• CATBIRD日記 (物理・数学・歴史・哲学・宗教の未解決問題を扱ってます)
  • なぜ、バナナの皮は良く滑り人は転ぶのか

    バナナの皮で滑る  バナナの皮を踏んで転ぶのは、全世界共通のユーモアです。私自身も、転びはしませんでしたが、バナナの皮を踏んでびっくりする程滑り、バランスを崩したことがあります。
     では、何故バナナの皮は良く滑るのでしょうか。北里大の馬渕清資教授がこの仕組みを解明し、2014年「イグ・ノーベル物理学賞」を受賞されました。馬渕教授は人工関節の研究がご専門で、関節の摩擦の小ささとバナナの皮の滑り易さは同じ仕組みであると考えられました。
     バナナの皮の内側には、多糖質の粘液が詰まったカプセルの様な粒が沢山あり、足で踏むと潰れて滲み出た液体が潤滑効果を高めることを突き止められました。そして、バナナの皮の上を歩いた時の摩擦係数は、通常のリノリウムの床の摩擦係数の6分の1しかないことを明らかにされました。この多糖質の粘液は、関節皮膜にも応用されているそうです。

    バナナの皮滑る  しかし、バナナの皮が滑りやすいのは、この多糖質の液体の潤滑効果のみによるものではありません。バナナの皮には縦に細くて丈夫な植物繊維が沢山通っています。その為に、バナナの皮は縦に剥きやすいのです。

     図下の様に、この植物繊維がなく多糖質の潤滑油のみのケースで考えて見ましょう。潤滑油の粘性が低いと、体重によりこの粘液はすぐ脇に押しやられ、靴の底と床とが直接接触し摩擦が起こります。その為、靴は少し滑りますがすぐに止まります。
     多糖質の粘性が高い程、この潤滑油は靴の底と床の間に在り続け靴を滑らせます。しかし、何時かはこの潤滑油も体重により脇に押しやられ、靴の底と床とが直接接触し摩擦が起こり靴は止まります。

     しかし、植物繊維がある場合はどうでしょうか。図上の様に、床と靴の間にバナナの皮の植物繊維があるため、床と靴が直接接触し摩擦することはありません。植物繊維の周りには多糖質の粘液がまとわり付いているので、これが潤滑油となり靴は何処までも滑ります。その為に人は転ぶのです。

     この様に、多糖質の粘液は粘性も高く大変滑りやすいのは事実です。しかし、植物繊維の周りにこの滑りやすい粘液がまとわり付くことで、バナナの皮は大変滑りやすくなっているのです。