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GPS衛星搭載の時計が遅れる仕組み

T.時計の遅れる仕組みについて

 図と平易な文章を使って、GPS衛星搭載の時計が遅れる仕組みについて、簡単な説明を試みようと思います。

U.GPS衛星搭載の時計の遅れ

 高速で移動する時計は遅れます。実際に、地球の周りを高速で移動するGPS衛星に搭載されている時計は、高速移動により地上の時計に比べて1秒間に100億分の2.55秒遅れます。
 一方、GPS衛星は地表よりも重力の弱い所を回るので、地上の時計に比べて1秒間に100億分の7秒速く進みます。従って、差し引きすると、GPS衛星搭載の時計は地上の時計よりも1秒間に100億分の4.45秒速く進むのです。
 ですから、地上ではこの時計が逆に100億分の4.45秒遅く進む様に補正されています。これで、軌道上に乗ると、この時計は地上の時計とシンクロします。以下では、重力の影響を考えず、高速移動による影響のみ考慮することとします。

V.お互いの時計が遅れて見えるだけのケース

見かけ上の遅れ  高速で移動する場合、「お互いに相手の時計が遅れて見えるだけ」であるとの主張があります。
 Aが高速で移動しており、Bは静止しています。静止しているBから見るとAの持っている時計は遅れて見えます。相対性理論では、静止系は無いと考えます。従って、逆にBが高速で移動しておりAは静止していると考えることも出来ます。ですから、AからBを見てもBの持っている時計は遅れて見えるとhさんは主張されています。
 確かに、相手の時計が何時を指しているかは、お互いに相手から届く光で映像を見るか、それとも電波でお互いの時間を知らせ合うかしかありません。
 今、地点Oに宇宙船AとBが一緒にあります。それぞれに搭載されている時計は0時0分0秒を指しています。そしてお互いに離れて行きます。Aが動いたと考えてもBが動いたと考えても良いのです。宇宙船Aの5秒後の位置から宇宙船Bに光や電波が届くのに5秒掛かるとします。即ち、出発して10秒後にBにその信号が届きます。逆に宇宙船Bの5秒後の位置から宇宙船Aに光や電波が届くのにも5秒掛かります。即ち、出発して10秒後にその信号がAまで届きます。

 この様に、Bから見るとAの時計は10秒間に5秒しか進んでいません。逆に、Aから見てもBの時計は10秒間に5秒しか進んでいません。この様に、お互いに相手の時計は遅れて見えます。しかし、実際に時間が遅れた訳ではなく、光や電波が届くのに時間が係るので、相手の時計はゆっくりと時間を刻んでいる様に見えるだけです。実際には、Aの時計もBの時計も同じ速さで時間を刻んでいます。

 逆に、宇宙船AとBが近づく場合には、お互いに相手の時計は速く進んでいる様に見えます。ですから、宇宙船Aが高速でBから離れて行き、Uターンして戻りBに再会すると、当然Aの時計とBの時計は同じ時を指しています。これでは、「ウラシマ効果」は起こりません。

W.GPS衛星搭載の時計が実際に遅れる仕組み

GPS衛星搭載の時計の遅れ  以上は単に見た目の問題です。しかし、これとは別に、高速で移動する時計は実際に遅れるのです。GPS衛星搭載の時計は、高速移動により地上の時計よりも常に1秒間に100億分の2.55秒遅れ続けます。GPS衛星は地球の周りを回っているので、GPS衛星から電波が届くのに要する時間は変りません。ですから、このケースは、電波が届くのに要する時間が次第に長く掛かる様になるので、見た目には相手の時計の遅れが生じると言う理論とは無関係です。

 それでも、GPS衛星搭載の時計は、地上の時計よりも遅れるのです。以下でその「仕組み」を説明します。
 高速で移動する粒子は動き難くなります。これは、加速器の実験でも実証されています。
 また、カウフマンは、様々な速度の電子に電磁力を掛けて、上下左右方向へ曲げる実験を行いました。その結果、光速に近い電子程曲げにくく、その曲げにくさは相対性理論の方程式m=m0/√(1-v2/c2)のとおりでした。m=v[m/s]で移動する物質の質量・m0=静止時の物質の質量です。つまり、v[m/s]で移動する電子は、同じ電磁力を掛けても、√(1-v2/c2)倍しか上下左右方向には曲がらなかったのです。

 しかし、実際に質量が増加する訳ではありません。動き難くなったので、質量が増加した様に振る舞うと表現するのです。ですから、hさんの「質量が1/√(1-v2/c2)倍に増えても、速度は√(1-v2/c2)倍にならない」との反論は本末転倒です。
 先ず、v[m/s]で移動する粒子は、静止時の√(1-v2/c2)倍しか動かなくなるのです。決して、質量が増加したのではありません。動き難くなったので、質量が増加した様に振る舞うと言っているだけです。

カウフマンの実験  何故、動き難くなるのかは、以下の通りです。
 v[m/s]で移動する粒子は、上下左右方向には√(c2-v2)[m/s]までしか動かせません。これで、この粒子の速度はc[m/s]となるからです(ピタゴラスの定理より)。ですから、√(c2-v2)[m/s]÷c[m/s]=√(1-v2/c2)倍しか動けないことが分かります。
 そして、v[m/s]で移動する時計の部品は、静止時に比べて√(1-v2/c2)倍しか動かないので、時計は遅れるのです。
 カウフマンは、様々な速度の電子に電磁力を掛けて、進行方向から見て左右上下方向に曲げる実験を行いました。その結果、速度の速い電子程曲げ難いことが分かりました。そして、その曲げにくさは、相対性理論のm=m0/√(1-v2/c2)のとおりだったのです。
 hさんは、v慣性系では最高速度が√(c2-v2)[m/s]までしか出せないことと、粒子の移動速度が√(1-v2/c2)倍となることは関係ないとのご指摘です。しかし、カウフマンの実験から明らかな様に、v慣性系では粒子は静止時の√(1-v2/c2)倍しか動きません。粒子が静止時の√(1-v2/c2)倍しか動けないので、最高速度はc[m/s]×√(1-v2/c2)倍=√(c2-v2)[m/s]=c*√(1-v2/c2)[m/s]が限度となります。

