Top Pageへ 

GPS衛星搭載の時計の遅れ

高速移動する時計の遅れ

相対性理論では、高速移動する時計は遅れます。また、時計に強い重力が掛かると遅れます。先ず、この仕組みを説明させて下さい。

高速移動する時計の遅れ 左図を見て下さい。今、観測者K'がX軸の正方向へvm/秒で移動しています。時計もvm/秒で同じ方向へ移動しています。観測者K'には、この時計は1秒間に1秒を刻んでいると観測されます。では、静止しているKには、この時計は何秒間に1秒を刻むと観測されるでしょうか。

高速で移動するGPS衛星に搭載されている時計は遅れます。移動速度をv[m/s]とすると、その時計は1/√(1-v2/c2)秒間に1秒を刻む様になります。

ローレンツ変換は次の通りです。
x'=(x-vt)/√(1-v2/c2) ・・・・(第1式)
y'= y・・・・・・・・・・・・・・・・(第2式)
z'= z・・・・・・・・・・・・・・・・(第3式)
t'= (t-vx/c2) / √(1-v2/c2)・・(第4式)
時計は観測者K'と同じ方向へ同じ速度で移動するので、その座標は(x,y,z)=@(vt,0,0)と表せます。この時計が1秒を刻む間に、静止者Kの持っている時計は何秒を刻むでしょうか。それをAa秒とします。

第4式に@とAを代入すると
t'= (t-vx/c2) / √(1-v2/c2)=a(1-v2/c2)/√(1-v2/c2)=a√(1-v2/c2)=1秒
∴a=1/√(1-v2/c2)秒
となり、v[m/s]で移動する時計は1/√(1-v2/c2)秒間に1秒を刻みます。

質量増加

質量増加 では、どうして高速で移動する時計は遅れるのでしょうか。
光速に近づく程、粒子は加速し難くなります。そして、幾らエネルギーを加えても、光速を超えて移動させることは出来ません。これは、加速器の実験でも実証されています。
v[m/s]で移動する粒子は、同じエネルギーを加えても、静止時の√(1-v2/c2)倍しか動かせなくなります。その事を説明します。

v[m/s]で移動する粒子は、縦方向(進行方向に向かって上下左右方向)に、どれ位の速度まで加速出来るでしょうか。答えは√(c2-v2)[m/s]までです。この時、粒子の速度は、√{v2+( c2-v2)2}=c[m/s]とMAXになります。これ以上、縦方向に動くと、粒子の速度は光速を超えてしまいます。
静止時には、縦方向にc[m/s]で移動させることが出来ました。従って、v[m/s]で移動する粒子は静止時に比べて√(c2-v2)[m/s]÷c[m/s]=√(1-v2/c2)倍でしか動かせないことが分かります。

速度は質量に反比例する

物体の移動速度は、質量に反比例します。同じエネルギーを加えても、質量が2倍となると、速度は1/2となります。従って、v[m/s]で移動する物質は、静止時の√(1-v2/c2)倍でしか動かせないので、方程式で次のように表します。
Bm=m0/√(1-v2/c2) (m=v[m/s]で移動する物質の質量・m0=静止時の物質の質量)
言葉で表わすと、「高速で移動する物質は、質量が増加した様に振る舞う」となります。しかし、実際に質量が増え重力が増す訳ではありません。あくまでも、動き難くなることをこの様に表現するのです。

カウフマンの実験

この「高速移動する粒子の動かし難さ」は、カウフマンの実験により確認されました。カウフマンは、様々な速度の電子を電磁力により縦方向へ曲げる実験をしました。その結果、高速で動く電子程曲げ難く、その曲げ難さは方程式B通りでした。

この様に、高速移動する電子時計のクォーツは動き難くなり、その振動回数が減るので遅れます。ぜんまい時計の部品も動き難くなるので、時の刻み方が遅れます。クォーツや時計の部品は、静止時に比べて√(1-v2/c2)倍しか動かないので、1秒間に√(1-v2/c2)秒しか刻まなくなります。
私自身も、肉体を構成する粒子が動き難くなるため、ゆっくりと動き思考し年を取る様になります。私が静止している人を見ると、その人に流れる時間は速く経過している様に見えます。
こう考えると、物質には移動速度に応じた時間の経過のあることを上手に説明出来ます。
これと同様の現象は、時計に強い重力が掛かり、時計を構成する粒子が動き難くなった時にも起こります。

GPS時計

データが不足しているため、飛行機に搭載された時計の挙動に代えてGPS衛星搭載の時計で説明させて下さい。
高速で高所を回るGPS衛星搭載の時計は、高速移動により時の刻み方がゆっくりとなる面と、重力の弱い高所を回っている為時の刻み方が速くなる面があります。
軌道上では高速移動するので、地上の時計に比べて100億分の2.55秒ゆっくりと時を刻みます。また、重力が弱いので、軌道上では地上の時計に比べて100億分の7秒速く時を刻みます。従って、差引すると、100億分の4.45秒速く時を刻むことになるので、その分ゆっくりと時を刻む様に調整されています。
そうしておけば、軌道に乗った時、地上の時計とシンクロします。この調整をしておかないと、カーナビは一日に数十メートルも狂い、使い物にならないそうです。

特殊相対性理論

以上の内容を、アインシュタイン博士自身が書かれた『特殊及び一般相対性理論について』では次のように記述されています。
>K'の原点(x'=0)に持続的に静止している時計があるとする。この時計が続けて刻む二つのカチカチを、Bt'=0とCt'=1とせよ。この時、ローレンツ変換第4式は次の様に変形される。
Bの時、t=0
Cの時、t=1/√(1-v2/c2)
K基準体から判断すると、この時計の二つのカチカチの間に1秒ではなく、1/√(1-v2/c2)秒が経過する。時計の進み方は静止状態よりも運動中の方がより緩やかになるのである。ここでもまた、光速度cが到達不能な限界速度の役を演じている。<以上です。

相対性理論では、上記の様に、決して時間が遅れるとは表現されていません。あくまでも、「移動する時計は遅れる」と表現されています。