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GPS衛星の移動速度と時計の遅れ

T.相対的静止系

 高速移動する時計が静止している時計に比べて遅れることは、GPS衛星の時計の遅れで既に証明されています。先ず、相対性理論で時刻が遅れる仕組みを説明します。そして、(重力による一般相対論効果を取り除くと) 高速移動するGPS衛星の時計から見ると、静止している地上の時計は速く進むことを証明します。

 数年前に「ヒッグス粒子」が発見されました。物質が「ヒッグス場」を動くと「ヒッグス粒子」が生じまとわり付き動き難さ(質量)を与えられます。つまり、物質が「ヒッグス場」に対して動くと質量が生じ、「ヒッグス場」に対して加速するとGが掛かり、「ヒッグス場」に対して回転すると遠心力が掛かります。
 つまり、「ヒッグス場」は運動の基準となる「相対的静止系」です。
 そして、この宇宙は三次元の「立体Dブレーン」で満たされています。その「立体Dブレーン」上に「ヒッグス場」があります。ですから、「立体Dブレーン」が「相対的静止系」です。

U.立体Dブレーン

 粒子は光速度cに近づくにつれ加速し難くなります(これは、加速器の実験で実証済みです)。この場合「立体Dブレーン」に対し、粒子が光速度c近くで動くのです。
 つまり、高速で移動する私や私が持っている時計を構成する粒子が動き難くなるので、時計はゆっくりと時を刻み、私はゆっくりと動き思考し年を取ります。
 私が、「立体Dブレーン」に対して静止している人を見ると、その人は速く動き思考し年を取って見えます。そして、静止者の持っている時計は速く時を刻んで見えます。

 しかし「立体Dブレーン」は、相対性理論が否定する「絶対的静止系」ではありません。「立体Dブレーン」が空間の中でどの様に動いているか分からないからです。「立体Dブレーン」が物体の運動の基準となる系なので、これを「相対的静止系」と呼びます。

V.GPS衛星の時計の遅れ

 「相対的静止系」に対してGPS衛星がv[m/s]で移動するとその時計の遅れは
@x’=t√(1−v2/c2
です。

 GPS衛星には、@高速で移動するために起こる時計の遅れと、A地上より弱い重力場にあるために起こる時計の進みが生じます。
 具体的に言うと、GPS衛星搭載の時計はその高速移動により、地上の時計に比べ1秒間に100億分の0.846秒遅れます。
 一方、GPS衛星は地上より重力の弱い所にあるため、地上の時計に比べ1秒間に100億分の5.292秒速く進みます。
 差し引きするとGPS衛星搭載の時計は、地上の時計より1秒間に100億分の4.446秒速く進みます。

 このため、B地上でGPS衛星に搭載する時計を逆に100億分の4.446秒遅く進む様に補正します。これで、軌道に乗ると、GPS衛星の時計は地上の時計と「シンクロ」します。
 これで、3個のGPS衛星の時計と車の時計が同期します。そして、3個のGPS衛星から0時の信号をカーナビが受け取ります。受け取った時の自分の時計の時刻との差より、3個のGPS衛星までの距離が求まります。3辺の長さが決まると、カーナビは自分の位置を特定できます。

 以上のとおり、速度の基準となる「相対的静止系」である「立体Dブレーン」に対する速度を基に、GPS衛星の時計の高速移動による遅れを計算します。

W.GPS衛星の平均速度

GPS衛星の仮設  しかし、GPS衛星の動きは複雑です。GPS衛星は地球の周りを3.9q/sで公転し、地球は太陽の周りを30q/sで公転し、太陽は天の川銀河系を240q/sで公転し、天の川銀河系も移動しています。

 GPS衛星の平均速度を簡単に計算するため、図1のとおり仮設します。
 @地球が370[q/s]で移動しています。その周りをGPS衛星が(地球から見た)相対速度3.9[q/s]で回っています。それを、地球は3.9[q/s]で等速直線運動し、その周りをGPS衛星が公転半径3.9[q/s]の所を相対速度3.9[q/s]で回っているとします。これで、GPS衛星の平均速度を計算します。