X.GPS衛星の時計が遅れて見えるだけで、実際には遅れていないとした場合の矛盾点

 この仕組みにより、高速で移動するGPS衛星搭載の時計は実際に遅れるのです。hさんの言われる様に、単に相手の時計が遅れて見えるだけで、実際には遅れていないとするとどうなるでしょうか。
GPS時計と地上の時計  GPS衛星にABの2個の時計を搭載します。一つは100億分の2.55秒速く進む様に補正した時計Aで、もう一つは全く補正していない時計Bです。GPS衛星が長い間地球の周りを高速で回り、時計Bが地球の時計より1時間遅れて見える様になったとします。一方、時計Aは地球から見ると地球の時計とシンクロして見えます。
 GPS衛星から電波が届くのに1秒掛かるとします。時計Aが01時00分00秒との信号を発し、それを地球で01時00分01秒に受け取ります。その時、地上の時計cも01時00分01秒を指しています。こうして、補正された時計Aと地上の時計cとはシンクロしています。
 一方、時計Bは00時00分00秒との信号を発し、それを地球では01時00分01秒に受け取ります。時計Bは時計cより1時間遅れて見えます。
 逆に、地球の時計cからGPS衛星に、01時00分00秒であるとの信号を発します。GPS衛星は1秒後にその信号を受け取ります。その時、補正された時計Aは01時00分01秒を指しており、時計cと同調しています。補正されていない時計Bは00時00分01秒を指しています。hさんは、GPS衛星から地球を見ても、地球の時計が遅れて見えると主張されています。しかし、時計Bから見て時計cは進んでいます。この点でhさんのご主張は誤りです。

 そして、GPS衛星搭載の時計ABをスペースシャトル(今はありませんが)で回収し、地上に戻り時計cと会わせます。すると、どうなるでしょうか。
 以下は、hさんのご主張のとおり、相手の時計が遅れて見えるだけで、実際には遅れてはいないのだと前提した時の矛盾です。
 スペースシャトルに、時計Dが搭載されています。時計Dは時計cと同じ時刻を指しています。ですから、地上において電波でやり取りすると、時計Dは時計Aとも同じ時刻を指しています。スペースシャトルがGPS衛星に到着しました。すると、今度は時計Dが時計Bと同じ時刻を指しています。何故なら、時計Bは時計cと同じ速さで時を刻むからです。地上で電波でやり取りした限りでは、時計Bは時計Dより1時間遅れていました。なのに、GPS衛星に到着すると時計Bと時計Dは同じ時刻を指しています。そして、地球の時計cから電波を受け取ると、時計Dは時計cよりも1時間遅れています。一体、何が起こったのでしょうか。これを説明出来るでしょうか。
 今度は、時計ABを回収し地球に戻ります。GPS衛星に居たとき電波を交換し合ったところ、時計Aと時計cは同じ時刻を指し、時計BDは時計cよりも1時間遅れていました。地上に戻ると、とたんに時計BDと時計cが同じ時刻を指しており、時計Aは時計cより1時間進んでいます。一体、何が起こったのでしょうか。これを説明出来るでしょうか。
 いえ、実際には、こんな事は起こり得ません。

 GPS衛星搭載の時計Bは、高速移動により動き難くなったので実際に1時間遅れたのです。時計Aは1時間速く進む様に補正済みなので、地球の時計cと同じ時刻を指しているのです。スペースシャトルで時計ABを回収した場合、GPS衛星上では、時計Dと時計Aは同じ時刻を指しています。そして、時計Bは時計Dよりも1時間遅れています。回収して地球に戻った時、時計AcDは同じ時刻を指しており、時計Bは1時間遅れています。

Y.結論

 この様に、GPS衛星搭載の時計は、実際に遅れます。そして、GPS衛星の時計から地球の時計を見ると、地球の時計は速く進んでいます。hさんの誤主張のように、決して、GPS衛星搭載の時計から見ても、地球の時計は遅れて見えるのではありません。地球の時計は進んで見えます。そのことは、電波を使って時計合わせをすれば分かることです。

 この様に、GPS衛星が静止していて地球が高速移動していると考えることは出来ません。このことは、宇宙には静止系が存在することを示唆しています。
 急加速する車の中で、この車は静止していると幾ら念じても、体に掛かるGは消えません。この宇宙に車と私のみとなったとします。それでも、Gは「何か」を静止とし、それを基準とした加速度に応じた強さで私の体に掛かります。私と車しかないので、「何か」とは物質はありません。

 一方、空間は何もない空虚なものではなく、物質がその中を移動すると質量を与えるヒッグス場があります。つまり、空間を静止しているとして、物質はその中を相対的に移動すると質量を与えられ、加速するとGが掛かるのです。
 この様に、空間自体を静止系と考えることが出来ます。空間の実体を基準にすれば、地球とGPS衛星の絶対速度を特定出来ます。従って、t'=t*√(1-v2/c2)にそれぞれの絶対速度を代入すれば、地上の時計とGPS搭載の時計が指している時刻を計算することが出来ます。