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ホイヘンスの原理と光の屈折の仕組み

波の進む仕組み

平面波球面波

 何故、光は空中から水面に入射すると屈折するのでしょうか。それには、波の進む仕組みから考える必要があります。

 海の波は平行な波が繰り返します。これを平面波と言います。一方、池に石が落ちると同心円状に波が広がります。これを球面波と言います。

波の重ね合わせ  波面上のあらゆる点から、球面波が発生しそれらが重ね合わさると次の波を作ります。左図を見て下さい。

 平面波では、一番左の波のあらゆる点から@半球状の波(素元波)が発生し広がります。  そして、同じ時に発生した素元波同志が同じ時間経過後に重ね合わさり次の平面波を作ります。

 球面波でも同様です。一番内側の波のあらゆる点から素元波が発生し、同時刻に生じた素元波同志が同時間経過後に重ね合わさり外側の球面波を作ります。

 こう考えると、波の進み方が上手く説明出来ます。これを「ホイヘンスの原理」と言います。

光の屈折の仕組み

光の屈折

 では、ホイヘンスの原理を使って光の屈折を説明します。

 真空における光の速度は30万q/秒ですが、媒質の中では光の速度は遅くなります。そして、空中の光の速度>水中の光の速度です。従って、光は水中に入ると伝わる速度が遅くなります。左図を見て下さい。

 空中と水面両方を伝わる赤の素元波が、光の屈折に関わっています。同時に発生した赤の素元波は、空中と水中双方を伝わります。

 そして、左の素元波ほど空中を伝わる部分は少なく水中を伝わる部分が多くなります。ですから、左の素元波程伝わる速度が遅く同じ時間で作る球面波は小さなものとなります。

 逆に、右の素元波ほど空中を伝わる部分が多く、同じ時間で作る球面波は大きくなります。

 同じ時に発生した素元波が、同じ時間経過した後に重なり合い次の波を作ります。ですから、次の波は左に曲がった形で生じます。これが光の屈折です。

誤った説明

誤ったホイヘンス説明

 ホイヘンスの原理を使い、左図の様に屈折を説明する方が居られます。しかし、入射前の1本の横線で表現した1つの波から素元波が生じ球面波が広がり、それらが重なり合い次の波を生むのです。

 これでは、それぞれ異なる波が水面に当たり、水面に当たった部分から素元波が生じ、そこから球面波が広がり次の波を合成することになります。これでは「ホイヘンスの原理」とは似て非なるものです。

 左側の球面波を大きくし、右の球面波を小さく描けば、光は反対側に屈折することになります。ですから、この図は屈折ありきの図に合わせて、半円を描いただけの様です。

再度詳説します

ホイヘンスの原理の誤解例  「ホイヘンスの原理」とは、1つの波のあらゆる部分から新しい球面波が発生し、それらが重なり合い新しいもう1つの波を作ると言う考え方です。

 左図の左上を見て下さい。一番左の平面波のあらゆる点から球面波が発生し、それらが重なり合って新しい1つ右側の波を作り出していますね。
 また、一番内側の球面波のあらゆる点から新しい球面波が発生し、それらが重なり合って新しい1つ外側の球面波を作り出していますね。

 では、この考え方を光の屈折に応用して見ます。
 左図の右を見て下さい。入水する前の光の横線が1つの光の波です。白い部分を見て下さい。1つの光の波のあらゆる点から球面波が生じ、新しい下側の波を作っていますね。

 これが、水面に近づくとどうなるでしょう。赤い球面波が描かれている部分を見て下さい。横線である1つの光の波から、赤の球面波が生じています。そして、発生した赤い球面波は空中と水中の両方を進みます。それぞれの球面波の、空中を進む距離と水中を進む距離は異なります。左の球面波ほど、水中を進む距離が長いのです。右の球面波ほど、水中を進む距離は短くなります。

 光は、水中では空中よりも進む速度が遅くなります。ですから図の様に、左の球面波ほど空中と水中を平均した速度は遅くなり、進む距離が短くなります。逆に、右の球面波ほど平均速度は速くなり、進む距離は長くなります。
 故に、新しい光の波は、図の様に屈折した位置に作られるのです。この様にして、光は入水すると屈折します。

