エントロピーの増大

エントロピーとは

 エントロピーとは、主に熱力学で使われる単語です。それは、簡単に言えば「乱雑さ」を表わす指標です。異なるものが異なる所にあり整然と区別されていれば、「乱雑さ」は少なく見えます。異なるものが混ざり合いごちゃごちゃの状態で、あらゆる所に遍在するようになると、区別出来なくなるので「乱雑さ」は大きくなります。


熱力学第二法則

ルドルフ・クラウジウス

 宇宙には、異なる温度のものが異なる場所に区分されて存在します。この状態を、エントロピーが小さい状態と言います。それらは、お互いに接触すると、高い温度のものが冷め低い温度のものが熱くなります。そして、最終的には同じ温度なります。この状態を、エントロピーが大きい状態と言います。この宇宙は、この様にして、次第に全ての部分が同じ温度になって行きます。決して、逆の現象は起こりません。必然的に宇宙全体では、エントロピーが大きくなって行きます。これを「熱力学第二法則」と言います。

宇宙の終焉

 様々な現象が起こるのは、エントロピーが低いからです。異なるものが異なるところに区別されて置かれていることが必要です。それらがお互いに作用し合い、様々な物理現象・化学現象・生理現象が起こります。しかし、宇宙のエントロピーは必然的に増大します。最終的には、エントロピーが最も大きな状態、つまり全宇宙は、同じ温度で同じ密度の同じ物質に埋め尽くされた海の様な状態となります。この状態では、新しい現象は何も起こりません。生命も存在しません。永遠にその静かな平衡状態を続けます。これは「宇宙の終焉」を意味します。

宇宙は有限か

 しかし、今までの説明で明らかな様に、エントロピーの増大により宇宙が終焉を迎えるには、この宇宙が有限でなくてはなりません。無限であれば、幾らでも温度の異なるものが存在出来、それらが次から次へと接触し合っても、永遠に全宇宙が同一温度の状態にはならないからです。この宇宙は有限か無限か、まだ答えは出ていません。ですから、宇宙全体のエントロピーは増大していますが、必ずしも宇宙は終焉を迎えるとは限らない様です。以上で説明を終わります。

エントロピーは増大しているか

 宇宙の始まりであるビッグバンの極初期において、宇宙は小さな高温の部分とそれ以外の低温の部分とに明確に分かれていました。これは、異なるものが整然と区別されており、エントロピーの最も低い状態です。その高温の部分が広がって行き、低温の部分と混ざりあって行きます。次第にエントロピーは増大して行きます。その過程で、星が出来、生命が生まれました。ですから、一見すると、星が出来たので、宇宙は初期の火の玉の状態と比べて、明確に区別出来る様になったので、エントロピーは低下したのではないかとも思えます。
 しかし、それは高温部分と低温部分とが混ざり合う過程で起こる現象であり、明確に高温部分と低温部分が区別された宇宙の初期の状態と比べると、混ざり合っていると言う意味において、エントロピーは増大しています。それが、進んで行き、宇宙の全ての部分が同一温度の均一状態となると、宇宙は終焉を迎えます。この状態がエントロピーが最も大きな状態です。