• CATBIRD日記 (物理・数学・歴史・哲学・宗教の未解決問題を扱ってます)
  • 物理実験に振り子時計が使えるか

    T.振り子時計

    振り子時計  物理実験に、振り子時計を使えるか検証します。

    U.振り子の周期

    振り子の周期 単振り子の周期T=2π√(L/g) (L=振り子の糸の長さ・g=重力加速度)
    です。
     したがって、地上に比べ重力が4倍の星では
    単振り子の周期T=2π√(L/4g)=π√(L/g)
    と、周期は地上の1/2になります。つまり、振り子時計は1秒間に2秒進み、地上より2倍速く時を刻みます。

     そして、無重力場では
    単振り子の周期T=2π√(L/0)
    です。0で割ることはできませんが、振り子は振れなくなるので、周期Tは無限大となり時計は止まります。

    V.振り子時計が遅れると時間の経過は遅れるか

    時刻の遅れ  では、重力が4倍の星に降りたら、時間は2倍速く経過するのでしょうか。無重力場では時間は経過しないのでしょうか。
     そんなことはありません。重力が4倍となっても、一般相対性理論による時計の時刻の遅れは僅かです。逆に無重力になっても、時計の時刻の進みは地上に比べ僅かです。

     振り子時計が速くなったり止まったりしたので、時間の経過が速くなったり止まったりするのではありません。
     重力の強さに応じて、振り子の周期Tが変わるだけです。重力や加速度の強さにかかわらず、「全ての加速系で物理方程式は同じ形を取る」のが「一般相対性原理」です。

     そして、振り子の周期は「全ての加速系」で「T=2π√(L/g)」と同じ形となり「一般相対性原理」を満たしています。


    W.様々な場所での物理実験

    宇宙ステーション  この様に、重力の強さによって進み方が変化する時計を、様々な強さの重力場で物理実験に使うことはできません。例えば、宇宙ステーションや月面・火星での物理実験には使えないのです。地上でも、重力gは場所により僅かに異なります。ですから、厳密な物理実験に振り子時計は使えません。

    X.重力により時刻が遅れる仕組み

     重力による時計の時刻の遅れとは、「全ての物質の変化のスピード」が、重力により遅くれることを言います。物質の変化は、主に電磁気力により起こります。「電磁気力」は、電荷を帯びた粒子間を光が往復することで生じます。そして、光の往復数に比例した強さの「電磁気力」が生じます。

     重力に逆らう方向へ光が進む時、光の速度は遅くなります。重力の方向へ光が進んでもその速さは光速度cのままです。ですから、強い重力場では粒子間を光が往復するのにより時間を要します。そしてA「シュワルツシルト半径」の位置の重力では光が前に進めないので、粒子間を光は往復出来なくなり、電磁気力は生じません。

     この様に強い重力場では「電磁気力」が弱まるので、同じ運動エネルギーを得ても粒子は動きにくくなります。つまり時計を構成する全ての粒子が動きにくくなるので、時計は遅れます。Aの重力下では電磁気力は生じないので、時計は止まります。

    相対性原理  強い重力場では「電磁気力」が弱くなり1秒間当たりの粒子の移動距離は短くなりますが、時計もゆっくりと時を刻むので、この時計を使うと無重力場と同じ距離を粒子は電磁気力により動いたと観測されます。つまり、観測者には、重力の強さに影響されず、生じる「電磁気力」の強さは不変です。このように「一般相対性原理」を満たしています。

     重力により、その加速系の全ての物質変化が遅れるのです。時計の示す時刻が遅れても、観測者自身も遅れるので気が付きません。この理により重力系では(時計の示す)時刻が遅れます。