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浮力が生じる仕組み

T.静水圧

 「水分子のおしくらまんじゅう」により、水に沈んでいる物体の面に垂直に静水圧が掛かります。その仕組みを説明します。

 注射器は、円筒形の筒(シリンジ)と、可動式の押子(プランジャ)から成ります。注射針を差す部分@を密封し、中に水を入れそちら@を下に向けます。

 そして、上から押子を押します。すると、筒の体積が小さくなる方向へ、水に力が加わります。水は自由に形を変えるので、水は筒の「内面全て」を垂直に押します(作用)。すると筒の「内面全て」は、水を垂直に押し返します(反作用)。

 水は「筒の内面」に全ての方向から垂直に押され、中心に向かって体積を小さくする方向へ力が水に加わります。水は全ての方向から中心に向かって押されるので、水同士があらゆる方向に押し合います。これが「水分子のおしくらまんじゅう」です。
 水分子はお互いにあらゆる方向へ押し合うので、壁に接している水分子は他の水分子に押され、壁を垂直に押します。これが「静水圧」が生じる仕組みです。

貴方が、水の分子になったと思ってください。人(水の分子)が電車にぎゅうぎゅう詰めになっています。貴方は四方八方から人(水の分子)に押されています。

U.物体の下面には下から上へ静水圧が掛かる

噴水  貴方が電車の壁に接していれば、貴方は回りの人(水の分子)に押され壁に押し付けられます。
 斜めから押す人(水の分子)の力は左右で相殺され、壁に垂直に貴方は押し付けられます。
 ですから、貴方(水の分子)は壁を垂直に押します。これが静水圧です。

 電車は平面に人がぎゅうぎゅう詰めになっていますが、これが三次元の立体に人(水の分子)がぎゅうぎゅう詰めになっていると思ってください。貴方が電車の天井に接していれば、下から人(水の分子)に押され、貴方(水の分子)は天井に押し付けられます。つまり、貴方(水の分子)は垂直に天井を押します。ですから水圧は物体の面に下から上へ掛かります。

 天井に穴が開いていれば、貴方(水の分子)は下から人(水の分子)に押され、その穴から上へ飛び出します。これが噴水です。

 これを念頭に置いて下図を見てください。容器に水を入れ筒を入れます。そして、水の表面を押します。すると、水に水圧が掛かり赤の矢印のとおり周囲の水は押されて筒に流れ込み、噴水となって上に向かいます。
 水は下から上へ流れ込み、水圧は下から上へ掛かります。

V.風船

静水圧  言葉を変えて再度説明します。風船を水に沈めてみてください。風船は水深が深くなるにしたがって、周りの水圧に押されて小さくなります。
 風船は左右・前後・上下から水に押されて体積が小さくなります。風船の下の面には下から上に静水圧が掛かります。
 水同士が全ての方向へ押し合っています。水と風船の面が接するところでは、風船に接した水は回りの水に押されて風船の面を垂直に押します。
 接した水に押されて風船の面は後退し、水は液体なので風船の面が後退した部分にも流れ込み風船の面を垂直に押し続けます。これが静水圧です。
 ですから、風船の下の面には下から上へ静水圧が掛かります。

 氷等の固体であれば、風船の面が後退してもそこに流れ込まないので風船の面に圧力は掛かりません。水は液体なので風船の面が後退してもそこに流れ込み静水圧が掛かり続けるのです。

W.浮力

 水圧は、水を積み重ねたために生じます。1平方センチに底面1平方センチ高さ1[m]の四角柱の水を乗せると、水圧は1[s/平方センチメートル]です。

 「上から受ける水圧<下から受ける水圧」の場合その差が浮力となります。左右の水圧は釣り合います。ですから浮力には影響しません。上下の水圧差が浮力となります。

 例えば、底面1平方センチ高さ1[m]の四角柱が受ける浮力は、@底面が受ける水圧-A上の面が受ける水圧です。
 @とAの水圧差は、円柱の周囲に高さ1[m]の水を乗せている為に生じます。その時の水圧差は1[s/平方センチメートル]です。ですから浮力は1gkgです(重力加速度g=9.8[m/s2])。このように、浮力は深さに関係なく生じます。

 浮力は、水中にある物体の下面に掛かる静水圧と上面に掛かる静水圧との差により生じます。
 物体の左右や前後に掛かる静水圧は釣り合うので、浮力には影響しません。

 静水圧は水が水の上に乗り、下の水を押すことで生じます。水は液体であり自由に形を変えるので、水の分子同士は、水深に応じた強さでお互いにあらゆる方向に押し合います。

 ですから、水中の物体の下面と上面の静水圧の差は、その物体@を「物体と同じ形の水」に置き換えれば計算できます。
 水に置き換えた物体Aの上面に掛かる力F1(静水圧×上面の面積)をaとすると、物体Aの下面掛かる力F2(静水圧×下面の面積)はa+物体を水に置き換えた時のその重さm×地表の重力加速度g(9.8m/s2)です。

 ゆえに
物体Aに掛かる浮力F=F2-F1=a+mg-a=mg=物体を水に置き換えた時のその重さ×地表の重力加速度g
です。

 m0=物体の質量とすると
物体@に掛かる重力と浮力の合力F'=m0g-mg
です。このとおり物体@本来の重さm0と物体を水に置き換えた時の重さmを比べて、前者が重い場合その物体@は沈み、後者が重い場合はその物体@は浮きます。