 一方、左図の左下を見て下さい。これはある方が、私の考えが誤っており、正しいのはこちらであると主張された図です。
 入水する前の上側の光の横線が、1つ1つの光の波です。良く見て下さい。これでは、異なる光の波の一部分が水面に触れた時、新しい球面波を生じていますね。そして、異なる時に水面に生じた球面波が重なり合って、新しいもう1つの光の波を作っています。
 そして、左の球面波ほど早く生じたので、水中を進む距離が長くなり、右の球面波ほど遅く生じたので、水中を進む距離が短くなっています。これらの異なる光の波から異なる時に水面に生じた赤い球面波が、新しいもう1つの光の波を作るとされています。

 しかし、光の波の一部分が水面に触れたから、新しい球面波が生じるのではありません。光の波から、常にあらゆる点より新しい球面波が生じると考えるのが、「ホイヘンスの原理」です。
 ですから、このある方は「ホイヘンスの原理」を誤解されています。このある方の考えでは、水面に光の波が当たらないと新しい球面波は生じないことになります。これでは、空中のみ或は水中のみを進む光は、新しい球面波を生じないので、光は波として伝わることが出来ません。しかし、これは現実と矛盾します。

 ですから、私の考えを否定されるのであれば、「光の波が水面に当たって新しい球面波を作る」仕組みを説明されなければなりません。

もっと丁寧に説明します

光の屈折各区間の距離

 A-Dが1つの光の波です。AとDから球面波aとdが同時に生じます。Aから発した球面波aはA-B-Cと進みます。Dから発した球面波dはD-E-Fと進みます。
 @「ホイヘンスの原理」とは同じ波の一部のAとDで同時に発生した球面波aとdが、一定時間経過後に重なり合い新しい波C-Fを作ることです。

 便宜上A-B=15万q・D-E=30万qとします。そして、空中の光速度を30万q/秒とします。
 これで、球面波aは0.5秒で水面Bに到達し、球面波dは1秒で水面Eに到達します。

 一方、水中の光速度は約22.5万q/秒で、真空中の75%です。
 ですから、球面波dが水面Eに到達した時、球面波aは水中を0.5秒間で11.25万q進んでいます。
 更に1秒後の状態を考えて見ます。球面波aは22.5万q・球面波dも22.5万q進んでいます。ですから、B-C=33.75万q・E-F=22.5万qです。

 故に、球面波aとdが発して2秒後には、aはA-B-C=15万q+33.75万q=48.75万q・dはD-E-F=30万q+22.5万q=52.5万qとなります。
 「ホイヘンスの原理」は@のとおり、AとDで同時に発生した球面波aとdが、2秒経過後に重なり合って、新しい波C-Fを作ることです。
 ですから、上記の様にA-B-C< D-E-Fと左側の方が短いので、光は入水すると左方向へ屈折します。

 一方、誤った図の考えはこうです。  『光の波A-Dの内Aの部分が水面Bに当たり球面波aを生じる。この時のDの位置をGとする。G-E=15万qである。∴aが生じた0.5秒後に光の波のDの部分が水面Eに当たり、球面波dを生じる。その時、aは既に水中を0.5秒間で11.25万q進んでいる。

 その1秒後を考える。球面波aは水中を22.5万q・dも22.5万q進んでいる。球面波aと0.5秒後に発生した球面波dとが、何故かdが生じてから1秒後に重なり合い新しい波C-Fを作る。この時、B-C=11.25万q+22.5万q=33.75万q・E-F=22.5万qである。
 したがって、B-C> E-Fとなり左側の方が長いが、何故か光は左側に屈折する。』以上です。

 ここからは、私の解説です。
 誤ったお考えは、「ホイヘンスの原理」とは異なり、光の波の一部が水面に当たることで生じた球面波同志が重なり合い、新しい波を作るとされています。

 この誤ったお考えを証明するためには、@光の波の一部が水面に当たり球面波を生じること、A水面に当たっていない空中のみ・水中のみを進む光の波は球面波を生じないけれども、新しい波を作っていること、BB-C> E-Fとなり左側の方が長いのに、光は左側に屈折することを証明しなければなりませんが、この考えは既に矛盾しています。