=(ct*cosθ,ct*sinθ,0)と平面で表わすことが出来ます。
 この光をv[m/s]で移動する観測者が見ると、OP'=(x',y',z',t')と観測されます。
移動する観測者の見た光の進んだ距離=√(x'2+y'2+z'2) = (c-v*cosθ)* t/√(1-v2/c2)[m]です。
 片道の光速度が不変である為には、
移動する観測者の見た光の進んだ時間= t'=t*(c-v*cosθ)/c*√(1-v2/c2)秒
 でなくてはなりません。これで、
 移動する観測者の見た光の相対速度=(c-v*cosθ)* t/√(1-v2/c2)[m]÷(c-v*cosθ)*t/c*√(1-v2/c2)秒=c[m/s](光速度不変)となります。

 x=ct*cosθ、cosθ=x/ctなので、
Dt'=(c-v*cosθ)*t/c*√(1-v2/c2)= (t-vx/c2) / √(1-v2/c2)です。
この様に、AからDとなり「ローレンツ変換」が導かれました。