 物体@の体積をV、物体@の密度をρとすると、物体@の重さm0=Vρです。同じ形の水に置き換えた時の重さm=V×1=Vです。したがって
物体@に掛かる浮力F=Vg
です。したがって
物体@に掛かる浮力と重力の合力F=Vρg-Vg
です。この様に、物体@の密度ρと流体の密度が同じであれば、物体@には同じ力の浮力と重力の合力が掛かります。

X.水分子のおしくらまんじゅう

 水の分子が「おしくらまんじゅう」をしてあらゆる方向へ押し合っています。ですから、物体に接した水の分子Aは、他の水の分子BCD等に押されて物体@を押します。
 左右の他の水CD等から押される力は相殺されて、水分子Aは垂直に他の水分子BCDから押されます。ですから水分子Aは垂直に物体@の面を押します。物体@の下面に接している水分子Aは下から上へ垂直に下面を押し、上面に接している水分子Aは上から下へ垂直に上面を押します。
 これが「静水圧」です。

 物体の上面と下面の水圧の差は、物体の体積に相当する水Bが下面に乗っている為に生じます。つまり、上面より水がBだけ多く下面に乗っているから、水圧差が発生するのです。
 これは、水だけで考えれば簡単です。物体の上面の位置の水圧と下面の位置の水圧とを比べれば良いからです。水だけあるとして、物体の上面の位置の水圧に物体の体積と同じ水を乗せると下面の位置の水圧となるからです。

 ですから、浮力F=下面に掛かる水圧による力-上面に掛かる水圧による力=Bの質量m×9.8[m/s2]です。

 これは、水だけで考えれば簡単です。物体の上面の位置の水圧と下面の位置の水圧とを比べれば良いからです。水だけあるとして、物体の上面の位置の水圧に物体の体積と同じ水を乗せると下面の位置の水圧となるからです。
 ですから浮力は、物体と同じ体積の水と地球が万有引力で引き合う力と同一になります。

 言葉を変えて再度説明します。注射器は、円筒形の筒(シリンジ)と、可動式の押子(プランジャ)から成ります。注射針を差す部分@を密封し、中に水を入れそちら@を下に向けます。

 そして、上から押子を押します。すると、筒の体積が小さくなる方向へ、水に力が加わります。水は自由に形を変えるので、水は筒の「内面全て」を垂直に押します(作用)。すると筒の「内面全て」は、水を垂直に押し返します(反作用)。

 水は「筒の内面」に全ての方向から垂直に押され、中心に向かって体積を小さくする方向へ力が水に加わります。水は全ての方向から中心に向かって押されるので、水同士があらゆる方向に押し合います。これが「水分子のおしくらまんじゅう」です。
 水分子はお互いにあらゆる方向へ押し合うので、壁に接している水分子は他の水分子に押され、壁を垂直に押します。これが「静水圧」が生じる仕組みです。

Y.パスカルの法則

パスカルの法則  物質には、固体、液体、気体、という3種類の状態があります。このうち液体と気体を流体と言います。自由に形を変えられるのが流体です。これが静止流体です。
 流体が密閉容器の中に入れられていて、各分子が静止している場合、あらゆる地点の圧力は等しくなります。これを「パスカルの原理」と言います。

 流体の分子に働く力はあらゆる方向に等方的に伝わります。そして、あらゆる地点の圧力が等しいのです。どこか一箇所の圧力を高めると、全体の圧力が高まります。

 左図を見てください。球体を隙間なく並べると、図のとおり力はあらゆる方向に等方的に伝わります。そのことを説明します。
 一番上の列の水分子を、赤の板で押します。一列目の水分子は二列目の水分子の間に潜り込み二列目の水分子を左右に広げます。同時に二列目の水分子は一列目の水分子の間に潜り込み一列目の水分子を下から上へ突き上げます。同時に二列目の水分子は一列目の水分子を左右に広げます。
 この様にして、水分子同士接している面に垂直に作用と反作用の力が働き、あらゆる方向に等しい力で押し合います。

Z.力の合力

力の合力

 丸は水の分子です。重さm[s]とします。説明を簡便にするために、赤の水分子Aの質量のみ考慮します。
 赤の水分子Aは青矢印のとおり、下方向にmg[N]の力が働きます。その力は、二段目の2つの水分子BCと接している部分に垂直に掛かり、緑の矢印2つの力に分解されます。
 二段目の水分子BCは、下の水分子Dにも赤の矢印2つの力で押されます。これは、BとCがDを押す反作用です。
 赤と緑の力が二段目の水分子BとCに掛かります。赤と緑の力を合成すると紫の矢印の力となります。これは青の矢印と同じ長さなので、その力F=mg[N]です。
 赤の水分子Aは二段目の水分子BCを緑の矢印の力で押します。その反作用として赤の水分子Aには黒の矢印2つの力が加わります。黒の矢印2つの力を合成すると茶色の矢印の力となります。これも青の矢印と同じ長さなので、その力F=mg[N]です。
 二段目の水分子Bには緑の矢印2つの力が加わります。これを合成すると青の矢印の力となります。ですから、Bが下にF=mg[N]の力で押されます。

 この様に上下左右前後全ての方向へ、水分子にはF=mg[N]の力が加わります。二段目三段目等の水分子の質量を加えて行くと、下になる程水分子同士が押し合う力は強くなって行きます。これが「静水圧」です。