宇宙がビッグバンとビッグクランチを繰り返す条件

 宇宙は「ビッグバン」により膨張を開始しました。そして、宇宙全体の質量とエネルギーの和がある値よりも大きい場合には、宇宙自身の持つ重力により現在の膨張が収縮に転じ、宇宙にある全ての物質は点に収縮するとする説があります。これを「ビッグクランチ」と呼びます。
 この「ビッグバン」と「ビッグクランチ」を繰り返す宇宙モデルの条件は何でしょうか。

 宇宙の始まりは、物質と反物質が対生成により等量発生しました。それが触れ合い未曽有の大爆発を起こしました。そして、物質と反物質は対消滅しましたが、現在物質が残りこの宇宙を構成しています。

 宇宙の膨張の原因が、ビッグバンのみによるものであれば、宇宙自身の持つ重力により膨張は次第に減速して行く筈です。しかし、宇宙は次第に膨張の速度が速くなる「加速膨張」をしていることが分かりました。
 「加速膨張」を説明する方法として、宇宙には反発力である「ダークエネルギー」があると言う考えと、宇宙にはまだ反物質が残っており現在も物質と反物質が対消滅し、その際に放出される膨大なエネルギーにより宇宙の膨張は加速していると言う考えがあります。
 「ダークエネルギー」は宇宙に偏在すると考えられているにもかかわらず、地上で一切観測されていません。これは大変不合理です。そこで、現在人工衛星を使って反物質がこの宇宙にまだ残されていないか検証する計画が進行中です。

 「ビッグバン」と「ビッグクランチ」を繰り返す理論が成立する為には、ビッグバンの原因となったエネルギーが@物質とA反物質を対生成し、その物質と反物質が対消滅によりBエネルギーに変わるため、@AB全てが一点に「ビッグクランチ」しなければなりません。@ABの内一部のみが集まったのでは、「ビッグバン」と「ビッグクランチ」を繰り返す度に宇宙の規模は小さくなってしまいます。これでは、宇宙の一部を記述しているに過ぎなくなります。

 そして、@ABが重力により一点に収縮するのかと言う難問があります。
 反物質が重力に引かれるのか、或は重力と反発するのか分かってはいません。また、重力に引かれるとしても、物質と一緒になればたちまちエネルギーとなってしまいます。
 また、エネルギー自体が重力に引かれて一点に集まるのでしょうか。

 この問題を解決しないと、この宇宙は「ビッグバン」と「ビッグクランチ」を繰り返すとは言えないのです。