X.公転面と垂直方向へ移動するケース

 「GPS衛星の速度=GPS衛星の軌跡の長さ÷時間」なので、GPS衛星の軌跡の長さを求める必要があります。では、GPS衛星の軌跡の形を考えましょう。
GPS衛星のらせん軌道の長さ  GPS衛星の公転面と地球の進行方向が垂直であるケースでは、図2のとおりGPS衛星の軌跡は「らせん」となります。
 地球を1回転した時のGPS衛星の軌跡の長さは、次のようにして求まります。

 底面の円の半径3.9q、高さ7.8πqの円筒形を開いて一辺が7.8πqの正方形ABCDにします。GPS衛星の軌跡は頂点AとCを結んだ直線なので、ピタゴラスの定理より
地球を1回転した時のGPS衛星の軌跡の長さ=√{(7.8π)2+(7.8π)2}=√(2)×7.8πq
です。

 一方、GPS衛星が地球を1回転するのに要する時間=2π[s]
です。
∴GPS衛星の平均速度=√(2)×7.8πq÷2π[s]=5.515[q/s]
です。

Y.公転面と水平方向へ移動するケース

GPS衛星のサイクロイド曲線軌道の長さ  次に、GPS衛星の公転面と地球の進行方向が水平であるケースでは、図3のとおりGPS衛星の軌跡は「サイクロイド曲線」となります。
 半径aの円が1回転して描く「サイクロイド曲線」の長さLは、下記のとおりです。
 サイクロイド曲線の方程式を
x=a(t-sint)
y=a(1-cost)
とします。すると
L=∫[0,2π]√{(dx/dt)2+(dy/dt)2}
=∫[0,2π]√{a2(1-cost)2+a2(sint)2}
=a∫[0,2π]√{2(1-cost)}dt
=a∫[0,2π]√[4{sin(t/2)}2]dt
=2a∫[0,2π]√{sin(t/2)}dt
=2a[-2acos(t/2)][0,2π]
=8a
です。

∴GPS衛星が地球を1回転した時のその軌跡の長さ=8×3.9q=31.2q
です。
 一方、GPS衛星が地球を1回転するのに要する時間=2π[s]
です。
∴GPS衛星の平均速度=31.2q÷2π[s]≒4.965[q/s]
です。

 この様にGPS衛星の平均速度は、公転面と進行方向の角度により4.965[q/s]から5.515 [q/s]の間を変化します。

 ですから軌道に乗ったGPS衛星は、進行方向と公転面の角度を常に計算し、特殊相対論効果である「時刻の遅れ」を微調整する必要があります。

Z.具体的諸数値

 GPS衛星は、地表から20,200qの高所を、地球から見て3.9[q/s]で公転しています。そのため、@高速移動に伴う時計の遅れ「特殊相対論効果」と、A地表より重力の弱い高所にあることによる時計の進み「一般相対論効果」が、GPS衛星の時計に生じます。

 具体的に、GPS衛星の時計は地表の時計に比べ、@「特殊相対論効果」により1秒間に8.461720×10-11[s]遅れ、A「一般相対論効果」により1秒間に5.292180×10-10[s]進みます。これらを差引すると、GPS衛星の時計は1秒間に4.446008×10-10[s]進みます。

 そのために、地上でGPS衛星搭載の時計を1秒間に4.446008×10-10[s]オフセット(遅く進むように設定すること)して打ち上げ、軌道に乗った時UTC(協定世界時)と同期させます。

[.特殊相対論効果

 では、@特殊相対論効果とA一般相対論効果を計算します。
 まず@からです。宇宙背景輻射の観測より、地球は宇宙の中を370[q/s]で移動していることが分かっています。地球の半径は6,371qです。GPS衛星は地表から20,200qの高所を回っているので、GPS衛星の公転半径は26,571qです。

 GPS衛星の公転面と地球の進行方向の角度により、僅かですがGPS衛星の移動速度が変化します。そのために、BGPS衛星の公転面と地球の進行方向が垂直なケースで、GPS衛星の速度を求め特殊相対論効果を計算し、地上で時計を補正します。そして打ち上げた後、GPS衛星の公転面と地球の進行方向の角度を計算しながら、特殊相対論効果を微調整します。

