物質とダークマター及びダークエネルギーの割合の算出方法

ダークマター

フリッツ・ツビッキー

 暗黒物質(ダークマター)とは、重力のみを持ち電磁気による影響を全く受けない物質であり、望遠鏡で観測出来ないとされる仮説上の物質です。これは、銀河団の運動を観察した結果、必要となった物質です。観測の結果、銀河団の中で個々の銀河は、予想よりも小さな軌道を高速で移動していました。銀河団にある望遠鏡で確認された物質の量では、とてもその様な高速で小さな軌道を回せるだけの重力が得られなかったのです。観測された物質量では引き付ける力が弱いので、銀河はより大きな軌道を回ってしまいます。そこで、望遠鏡では見えないけれども、重力を発している未知の物質があるはずだと考えられました。これを「質量欠損問題」と言います。

 一般相対性理論によると、光も重力により曲げられます。銀河の巨大な質量から生じる重力により光は曲げられます。これを「重力レンズ効果」と言います。あらゆる方向から来る光の曲がる度合を詳細に観測し、宇宙における質量の分布図が作成されました。現在では、この図から望遠鏡で観測出来た物質を差し引くことで、どれだけのダークマターがどこにあるのか正確に分かります。

 ダークマターの候補には、ニュートリノやブラックホールが挙がっています。ニュートリノは従来は質量0とされていましたが、現在では僅かな質量を持つことが確認されています。ニュートリノは、物質をスルリと抜けてしまうので、殆ど観測することが出来ません。一方、ニュートリノは、宇宙に1立方センチ当たり100個あると言われ、その量も膨大です。その為に、見えない質量の候補となっています。
 また、ブラックホールからは光も脱出出来ないので、望遠鏡で観測することは出来ません。そして、その巨大な質量によりあらゆるものを引き付けます。この為に、ブラックホールも見えない質量の有力候補となっています。

ダークエネルギー

アラン・ハーヴェイ・グース

 一方、ダークエネルギーとは、重力とは逆の反発力を持つとされる仮説上のエネルギーです。この宇宙は138億年前のビッグバンにより誕生し、現在も膨張を続けています。ビッグバンの爆発力により宇宙は膨張していますが、重力による収縮力でその膨張の速度は序々に遅くなって行く筈です。
 しかし、宇宙の膨張速度を詳細に観測した結果、驚くべきことが判明しました。確かに、66.2億年前までは宇宙は減速膨張(序々に膨張の速度が遅くなる膨張)していたのですが、それ以降加速膨張(序々に膨張の速度が速くなる膨張)に転じたのです。これは、ビッグバンの膨張力と重力による収縮力のみでは説明がつきません。そこで、未知の反発力が必要となりました。これが、ダークエネルギーです。
 宇宙の膨張により、物質間の距離が次第に遠くなり重力による収縮力も序々に弱まりました。その結果、66.2億年前に、終にダークエネルギーによる反発力の方が重力による収縮力を上回り、宇宙は加速膨張に転じたと考えます。

物質・ダークマター・ダークエネルギーの割合

 ビッグバンの膨張力、望遠鏡で観測できた物質の重力による収縮力、望遠鏡では見えないダークマターの重力による収縮力、ダークエネルギーの反発力を使って、宇宙の生成をシュミュレートしました。その結果、望遠鏡で観測できる物質は4%位しかなく、ダークマターは22%で、ダークエネルギーは約70%にした場合、上手く現在の宇宙が生成されることが確認されました。
 従って、ダークマターやダークエネルギーは仮説上の存在です。この割合に設定すると、上手に説明出来るのです。従って、「ダークマターやダークエネルギー自体が観測されています」と言う情報は正確ではありません。