 そしてケースBで、GPS衛星の軌跡は「らせん」になります。これは、底面の半径が26,571qの筒の側面に糸を巻いた形です。この筒を開いて長方形にするt、「らせん」の長さが求まります。
 GPS衛星が公転する円周の長さl=2π×26,571q=166,950qです。したがって
GPS衛星が1回公転するのに要する時間t=166,950q÷3.9[q/s]= 42,807[s]
です。

この間に地球が進む距離l=370[q/s]×42,807[s]= 15,838,891q
です。したがって、GPS衛星のらせん軌道の長さは、底辺15,838,891q、高さ166,950qの長方形の対角線の長さとなります。∴
GPS衛星のらせん軌道の長さl=√{(15,838,891)2+(166,950)2}=15,839,771q
です。これは、GPS衛星が1回公転した時の軌跡の長さです。GPS衛星が1回公転するのに要する時間t= 42,807[s]なので
CGPS衛星の速度v=15,839,771q÷42,807[s]= 370.020553[q/s]
です。そしてGPS衛星の移動速度は、Bらせん軌道のケースでは一定です。
 一方、D地球の移動速度v=370[q/s]です。

 「特殊相対論効果」は、Et’=t√(1−v2/c2)で計算します。CとDの値をEに入れ、F地表の時計の遅れとGGPS衛星の時計の遅れを計算します。
 まず、F地表の時計からです。t=1[s]とすると、1秒間当たり地表の時計の進む時間を計算できます。c=299,792.5[q/s]なので
F1秒当たり地表の時計が刻む時刻=√(1−v2/c2) =√{1−(370)2/(299,792.5)2)}= 0.99999923839096秒
です。

 次にGGPS衛星の時計の遅れを計算します。
G1秒当たりGPS衛生の時計が刻む時刻=√(1−v2/c2) =√{1−(370.020553)2/(299,792.5)2)}= 0.999999238306343秒
です。

 したがって
地表の時計が1秒を刻む間にGPS衛星の時計が刻む時刻=G÷F=0.999999238306343÷0.99999923839096=0.999999999915383秒
です。つまり、GPS衛星の時計は地表の時計と比べ1秒間に1秒-0.999999999915383秒=8.461720×10-11[s]遅れます。これが@「特殊相対論効果」です。

\.一般相対論効果

 次にA「一般相対論効果」を計算します。一般相対論効果による時計の遅れは
HTa=[{1-(R/a)/(1-R/b)}1/2]Tb (R=シュヴァルツシルト半径rg=2GM/c2、G=万有引力定数、M=質量、c=光速度)
で求めます。
 Ta=GPS衛星が刻む時間、Tb=地表の時計が刻む時間、a=GPS衛星の公転半径=26,571q、b=地球の半径=6,371q、G=6.67408×10-11[m3Kg-1s-2]、地球の質量M=5.9724×1024[s]、c=299,792.5[q/s]です。そして
地球のシュヴァルツシルト半径rg=2GM/c2=2×(6.67408×10-11)×(5.9724×1024)÷(299,792.5)2=8.870105×10-6q
です。

∴HTa=[{1-(R/a)/(1-R/b)}1/2]Tb= [1-{(8.870105×10-6)/ 26,571}]/[1-{(8.870105×10-6)/ 6,371}]1/2]Tb=(1.0000000005292181)Tb
です。
 つまり、地表の時計が1秒進む間に、GPS衛星の時計は1.0000000005292181秒を刻みます。ですから
1秒間当たりのGPS衛星の時計の地表の時計に対する進み=1.0000000005292181秒-1秒=5.292180×10-10[s]
です。
 これが「一般相対論効果」です。

 「特殊相対論効果」と「一般相対論効果」を差引すると
5.292180×10-10[s]- 8.461720×10-11[s]= 4.446008×10-10[s]
です。

 この様に、「立体Dブレーン」に対する地球とGPS衛星の移動速度より「特殊相対論効果」による時計の遅れを計算します。
 そして、地球の中心から地表までとGPS衛星までの距離より、地球の重力による「一般相対論効果」による時計の遅れ(GPS衛星の時計は地表の時計に比べ進む)を計算します。その結果1秒間に4.446008×10-10[s]遅く進むように地上で補正して、GPS衛星の時計を打ち上げています。